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rewrite今昔物語 第三話
藤次に馬を任せ、七郎は屋敷の中に入った。日は西に傾いているとはいえ、何故か部屋の中は薄暗い。雨戸も閉め切っているわけでもない。
そして外より空気が冷んやりとしている。むしろ肌寒いくらいだ。七郎は、確かに藤次の言う通りだ、妙な雰囲気の屋敷だ、と思った。
屋敷の中を一通り見て回り、かつてこの屋敷の主人が寝ていたであろうと思われる部屋を今夜の寝所とする事に決めた。
埃っぽい部屋ではあったが、贅沢は言っていられない。少しでも快適に眠れるよう軽く部屋を掃除した。‥何か視線を感じる、さっきからずっと。
誰かに見られているようだ。と、不意に「若様!」と呼ばれ驚く七郎。心臓がドキドキと早鐘のようになっている。
なんだ藤次か、驚かさないでくれ。平静を装いながら藤次を見る。少し心配そうな顔で七郎を見つめる藤次。
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藤次は若様、わたくしも側についておりますが、万が一の為に、こちらをお渡ししておきます。
と短刀を渡し、御守りを七郎の首にかけた。
もしもの時はこの短刀で身をお守りください。その御守りは武家の守護神、八幡大菩薩の災難避けでございます。
七郎は、おいおい藤次、大袈裟だな。この短刀はきっと使う機会はないだろう。もし野盗が出れば、藤次、お前が倒してくれるだろう?と藤次に言う。
もしも、の為でございます。わたくしもそのような物は使う機会がない事を祈っておりますよ。若様、わたくしは隣の部屋で休んでおります。何か起きましたら、すぐにお呼び下さい。と言葉を締め括った。
夜も更けて来た。
とりあえず持参してきた毛皮を敷いて横になってみる。‥相変わらず何かの視線を感じる。なかなか寝付けない七郎。何度も寝返りを打つ。
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横になりどれだけの時間が過ぎたのだろう。少しウトウトしてきた七郎。
その時、部屋の隅からカリッ、カリッと何かを引っ掻くような音が聞こえてきた。
第四話につづく。