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rewrite続・今昔物語、第五話
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妻は、自分に隠し事をしている遠助に不満を持ちながら押入れにある箱を開ける機会を伺っていました。
そして遠助が一人所用で外出する日が来ました。
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まったく、うちの夫と来たらこんな場所に箱を置いて隠したつもりなのかね!
妻は箱に手を伸ばしました。絹で包んである箱。高級な香を燻らせたのでしょうか?箱は良い匂いがしました。
押入れの棚から箱を下ろし、妻はじっと箱を見つめました。箱を包む絹は見たこともない結び方で結んでありました。
どうしたら解けるのか?妻はとりあえず結び目の端を引っ張ってみる事にしました。
‥あっけなく結び目は解けました。遠助の妻は早る気持ちを抑えながら、そっと箱の蓋を開けてみました。
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ひっ!妻は小さく叫んだ。全身が粟立つのが自分でも分かった。
箱の中に入っていたのは、人間の目玉。夥しい数の目玉。妻を見つめる様に並んでいる。まるでくり抜かれたばかりの様に、それはヌラヌラと光っていた。他にも長い黒髪が絡む赤黒い肉片も入っていた。
妻は頭の中が真っ白になった。目の前は暗くなり歯もガタガタと噛み合わない。心臓は早鐘を打ち、全身で恐怖に震えた。
その時、妻の背後から静かに引き戸が開く音がした。
‥‥遠助が出先から戻ってきたのだ。
第六話に続く。