rewrite今昔物語 第六話
ずっと馬を全力で走らせて来たので、馬も限界だ。馬の息は完全に上がっている。もう走れないだろう。七郎は馬で逃げるのを諦め、転げ落ちるように馬から降りた。とりあえず七郎は、橋の下に隠れて鬼をやり過ごすことにした。
鬼に見つからないように息をころす七郎。橋の上からは鬼の足音が聞こえる。‥南無、八幡大菩薩、我を守り給え、そう心の中で呟きながら御守りを握り締めようと胸元を探る‥が肝心の御守りが見当たらない。どうやら下馬した時に落としてしまったらしい。
橋の上から鬼が怒鳴る。小僧ッ!出て来い!小僧ッ!聞こえているのだろうッ!何処にいるッ!ひたすら息を殺しじっとしている七郎。
何とかやり過ごせそうだ‥と思った瞬間、川面から黒い人影がヌッと現れたように見えた。
‥鬼よ、お前の探している小僧は、この橋の下にいるぞ。黒い人影は鬼にそう告げた。まずいッ!七郎は焦った。
その黒い影は闇に紛れて正体が全く分からず
未完
今昔物語では続きの文章が欠落しており、七郎達がどうなったか‥その結末は分からない。
ただ、この話の題名は
巻二十七東国より上る人、鬼に値ふ語、第十四
現代語に訳すと、27巻・第14話・東国から上ってきた人が鬼に喰われた話
とある。主人公は鬼に喰われてしまう事が決まっている事がこの題名でわかってしまう。
なので、私は題名をrewrite今昔物語とし、ネタバレしないように書いてみました。
私がこの話を気に入っているのは、結末が欠損しているところ。話が欠損しているが故に、この物語は強く印象に残る。なんかこのモヤモヤした感じが記憶に、心に残るのです。
実に怪談ぽいと思いませんか?よう知らんけど。