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ドラマとドラマをぶつけて面白く

 ドラマティックな物語は面白い。
 主人公が敵にボロボロにされ、今にもトドメが刺されそうだ。しかし敵の刃は届かない。主人公の元に仲間が駆けつけ、みんなの力で敵を倒す。
 そういう熱い展開は、1つのドラマティックである。観客はそれを求め、夢中になり、その記憶は消えない。

 なぜなら、それは緩急だからである。だからその物語は面白いのだ。漫画やドラマや映画を見ていても、ゲームでも、そこに緩急があるから飽きないし楽しみ続けられる。
 ドラマティック。
 しかし重要なのは、その正体だ。ドラマティックとはなにも、ついつい注目してしまうような劇的なことが起こるという意味ではない。

 緩急。その正体とは、「それはそれとして」である。物語は常に何かが起こり続け、それに応じて複数の人物が登場する。それら、過ごしている様子のことをドラマといい、あるドラマと別のドラマが絡み合う瞬間こそ、ドラマティックなのである。
 つまり、異種のぶつかり合いなのだ。
 何かシリアスな男女の言い合いが起こっていて、あっちが咎めれば、こっち言い訳をする。失望とともに、女性が男性の頬を叩こうと振りかぶる……その瞬間、物陰から間抜けな声とともに友人たちが転がり出てしまう。シリアスな緊張感は途端に霧消し、隠れて様子を見ていたという友人たちは、気まずそうに笑いながら男女の喧嘩を止める。

 それはそれとして。異種の感覚。ドラマとは「その人物の事情」であって、他の人物にとっては知ったことではない。つまり物語において、あるドラマだけが延々と続くのではなく、その裏には必ず、そんな事情とは関係のない別の人物のドラマが流れている。
 描写できるのは1つだけである。でも、それではつまらない。同じことばかりではつまらない。先が読めるのもつまらない。だからドラマがぶつかってドラマティックになることを、観客は望むのだ。
 それが緩急ということである。同じドラマが続くのは緩むの。だから急かす。あるいは急ぎすぎて足りないドラマを、緩ませて理解を促す。ドラマティックとはそういう面白さを、観客に提供してくれる。
 そういう物語は、なるほど、飽きずに面白く見られる。ドラマティックな物語は、面白い。

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