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‥こんな話しを聞いたよ⑧

⑥でのマキトが住んでいたアパートの話しの続き。

熊田さん、金縛りって体験した事あります?マキトが聞いてきた。

そうだね。身体が疲れているとき、何回かはなった事あるけど嫌な感じだね。身動き取れなくてさ、と私は答えた。

俺が体験した金縛りって‥そう言いながら、新しいタバコに火をつけながら、話し始めた。

いつものアパートで昼過ぎまで寝ていた時の話し。少しずつ目が覚めてきたときに、自分以外の気配を感じた。

掛け布団の足元の方から何かが乗ってくる重みを感じる。そう、ちょうど猫が布団の上を歩いてくるような重さだった。

つま先‥スネ‥太もも‥四つ足の生き物が上半身へ向かって歩いてくる感覚。重さが移動してくる。マキトは猫が布団の上にいるな、ぐらいにぼんやりと思っていた。

その「重さ」がマキトの胸まできた時、急に重さが変わった。猫の重さではない。人間が乗っているような重さ。心なしか体感する大きさも人間ぐらいに感じる。

マキトは一瞬息が止まった。乗っかってきたものが人のカタチをしているのが布団越しに分かる。それは布団ごとマキトに抱きついてきた。

ガッチリと人型の何かに締め付けられるマキト。全く動けない。それと同時に、耳元で何か声が聞こえる。

ふふっ、ふふふっ、あはっ!あははははっ!あはははははは〜!!!‥女の声だった。

女のようなものがマキトにしがみつき、狂ったように笑う。腕は腕で抱きしめられ、足は足が絡みつく感覚がある。

マキトは焦った。なんだこれ!目は開かない。なんとか振り解こうともがく。が、締め付けは段々と強くなる。

女らしきものはますます狂ってように笑う。あはは!あはは!あはは!あはは!あははははは!

マキトは恐怖より怒りを感じてきた。なんで俺が?という思いとともに、全身に力を入れ、テメェふざけんな!と声を上げる。

マキトの怒りを感じたのか、女のようなものの気配が消えた。気づいたらマキトは汗びっしょりでベッドから飛び起きていた。

タバコをつけながら、夢でもみたのか?と思った。マキトは猫を飼っていない。アパートの部屋も鍵はかけてある。当時付き合い始めた彼女にも合鍵は渡していない。

思いあたるフシはまったくない。少し冷静さを取り戻したマキト。スマホを見ると、マキトのお母さんから着信があった。


とりあえず掛け直してみる。お母さんと繋がった。

母さんどうした?なんかあったの?マキトは聞いた。お母さんが言うには、変な胸騒ぎがしたのでマキトに電話したのだと言った。

お母さんは、知り合いと雑談をしていて、マキトの一人暮らしの話題になった。どうやら霊感のある知り合いだったらしく、マキトくんの住んでるアパート、あんまり良い感じしないよ。引越しした方がいい、と言われたとの事。

マキトは、ふ〜ん。わかった、考えとく。とお母さんに答えて電話を切った。

え?それってもうそのアパートやばいんじゃないの?と、私はマキトに言った。

マキトは、いや〜そうなんスけどね。引越しするにも金なかったし、と紫煙を吐きながら話してくれた。

そんなマキトがアパートを引っ越す決意をしたのは又後日、別の金縛りにあったからだと言った。

次回へ続く。

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