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創作する:「そうである」を見せる
それをそれと示すことは大切である。
なぜならそうでないと、当たり前の話だが、「それだと分からない」からである。
これは特に、誰かに何かを伝える際に、そしてもっと言えば、複雑なストーリーや構造、受け取り方を持つ創作物においては、なおのことそうなのである。
創作というのは、見た目からしてすぐにその正体がわかるものもある一方で、そうではない、一癖も二癖もあるものもある。
後者の場合、もしそれを誰かに見せて、その受け取り方がわからなかったり、想定と異なっていたりすると、良くないことが起こる。
つまり、その創作物は「要求されない」ものになってしまうのだ。実は要求されている通りのものを作ったとしても、「それと示せていない」と、要求されていないものと同じとみなされてしまう。
だから、「それと示す」ことはある意味、「それを理解する」ことや「それの通りに作る」こと以上に、大切なことであると言えるだろう。
そしてこのことは、特にストーリーを持つ創作物であったりするときに、なお注意せねばならない現象となる。
即ち、「始まり」と「終わり」のあるストーリーというものに関して、「それと示す」ことは、途中で放り投げてはいけないものになるのである。
初めのうちは注意していても、少しずつ、「それと示せない」ようになってくる。するとそこから少しずつ、受け手はその創作物が、求めていたものなのか不安を覚えるようになるのだ。
だから、物語性のある創作物のときは特に、この「それと示す」に関してきちんとしていなければならない。
常に創作物全体を見張って、それと示されていない部分が、ぽっかりとできてしまっていないかを確認する意識が大事である。
「それと示す」こと――即ち、「要求されたものであると示す」ことは、その要求をちゃんとわかっていたり、その上で要求通りのものを創作することと同じかそれ以上の、価値ある創作術なのである。
示さなければ伝わらないという当たり前の原則を、この創作術は表しているのだ。
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