福圓美里 一人芝居 ラルスコット・ギグの動物園『裁判を受けたリスのモル』を見て思った福圓さんの凄さ

福圓美里さんの一人芝居 ラルスコット・ギグの動物園『裁判を受けたリスのモル』を観劇してきました。とても良かったのでサラッと備忘録。

本作は劇団おぼんろ主宰の末原拓馬さん脚本演出の一人芝居シリーズ「ラルスコット・ギグの動物園」シリーズの一つでした。佐藤拓也さん、下野紘さんからバトンを受けた最終話。ラルスコット・ギグの動物園を舞台に動物たちが描かれます。福圓さんは小さなリスのモルを演じていました。

まず一人芝居ってすごい大変なんですよ、セリフ量も必然的に多いし、全部自分でやらないとならない。セリフや動くための心のきっかけやフックも他者からの刺激がないので自分で生み出さないとならない。福圓さんは可愛らしくも凄くしっかりと演じてらっしゃいました。まずその演者の凄さがある。

僕は福圓さんとは水樹奈々さんの座長公演からのお付き合いなのですが(座長公演1・2を演出脚本させていただきました)、その後も客演や主催されているクロジのお芝居を何度か見させていただいております。

福圓さんは実力も人気もある声優さんですが、やはり僕は舞台人なんじゃないかと思っています。そこで行われていることを観客がリアルに感じて演者にフィードバックする。舞台上の役者はお客さんが感じているものを舞台上でこちらも肌で感じているんです。福圓さんはそれをよくわかっている。演劇人として舞台を制する力を持っている演者さんだと思います。

何が特筆されるかというと、福圓さんのお芝居ってふとした瞬間にキャラの情念というか、本音というか、その人が抱えているものが言葉とともにほろっと漏れるようにセリフを語られることがあるんですよね。それは言葉の使い方も勿論なんですけど、そこに行くまでの間や、目線の配り方が凄いんですよ。目の奥にその人の持っている本質みたいなものがちらつくというか。

そういう瞬間、だいたい舞台上はほんの一瞬の静寂に包まれます。舞台上だけじゃなくて、客席もはっとしてしまうんですよね、だから静寂が生まれる。静寂が何を連れてくるかというと、次の展開への期待です。

キャラクターの心情を覗き込んでしまうと、そのキャラが次にどうするのかを待ってしまうんですよね、それは作品への集中力へと繋がり、それは演者にも伝わることで作品世界が広がっていきます。

福圓さんはそれを作り出せる稀有な演者だと思います。エネルギーを発散することで場を制するのではなく、呟くように吐き出した言葉にそのキャラの(ややもすると福圓さん自体の)情念が漏れ出すように乗っている。

勿論リスの役なので可愛く走り回り、別の役も演じつつ、電子ピアノの弾き語りまで披露するその大変さは想像を絶すると思います。

まず、この時期に舞台に立つということはものすごい神経を使うんですよ…(先日までRAB舞台公演出ていたから凄く良く解ります、これは)こういう時期に劇場まで足を運んでくれるお客様には本当に本当に感謝しか無いです。

勿論配信で見てくれる方にも同じ感謝を感じています。このコロナ渦をポジティブに捉えるとするのなら、配信が身近になったことです。配信でお金を払ってエンタメを見るというのが当たり前になってくれば、なかなか劇場に来られない人にも、普段興味を持てない人にも届けるチャンスができたという事です。

それでも、やっぱり劇場で拍手を送ってくれるお客さんの顔を見ることは舞台人の何よりの幸福なのです。だから福圓さんも舞台終了後目をうるませていたんだと思います。

劇中でリスのモルは愛するパートナーを追い続けていきます。
世界に嫌われても、追い求める彼女本人に嫌われても追い続けさせてくださいと願うモルの思いは、舞台に立ちたいと思う福圓さんの思いにシンクロしているように見えたのは、気の所為だったのでしょうか。

仲良くさせて頂いていますし、福圓さんが演じるアニメキャラも大好きなんですけど(「はがない」の志熊理科ちゃんは2次元キャラ三大女神の一人です)、まずそれ以上に僕は演劇人福圓美里のお芝居が大好きなので、今後も舞台に立ち続けてもらいたいと思っています。そしていつかは同じ板の上で!とか思ってしまうのは、僕のエゴです。

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