幸せ酒場
ふぅうー。と青い空を見上げる。
私は道に座っている。良いお天気だ。
最高やなー!!友人の声がする。
ふぁー。楽しい。青空の下で、私は幸せに満たされている。正確に話せば、私の胃袋発信の幸せに、私の脳、そして、私の発するオーラまでもが幸せに満たされている。
そう。私は、昼間から酔っ払って道路に座っている。
友人と3人で。
私達呑んだくれ3人の春の恒例イベント。「ぶんごおおの巡蔵」だ。
このイベントは、豊後大野市にある4つの酒蔵(藤居醸造、牟礼鶴酒蔵、吉良酒造、浜嶋酒造)を巡るイベントで、チケットとぐい飲みがセットになっているものを購入して、各会場でそのぐい呑みに注いでもらって美味しい日本酒や焼酎をいただく。各会場(酒蔵)には、お酒に合う美味しいおつまみも売られていて、藤井醸造さんの漬物などは絶品である。
会場の移動は、無料シャトルバスで巡ることができる。バスツアーもあるとのことだが、私達は三重町の駅まで電車で行き、そこからシャトルバスに乗るという方法をとっている。
私達は、同じ会社の呑んべえの女子3人組(アラフォー)だが、同じ会社の呑んべえの男子3人組(アラカン)もこの巡り蔵の常連だ。だいたい電車で遭遇する。今年も来たなー!!お互い順調に巡れるようにエールを交わし、豊後大野へ乗り込む。
だいたい私達が良い頃合いになって、浜嶋酒造さんの近くの道にほろ酔い、幸せいっぱいで座っていると、シャトルバスの中からこちらを見て、笑いながら手を振ってくる。
あちらも、笑っているが、こちらからも思わず笑ってしまう酔っ払いぶりである。
この巡り蔵の楽しみは、もちろん!美味しいお酒とそれぞれの会場におつまみだが、参加者全員酔っ払いというところが、この企画を更に面白くさせる。
巨大な、いや広大な幸せ居酒屋
という表現がぴったりではないだろうか、各会場のテーブルで、シャトルバスの中でも知らない人同士でどこから来たんですか?から始まり、楽しく会話をする。参加者はお酒を愛する人が多いので、お酒に関する情報がたくさんもらえる。友人の1人は、シャトルバスで隣の席になった見ず知らずの人から自信作の酒升のついたストラップをもらっていた。
シャトルバスを待っていると、「りっちゃん」(初対面)という中年女性から今度カラオケに行こう!と誘われて、お菓子をもらった。酔っ払いのなせる技である。会場にいる人がみーんなほろ酔いの酔っ払い。そのやりとり全部含めて幸せな時間だ。まるで、会場のすべてがひとつの居酒屋のようである。
友人がもらった酒升は、私達の巡蔵をより豊かなものに変えてくれた。酒升で飲むと、ヒノキの香りがして大好きな鷹来屋(浜嶋酒造さんの日本酒)の美味しさが倍増した。
酒升は、浜嶋酒造さんでも購入でき、「鷹来屋」の文字が入った升に私は大興奮。(鷹来屋さんの日本酒大ファンなもので)そして、升で飲むとまた違った美味しさが口と鼻に広がる。
最高ー!!!!
3人で空に向かって叫ぶ。←酔っ払ってますからね、、
家に帰ってりっちゃんがくれたお菓子を見てみると、私が以前お客様からいただいて美味しくて忘れられず、長年探していたものだった。大分県の北側に、柿のお菓子が有名な中津市というところがあり、てっきりそこのものかと思って探したが出会えず、諦めていた。それを一期一会のりっちゃんが私にくれたのだ。お菓子は、仲町製菓さんの豊後柿の実。豊後大野のお菓子だった。りっちゃんは、私にとって忘れられない人に変わった。もう一度会ってお礼が言いたい。
2020年3月、私達はmy酒升を持って今年もぶんごおおの巡蔵へ行こうとわくわくしていた。りっちゃんにもまた会いたかった。しかし、残念ながら新型コロナウィルス感染症の拡大の影響を受けて、巡り蔵は中止となってしまった。
広大なテーマパーク居酒屋のような場所で、美味しいお酒と美味しい料理を仲良しの友人とともに楽しむ。そこに初めて出会う人からの学びが加われば、更に楽しさと美味しさは倍増する。
こんな楽しい時を当たり前に過ごせていた2019年、それがたった一年で変わってしまった。当たり前は本当に有難かったということを心から感じる。
この昨今の状況下では巡蔵の実行委員会の皆さんの苦悩が想像できるが、こんな素敵なイベントを開催されてきたことへの感謝と心からの敬意を送りたい。そして、また開催してもらえる時を私達は心待ちににしている。
今日行ってみると、大好きな浜嶋酒造、鷹来屋さんの杉玉は茶色に変わっていた。
またいつか笑顔で、心から最高!!と空へ叫びたい。