rewrite続・今昔物語、第三話
何とかこの依頼、断れないだろうか‥遠助は心の中でそう思いながら女の話を聞きました。
「段の橋」の西側、その隅に女房(家政婦)が一人、この箱を受け取る為に待っております。お侍さまはその者にこの箱を渡してくだされば良いのです。
女は淀みなくスラスラと説明を続ける。遠助は少し後悔し始めていた。何とも正体不明な女。正直言って気味が悪い。この依頼は決して断れないような強い圧力を感じました。
そして‥‥と女が説明を続けようとすると
ちょ、ちょっと待ってくれ、遠助は女の説明を一旦止めさせて依頼の内容を確認する事にしました。
とりあえず箱は預かろう。橋のところに居る女房とやらはどんな女なのだ?どちらの高貴な方に仕えているのか。もし出会えなかったら、何処へ訪ねれば良い?
‥女は遠助の質問を黙って聞いていました。暫しの沈黙の後、女は口をひらいた。
お侍さまは、ただ「段の橋」まで箱を届けて下されば良いのです。必ず箱を受け取りに女房が出て参ります。女房は間違いなく待っております。
‥‥ただ一つ、お約束して頂きたい事がございます。
ただ一つ‥とは?遠助は聞き返しました。
女は遠助をじっと見つめながらゆっくりと言いました。‥‥決して箱を開けて中身を見ないで下さいませ。
‥‥遠助の後ろ姿を二人の従者はじっと見つめておりました。
なぁ、うちのご主人様はさっきからひとりで何をやっていらっしゃるのだ?
急に馬から降りて、橋の袂でぼーっと立っておられる。ワシには訳がわからん。
どうやら従者達には女の姿は見えないようでした。
第四話に続く。