rewrite今昔物語 第一話
今となってはもう昔の話になります。ここより遥か東より、京に向かう若者と彼に仕える従者がいました。
名前が無いのも不便なので、若者の名前を七郎(しちろう)、従者を藤次(とうじ)と呼ぶ事にしましょう。
七郎の目的は京への留学。都で多くの事を学ぶ為に従者の藤次と遥々東国から旅をしています。
長い旅も終盤に向かい、やっと近江国(現在の滋賀県辺り)までたどり着いた二人。
東国からの玄関口である勢田橋(瀬田の唐橋の事)まで来た時、日は西に傾き二人は今夜の宿を探す事にした。
若様、今夜の宿をそろそろ探しましょう。
藤次、若様はやめてくれ。私もすでに成人しているんだ、子供扱いは困る。と苦笑する七郎。
古くから七郎の家に仕えてくれている従者の藤次。七郎も幼い頃よりずっと世話になっている。
自分の事を旦那様、とまでは言わないがせめて七郎様と呼ばせたい、といつも思っている。
まだ少年の面影を残す顔立ちの七郎。藤次にとって七郎は孫のような存在に思っているようだ。
勢田橋を渡り切り、今夜泊まれそうな宿場を探したがどうやらこの付近にはそういった場所はないらしい。
そうしているうちに、日はどんどん暮れていく。
第二話へ続く。