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恋愛物語が描くのは「恋愛」ではなく

 誤解されがちだが、恋愛物語とは「恋愛」を描いているものではない。恋愛物語というジャンルではあるものの、それが描くのは恋愛ではなく、どちらか一方から見た「恋の模様」だ。
 これらの違いは明白で、恋愛とは双方向的なものだが、恋とは一方的なものである。恋愛とは交流であるが、恋とは想いの丈だ。恋愛には対話はあるが、恋には会話しかない。

 つまり、恋愛物語に必要なのは、実際には恋愛ではなくて、恋、それで充分だという話なのである。この物語ジャンルには、古今東西ほとんど、まずは一方的な恋の要素を多く含むのにもかかわらず、私達はずっとそれを双方向的な恋愛の総体なのだと受け止めて、楽しんできた。
 そのような恋愛物語の消費の歴史がずっとかわらず、私達は恋愛と恋を一緒のものだと認識しているフシすらある。でも、恋愛と恋は確かに違うのだから、そして、むしろ恋愛という完成された交流を描くよりも、一方的だが未完成の恋のほうが、より面白い。
 そう思えてしまうのだから、私達は恋愛物語において「恋」を求めるのである。もちろん、恋愛ではなく。

 そう考えると、恋愛物語とは、「恋愛関係」が出来上がるまでを1つのゴールとして設定された物語ジャンルと言えるだろう。即ちそこは「一区切り」である。恋愛物語において、とある恋心をきっかけとして、それが恋愛と呼べるまでに変化していく様を描いていく。そういう様相を楽しむ物語なのだ。
 なので、恋愛物語が基本的に描くのは恋愛ではなく(それが中心ではなく)、「恋」「恋心」「一方的な想い」まさにそれらなのである。

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