フィルターとRaw撮影とAdobeRGBのお話その②

IPAF(インターナショナルフォトアクセサリーフェア)と言うイベントでH&YFilters社製、角型ハーフNDフィルターとCPLフィルターで作品を作る機会を得ました。

その②ではRaw撮影する意味について考えていきたいと思います。

バッテリー型ストロボを使って日中シンクロと呼ばれるテクニックで撮影を進めてきました。詳細はその①をご参照ください。

カメラ初心者の方にはそもそも、フィルターとストロボからスタートしている話なのでとても難しく感じられるかもしれませんが、「あぁ写真って奥が深いんだなぁ。いつか自分もチャレンジしてみようかなぁ。」くらいに思っていただければありがたいなと思います。そして、その時に少し思い出していただければこの時の記事をぜひブックマークしておいて頂いて、読み返していただくことで、参考にしていただければ幸いです。

その①で、H&YFilters社製、角型ハーフNDフィルターを使って、とても綺麗な空のグラデーションを撮影する事が出来ました。別の日に撮影したものも、実はその①以上に美しい、空のグラデーションを写し込んだ日中シンクロによるストロボポートレートを撮る事が出来ました。

画像1

ちなみに撮影データとヒストグラムはこんな感じです。

画像3

空のグラデーションがとても綺麗ですね。

そして僕はこのグラデーションを綺麗な写真として残したいと思いました。例えば、ダメなグラデーションとはどう言う事かと言うとこうです。

画像3

時々webでこう言うガタガタになったグラデーションを見る事ってありますよね...

このガタガタのグラデーションを「階調飛び」と言ったり「バンディング」と言います。呼んで字の如く、グラデーションの階調が段々に飛んでしまっている状態です。あからさまにここまで劣化した写真になる事は稀ですが、しかしせっかく綺麗なグラデーションは、綺麗なグラデーションのまま残したいしご披露したいところです。

そこで、撮影する際にJPEGではなくRawデータで記録します。多くのカメラでは[Raw][Raw+JPEG]、さらに”JPEGの大きさと綺麗さ”を数段階設定できます。ただし、このRawデータで記録すると、一枚の写真のデータ量がとても大きくなります。NikonD850の場合、非圧縮Rawでおよそ93MB、ロスレス圧縮Rawの場合45MB前後になります。ちなみにどちらのRawデータも原則的には同じRawデータで、現像時に

[非圧縮Raw→現像]

[ロスレス圧縮Raw→解凍→現像]

と言う工程の違いがあるため、1クッション工程が多い分作業時間に違いがあります。

ではRawデータとJPEGデータにはどんな違いがあるのでしょうか?

端的には以下の通りです。

[Rawデータ=12bit(or14bit)非破壊式データ]

[JPEGデータ=8bit/不可逆式圧縮データ]

さて「意味わからん!」ってなりますね。簡単に言うと、

「bit数は多い方が階調も色も綺麗」

と言う事です。そして、[非破壊式データ]とは大元のデータ自体は混じりっ気のないデータがそのまま記録されてるって事で、付加された情報はレイヤー(階層)的に大元の画像データに影響がないように一括して保存されていない事になります。混ざってないってまっさらな写真ってことです。

[不可逆式圧縮データ]は、一回記録するごとにデータが書き換えられるデータで元には戻せませんって事です。JPEG写真は回転させるだけでいちいち保存し直して、あたかもバタフライエフェクトのように世界線が少しづつ変わって行くようなデータになります。

そしてこの「bit数は多い方が階調も色も綺麗」と言う部分がとても大きな意味を持ってきます。1bitは2階調の情報が入っていて、それが倍々に増えていきます。つまり

[8bit=256階調]

[14bit=16,384階調]

の階調情報が記録されていると言うわけです。

さて、なんで”色”と言わずに"階調"と言ってるかですけど、これもRawとJPEGでは大きな違いに繋がります。

厳密に言えばデジタルセンサーは色を記録していません。RGBのフィルターを通してそれぞれのフィルターごとに記録して、大まかに着色されたものを、さらに現像する事でカラー写真を作り出しています。各メーカーで発色や雰囲気が異なるのは、この着色方式が違うからです。これが一般に映像エンジンと呼ばれるものになりますが、[Raw +JPEG同時記録]されたJPEGデータもカメラ内で瞬時に色付けやノイズ除去などの演算を行なって現像されたものになります。この色付けやノイズ除去などをメーカー固有の”リニアリティ”と言います。このリニアリティが、メーカーの個性とも言えますが、リニアリティを100%保持した状態で現像できるソフトは基本的にメーカ純正現像ソフトになります。なので、メーカー独特の個性を生かしたい場合は純正現像ソフトを使う事をお勧めします。

メーカー純正現像ソフトを使い現像するワークフローは

[Raw→16bitTIF現像(純正現像ソフト)→フォトショップレタッチ]

と言う事になります。ただし、現像時にリニアリティを無視して、個性ある現像を目指す場合もあります。その場合、使いやすい現像ソフトを使う事も厭いません。僕自身、PhotoshopCameraRawで直接現像する事もよくあります。

PhotoshopCameraRawの場合、色味、彩度などリニアリティが著しく異なります。以下のように彩度パラメータをいじる事が多くなります。

もしRaw撮影したことがなかった方は、ぜひ現像も踏まえてチャレンジしてみてくださいね。

その③に続きます。




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