オンライン Design Sprint でプロダクト開発方針を考える取り組み
サービス方針決定に際して社内でオンラインデザインスプリントを行ったので取り組みを紹介しようと思います。
普段は UI デザイナー・フロントエンドエンジニアをやっていますが、今回は UX リサーチャー見習いという立場で同僚の UX リサーチャーと一緒にデザインスプリントを行いました。(これ以前に参加したことがあったので前提知識はありました)
デザインスプリントとは
もともとは Google Ventures で提唱されたプロダクト開発やサービス改善のフレームワークで、1. 現状理解 2. 成功定義 3. 発散 4. 決断 5. 試作 6. 評価 のプロセスを 5 日間で完了させます。関係者の合意形成や各種条件を俯瞰することができるため短期間で確度の高いプロダクトデザインができるというメリットがあります。
目的や状況によってアプローチを変えることが推奨されており、実際に今回は 2 日間で実施しました。
実施の背景
ターゲットとする生産者向け新プロダクトの方針を関係者の意見を取りまとめつつ行ってほしいと役員・マネージャーから依頼されたことから始まりました。
ファームノートではプロダクトとして牛群管理アプリや発情・疾病の疑い検知用センサーを扱っており、顧客のニーズも牧場の規模や地域により異なります。この状況を可視化した上で必要とされているサービスが何なのかを考えるためにデザインスプリントを用いようというのが背景です。
また、短期間かつ別拠点から離れることが難しい方もいたので Zoom と Figma を使いオンラインで完結させることが前提。
事前準備
スプリントを行う前にビジネス環境や前提知識を共有する必要があるため、営業部門や各部門のマネージャーにヒアリングを行い事前資料として準備。できればチームに営業担当者が入っているとベストでしたが 2 日間参加してもらうことは厳しかったので、当日のプレセンターとして時間を作ってもらうことにしました。
参加メンバー
下記属性のメンバー 10 人を二つのチームにわけ、私と UX リサーチャーがそれぞれをファシリテーションを担うことに。進行と時間管理をしつつプレイヤーとしても参加するのは難しいかなとも思いましたが、とりあえずやってみて調整しようという方針に。
獣医師、獣医学博士、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、PM、サービスデザイナー、UX リサーチャー
理解フェーズ
背景共有
事前資料を踏まえて背景を説明するとともに、農協や市役所で働いていた方に組織構造や意思決定プロセスの質問会を実施。また、営業担当の方からは各種セールスの違いなども説明していただきました。
How Might We
HMW(我々はどうすれば~しうるか?)のフォーマットに従い背景共有や個々人の経験から出た課題を機会に置き換えアイデア出しを行いました。
例:複数農場の一覧性を実現するには、営農指導員が牧場指標を得るには 等
チームに分かれアイデアを Figma に出していき、より深掘りしたいものに投票実施。ホワイトボードと比べると情報が増えた場合の一覧性が低くなるためファシリテーションが難しい場面もありましたが概ね問題なく進みました。
成功定義フェーズ
HMW で出たものに対応する形でユーザー行動がどのように変われば良いかのゴールについて前フェーズと同様アイデア出しを行い、ユーザー像およびユーザージャーニーの作成。(参考:初心者のためのユーザージャーニーマップの使い方)
発散(スケッチ)フェーズ
designsprintkit にある Crazy8's ~ Solution Sketch を実施。
Crazy8's
これまでに出た内容をもとに八つ折りにした A4 用紙のマス目にアイデアを各人書いて発表。一番手軽だったので紙に書いてもらったものを Figma に貼る方法を採用しています。
出たアイデアについてインパクトや難易度について議論をし、より具体的なスケッチを行うもの選ぶため投票を行いました。
スケッチ
より具体化されたものとなるよう簡易的なアプリ案やサービスの流れを描き、ストーリー説明を順次実施。チーム内で出たアイデアに納得ができたタイミングで別々に行っていたチームが合流し、チームとしてのスケッチを共有。
決断
ここまでの結果をファシリテーターの二人でまとめ、どのようなユーザーの行動や意見が目標を達成したと考えることができるか議論。チームにドメインの専門家である獣医師やターゲットになりうる組織で働いた経験のあるメンバーがいることもあり、それぞれの観点から見て納得できるものかについても確認しました。
最終的にはデザインスプリントで出たものを上記まとめを中心に複数案に落とし込み、それぞれについて何を解決できるか、ざっくりとスケジュールはどの程度となるかを役員に説明し意思決定となりました。
まとめ
ファシリテーターとして初めてデザインスプリントを実施しましたが、思った以上に Zoom / Figma で問題なく進めることができました。これについては普段から面識があり、心理的安全性が担保されているメンバーであったことが大きかったと思います。(アイデア出しの時間管理をしながら自分も案を出すのは少し大変ではありましたが)
また、参加者の個性的なバックグラウンドがうまく混ざり合うことで思いつきをプロダクトのアイデアへ昇華することができた点も面白かったです。今回は簡易版でしたが工夫の余地が大きいフレームワークなので皆さんも試してみようと思っていただければ嬉しいです。