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良い人が、成敗される物語を

 悪者を成敗する物語はスッキリするが、それだけだ。要はそれだけで、つまらない。非常に単純で、ゲーム的な、ボスがでてくるたびに倒していく。そういう話なだけだからだ。
 なので本当は、悪くない人とか、良い人を成敗する物語こそ、面白さの可能性が大いにあるのである。なぜそうなるのか、どうしてそうしなければならなかったのか、どのような顛末なのか…気になる。とても不可解だ。
 どうしてかと言えば普通、悪くない人も良い人も成敗されるはずなどないからだ。少なくとも私たちはそう思っている。なのにそれが実現していることは、物語として奇妙である。そこに惹かれるのだ。

 もしかすると、この物語はスッキリはしないかもしれない。あるいは単純ではなく、どうしたって分かりやすくなることはないかもしれない。観客や読者のいる物語として、それは致命的だ。でもそれ以前に、当たり前のことが当たり前に起こらないのは、絶対に面白い。

 悪者を成敗する物語は「それだけ」でつまらない。なら、悪者ではなく違う人が、あまつさえ良い人すら成敗されてしまう物語はきっと面白いはずである。
 その期待感は未知数だ。でも想像通りではきっとない。
 そういうところに私たちは、物語としての魅力を、夢中になれる何かを、感じることになるのである。

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