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東京大学工学部編入(2025)合格体験記
はじめに
2025年度 東京大学工学部の編入学試験で計数工学科に合格しましたので、記録を残しておきます。主に私の学校生活と当時の勉強内容を振り返りながら、おすすめの参考書などについて書きます。
調査書・志望理由書の内容
所属:情報工学科
席次:1~4年1位(GPAでしか席次が付かないので、毎年同率が何人かいます)
資格
数検1級
英検1級
TOEIC L&R 990
課外活動
日本数学コンクール(2022)優秀賞
志望学科
1:計数工学科
2:電子・情報系学科群
志望理由
建前としては、統計学や機械学習の理論がやりたい。本音としては、工学系に居つつ数学がやりたい。
併願校(受験したとこだけ)
大阪大学 基礎工学部 情報科学科 数理科学コース(合格)
学校生活の振り返り
1年
高専に入った主な理由は、情報系に興味があったこと、校則がゆるいこと、そして寮があることです。COVID-19真っ只中で、初めての授業がオンラインでした。一応卒業後は進学しようと考えていたので、成績は気にしていました。
7月に数検2級を取りました。
2年
寮で友達と遊んで楽しかったな~ということ以外の記憶がない…
6月に数検準1級を取りました。
〈この年に読んだ本のうちおすすめのもの〉
「ガイダンス 確率統計」サイエンス社
この本で統計について勉強したおかげで、翌年の数検でも統計分野で苦労しなかったですし、なにより統計に興味を持ったきっかけです。
3年
4月に数検1級、6月に TOEIC L&R 920点を取りました。
この年のどこかで東大編入の募集要項を見てみたところ、英語の資格が提出できる(任意)と書いてあったので、英検1級と TOEIC 満点を目指そうと決めました。なぜこの判断に至ったのか今でも謎ですが、結果的にこれらを通して確立された勉強法が東大の英語で役に立ったなと感じています。特に英検では、見たこともないような単語・熟語を 1000~2000 ほど覚える必要があるので、編入試対策でも同じように勉強すればいいんだと思うと気持ちが楽でした。1月に英検1次に合格し、2月の2次は落ちました。
夏休みに日本数学コンクール(名大と大阪公立大の共催)に応募しました。以前から存在は知っていましたが、この頃に考えていた問題から面白い結果が得られたので、自由課題部門で応募することにしました。結果は優秀賞でうれしかったですが、表彰式がオンラインなのが個人的には満足できなかったですね…
春休みに「考える力学」と「線型代数入門」を読みました。この時期に線型代数についてある程度理解を得られたのは大きかったなと思います(数検のときは付け焼き刃だったので)。ただ、東大では行列について問われるくらいなので、必ずしも線型空間への理解が要るかと言われると怪しいです。
〈この年に読んだ本のうちおすすめのもの〉
「TOEIC L&R テスト 文法問題 でる1000問」アスク出版
TOEICで高得点を取りたいなら、この本の内容を完璧に覚えるといいと思います。Part 5 対策用の本ですが、すべてのパートに繋がってきます。
「考える力学 第2版」学術図書出版社
これを読んでから、演習書の問題をやるのがおすすめ。
「線型代数入門」東京大学出版会
数学書。時間に余裕があれば。
4年
6月に TOEIC IP 955、10月に TOEIC L&R 980、11月に英検2次不合格、12月にTOEIC L&R 990、2月に英検2次合格 … と、これだけ見ると完全に英語の年でした。これが高専生といっていいのでしょうか。とりあえず、当初の英語の目標は達成されました。
同時に、物理に力を入れていました。
演習書の解答をなぞるというより、問題の数学的・理論的・論理的な背景を気にして勉強していました(特に力学)。
結局、そうして手に入れた知識・理解は過去問の解答を作るためには役立ったが、本番ではそうでもない、という感じでした(せっかくだからどこかに残したい…)。例年の傾向的に、剛体やコンデンサの理解は必須と感じました。
〈この年に読んだ本のうちおすすめのもの〉
「基礎物理学演習」共立出版
一冊目の演習書としておすすめ。東大で出題される分野をカバーしているし、解答例も読みやすいです。
「名門の森 物理[力学・熱・波動Ⅰ]」河合出版
「名門の森 物理[波動Ⅱ・電磁気・原子]」河合出版
東大の物理では高校物理っぽい問題が出ることがある(特に電磁気や波動)ので、やっておいて損はないです。力学に関しては、必ずしも高校範囲の解き方に従うのではなく、微分方程式を使った解法で理解することをおすすめします(単振動の問題を見れば言いたいことが伝わるはず…)。
「詳解力学演習」共立出版
他の演習書の問題はだいたいこの本にも載ってます。それくらい問題の幅が広い。高校物理の参考書にはない剛体・角運動量などの問題を解けるようにするために使うのがおすすめです。ただ、正直「詳解」というほど解答は詳しくないので、いろいろ調べつつ、悩みまくりながらやりました。
5年
過去問請求をして昨年の問題を見たところ、物理の出題が例年と異なり、①力学②力学③電磁気となっていました。これを見た私は「もう熱力学や波動は出ないに違いない」と確信し、力学と電磁気の勉強に集中しました。特に過去問の解答作成に勤しんでいました。
英語は、過去問を使って和訳・英訳の練習をしました。校閲はDeepL先生とGoogle翻訳先生にお願いしました。
よくある英語の対策として大学入試用の問題集を用いる方法がありますが、これには少し注意が必要だと思います。大学入試における「難問」には変な(わかりにくい)文が含まれますが、編入試ではそういう文は扱われないからです(科学関連の文章がほとんどなので、意味が取りにくい文だと困る)。ではどうすべきかというと、正直分かりません……が、過去問と、過去問の引用元のサイトに掲載されている文章を読む練習をするのはありかなと思います。
〈この年に読んだ本のうちおすすめのもの〉
「英語表現力を豊かにする 例解 和文英訳教本 文法矯正編」プレイス
和訳のための本ですが、とりあえず読んだ方がいいです。ただし、ある程度英語の知識がある状態でないと知識が偏る気がします。
試験本番
英語
昨年の出題形式から元に戻り、①英訳②和訳③読解でした。体感9割。
解答用紙の回収に30分以上かかりました。構内のコンビニでおにぎりを買って、会場で食べました。
数学
第4問でつまってしまい(そしておそらく間違っている)、だいぶ時間を取られてしまいました。体感7割。
理科
計数工学科志望なので、物理3問。3問目が光でしたね。出ないと確信していたはずの光。 これはもうしょうがないと思って力学と電磁気に時間をすべて使いましたが、焦りもあってか得意なコンデンサでやけにつまってしまいました。体感5~6割。
総合して、あまり出来は良くないですね。少なくともこれだけあればいいか、の最低ラインを取った感じです。
1次合格発表
理科で稼げなかった上に数学も満足のいく出来ではなかったので、一緒に受けた友人と不安になりながら発表を待っていましたが、なんとか受かっていました。
この時点ではどの学科に配属になるかはわからないので、どうしても第一志望に受かりたい自分にとってはここからが大事でした。
面接
同じ時間帯に待合室にいた人は私以外スーツでした。
面接については、なんというか、あまりかみ合わなかったです。志望調査書に書いたことやTOEICのことなどを聞いてくるかなと思って答えを用意しすぎた結果、それを聞いてくれなかったことで焦ってしまいました。
〈聞かれたこと(覚えている範囲で)〉
・受験番号、氏名、出身学校を教えて(by 進行役)
・志望理由を教えて(by 進行役)
計数については理論統計がやりたい、電子情報については高専で学んだ情報についてさらに学びたいとか機械学習に興味があるとかなんとか。
・数学ではどんなことを学んだ?(by 計数の先生)
・統計学で好きな分野などは?(by 計数の先生)
・統計学と機械学習は具体的にどんなところでつながっている?(by 計数の先生)
・高専の数学の授業で特に興味を持ったのは?(by 計数の先生)
・機械学習を使う側ではなくアルゴリズムに興味があるということ?(by 電子情報の先生)
・他に課外活動でアピールしたいことはある?(by 進行役)
「課外活動の定義を聞いてもいいですか?」と言ったら笑いながら「いい質問ですね」と言われました。特にないので英語のことを話しました。
2次合格発表
面接から合格発表まで2週間あるんですが、受験勉強よりもこの時期の方が辛かったかも。
なんとか計数工学科に合格していました。
この2週間は気が狂いそうだったので、すべてから解放された気分でした。
おわりに
私がとった戦略をまとめると
①TOEICで高得点を取り、併願校で使う(そして東大にも提出する)
②力学・電磁気を得点源にする
です。①については実際に役立っていて、阪大に受かったのはおそらくこれのおかげです(他の受験者は数物ができて当たり前という雰囲気だったので)。②は当日失敗しましたが、改善点があるとすれば試験の直前期に基本問題の復習をするべきですね。どれだけ難しい問題を解けるようになっても、結局大事なのはそこだと実感しました。
東大編入を考えている高専2~3年生へのアドバイスとして、数検1級を取得することと、早めにTOEICを受けることをおすすめします。前者は編入試験に必要な数学の範囲をカバーしているからで、後者はどのみち受けることになるからです。
以上、東大工学部編入の合格体験記でした。もし要望があればTOEIC対策などについても書きたいと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました!