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【研究開発というものを改めて考えてみた】Ars Electronicaの雑多所感記 個人的総括

9/5(木)から9/9(月)までオーストリアのリンツにて開催されている、Ars Electronicaに出展のため来ておりました(過去形)。現地の雰囲気がリアルタイムに伝わればいいなと現地レポートをずっと書いていましたが、この記事は帰国後1週間ほどたち、改めてArs Electronicaというものについて振り返りつつ、自分の頭に浮かんだ色々な考えについて整理していくためのものにしたいと思って書いています。

※出展内容、具体的な試みについてはこちらをご覧ください。河津は主にInspiratorに関わっています。

こちらに今まで投稿した記事がアーカイブされてます。一緒に渡航したインタラクションエンジニアの新井くんも記事書いてくれてます。

Arsに行っていた期間のざっくりレポートについては書き終わったのですが、そこで自分が感じたものというのが(自分の中では)なかなかに大きなものでして、それを言語化してまとめるのに結構な時間がかかりました。もしかしたらまだまとまってないまであるのですが、その辺りの整理も含めて書いていきたいと思います。少し長くなるかもです。

そもそもArs Electronicaに対して個人的に求めてたこと

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総括の段階で今更自分の話をしてしまうのですが、僕は新卒から6年間ほどバックエンドエンジニアとしてシステム開発に携わる仕事をしていまして、去年から会社の研究開発部署に配属になったという経緯があります。新しい技術を仕事に活かすためのものづくりを求められるのですが、どのようなプロトタイプを作ればビジネスに活かされるのかというのを描くことがとても難しく、ずっと迷走している状態が続いていました。

また、「新しい技術を追い求めること」をそもそも研究と呼んでいいのかという部分にも引っかかりがありました。技術を身につけるのはどのエンジニアの人もやっているので、何か「研究」と呼ぶべきエッセンスがあるはずだという思いもあり、そういったモヤモヤを抱えていた状態でした。

Ars Electronicaには各企業の研究開発職の方々や新規ビジネス創出をしようとしている人々が気づきを得に来ているという話を聞き、自分の抱えているモヤモヤに何か答えが出るか、何かヒントを得られるかという思いを持ち渡航しました。

発想のヤバさは「作りたいものを作る欲から来る」

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Arsに展示された作品を見ていき、特にプレオープンの時に見た作品の発想が普通じゃないものばかりで、大きく頭を殴られた感覚になりました。こういった作品のアーティストの方々と話す機会があったのですが、いずれの方も「作りたいものを作っただけで特に面白い発想などはしていない」と口を揃えて言います。

Ars Electronicaのキュレーターの方がおっしゃっていた言葉で印象に残っているのが、「アートと研究は近しいもの」という言葉で、双方とも自身の求めるものを探求し、時には独自の世界に入っていくようなものであるということ。要はアーティストも研究者も「特に役にたつかはわからないけど自分のやりたいことをやる」人たちなのかなと、そしてそこに別視点での意味を見出す人がいる。(一応ですが個人の見解ですよ。多少語弊はあるかも。)

例えば誰かクリエイターの人がいたとして、その人が何か自分の作りたいモノを作った時はまだそれは「自分の中」だけに留まるものなのですが、誰か別の人がキュレーターとなって「この作品を見ると〇〇のようなことを考えさせられるね」と問いを付与すればアートになり、「この作品もしかしたら△△に使えるんじゃない?」と価値を付与すればビジネスのタネになる。僕がArsの作品を見て頭を殴られた感覚というのはおそらく、既存の価値観が揺るがされた、ということだと解釈したのですが、このキュレーターの人も作品を見たことにより、きっと自分にない価値観を感じてインスピレーションが湧いたはず。この「既存の価値観が揺るがされる」ってことはいわゆるイノベーションであって、アートであろうがビジネスであろうが今までになかったものが生まれるタネになるのでは?と感じました。

Research&Development&Curation

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今回Arsへの出展での一番の気づきとしては、個人で作品を作ることが大事、ということを改めて認識することができた点です。ただ、自分の好きな作品を作る(Development)だけではおそらくビジネスに繋げることはできないということも改めてわかりました。

一つはResearchで、これも普段行うようなデスクトップリサーチよりも次元の高い、それこそArsの作品を見て考察するように、普段の自分の身の回りの領域外の概念を知るレベルでのインプットが必要だと感じました。例えば何かピンと来た分野の論文を読んでみるとか、世の中にある特許の種類を見てみるとか、またいっそ外に出て何かメディアアートに触れるとか、ここは自分にあったやり方をしつつ、意識づけてやっていく必要性を感じました。少し話それますが、作りたい作品・作りたい欲がボンボン出て来る人と、あまりそんなことはない人といろんなタイプがいて、僕は後者のタイプだったりするのですが、この濃いResearchを経ることでインスピレーションを得やすくなり、自然と作りたいもののアイデアが湧いたりもしてくるので、プロトタイプ開発においてResearchは本当に重要だと改めて感じたりもしました。

また先に挙げた通り、作られたモノのCuration、意味や価値づけが行われることで、作品はビジネスのタネになります。このCurationについては正直訓練が必要だと思っており、これも何か外の作品に触れつつ「自分だったらこう使う」という考察の練習が必要だと思いました。こういうCuration段階ってもしかすると、いわゆるビジネスプロデューサーみたいな人に託されちゃうケースがあるかもなのですが、今回Arsに行ったメンバーがプロデューサー・デザイナー・エンジニアと3つの職種があり、各々が気づいた点というのがその職種ならではの気づきだったりして、物事を多角的にみればその分価値が生まれやすいので、エンジニアの僕もこういう力を養っていかなければな・・・と強く感じました。取り急ぎArsの作品読み解きから始めようかな・・・

あとは、Curation段階で意味や価値がつけられた作品に対して、そこからアップデートされる段階があるはずです。これは、自分が作りたいものを作る0→1ではなく、1→10の段階になってくると思うのですが、この1を見ることで作るもののイメージが捕らえやすくなり、ものづくりもしやすくなるので、もしかしたらこの辺りから強みを発する人たちもいるかも。いずれにしても、作って終わりにせず価値づけとプロトタイピングを回していくサイクルが重要だと感じました。

ちなみにR&D&Cという単語をGoogle検索してみたら引っかかり、R&D&C(Commercial)として記事になってました。こちら。なんとなくニュアンスの近しさは感じる気がします!

これから個人的に取り組みたいこと

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まずは個人としての作品作りをしていかなければなと思っています。最近テーマとしてはIoT系に興味が移っているのですが、今回のArsでやはりAI、特にディープラーニングには研究という意味でも可能性を感じました。実際ArsでAIをテーマにした作品は数多く、AIにより変わるであろう世界の未来を問うメッセージを、手法としてAIを導入しつつ伝えている作品が多かったです。それだけ取り扱いやすい題材なのかもしれませんが・・・

また普通プログラムというのはInとOutが決まったものであるため、人の手で動かすべくして動くシステムなのですが、ディープラーニングはデータを突っ込み学習させた結果もどうなるかわからない(極論)というものだったりするので、その結果の可能性に想いを馳せる余地がまだまだある分、研究としやすい分野だなと改めて感じました。

よく仕事でもAIの仕組みを入れることがあるのですが、そういう時でもいわゆるパッケージ化されたAIというか、開発者が使いやすい形になっているもの(APIとか)を使う機会の方が多いです。それは納期が決められた仕事に対して工数と見積もりを定めやすいからなのですが、逆にディープラーニングの深みの部分、アカデミックな領域にはどうしても仕事では踏み込みにくいです。極論ですが仕事しながら大学の知識を得るようなものなので物にしづらく、仕事にも流用しにくいのですが、だからこそ個人の作品という形でモノを作る意義があるのではないかなと考えます。とりあえずハードル下げて使うだけ使ってみようぜ的な感じでものづくりできればいいのかなと。

あとはCurationの訓練ですね。これはArsの作品を改めて見直しつつ、ただ個人でやってもおそらく思考が固まってうまくいかないと思うので、僕らが今回展示したPeople Thinking Labのメンバーと議論しながら力を養えればいいなと思います。これは正直確立した力の身につけ方がわからない部分であるため、トライ&エラーですね。

あともう一つ、これは別軸かつ大きな反省点の一つなのですが、ちゃんと英語を学びたいと思います・・・!英語喋れない人が喋れる人に負担をかける様は当事者になると本当に忍びなくなります。単語文法→リーディング→リスニング→スピーキングの順で中学英語からやりなよ、とどこかのサイトでみた気がするので頑張ります、、、誰かリスニングとスピーキング手伝ってくれるネイティブの人探そう。

以上、繰り返しになりますが超超個人的な観点でのArs Electronica総括でした。自分が向き合うべき研究開発という分野に対して、改めて見直すことができて、間違いなく有意義な時間だったと思っております。繰り返しになりますがArs Electronicaの作品を見ることで「既存の価値観が揺さぶられる」感覚になるのですが、この感覚というのが0から1を生む際の全ての根幹になっている気がしており、だからこそ僕のような研究開発に携わる人や、新しいビジネスを生み出したい人たちなどは間違いなくArsに行った方が良いと、僕は思います。この記事はほぼ自分の頭の中整理に使ったようなものなのですが、この記事も読んだ誰かの、何かの気づきになるといいな・・・などと思っております。

来年も行くぞーー!!

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