ストーリーは盛り上がる。それは衝突し、後退する。
ストーリーが盛り上がる。もしくは盛り下がってしまうという言い方がある。これは概ね、そのストーリーが面白いか、そうでないかという私達の認識と直結するものだ。即ちあるストーリーが語られるとき、それが盛り上がれば面白いし、盛り下がれば面白くない。
この「盛り上がる」というのは、つまるところストーリーのある局面において「衝突」が起こっているということだ。そしてこの衝突とは、
・味方と敵
・同じものと違うもの
・内面と外面
これら、ストーリーに出てくる要素それぞれについて、同時多発的に起こるものである。
たとえば、殺人事件の犯人を主人公が看破する場合、「主人公の内面と殺人犯の内面」、「主人公と事件」「殺人犯の内面と外面」といった衝突が展開されていることとなる。
なぜなら、衝突とは、敵味方のみならずあらゆるものが、その進みたい方向を邪魔し合うことを言うからだ。敵と味方の利益が異なることは当然だが、1人の人物の中でも葛藤という形でそれは現れる。そして、事件という出来事とそれを解決したい人物との間でもそれは起こっていると言える。
だからこの「進みたい方向の邪魔し合い」、つまり、ストーリーに登場するあらゆる要素の「後退」こそが、衝突の正体である。そして、何も邪魔がなければ目的に向かって進み続ける状態が交錯し、ジリジリと鍔迫り合いを迫られているところに、私達はストーリー的な面白さ──即ち「起伏」を感じているのだ。
端的に行って、それは「後退」であり、それを生み出すのは「衝突」であり、そしてそのことをざつくりと「起伏」と表現していることになる。
ストーリー的面白さの1つの正体とは、この目的へ進み続けられない状態と、それをなんとかしようと足掻く登場人物たちの様であり、あるいはその鍔迫り合いに勝利した気持ちよさである。
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