今回のおすすめ本 アリストテレース『詩学』/ホラーティウス『詩論』
みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、アリストテレース『詩学』/ホラーティウス『詩論』という本です!
本作はアリストテレースの『詩学』とホラーティウスの『詩論』の2作品がが収録されています。
アリストテレース『詩学』
本作は、『詩学』という題名を掲げていますが、「悲劇」についての記述が中心となっています。これはアリストテレスの詩または劇に対する考えが色濃く表れているところです。
アリストテレスによると、詩人は「人間の行為のミーメーシス(模倣・再現)」を韻律で表せているかどうかを重要視する必要があると考えていたようです。これは現在のドラマを考えてみるとわかりやすいと思います。ドラマの中では基本的に現実にありそうなものを再現した作品が作られています。アリストテレスはその中でも特に悲劇が一番再現性が高いものとして重要視したとということですね。
注意点としては、視聴者(観客)に迎合した筋ではなく、作品そのものとして単一の筋にしなければならないということです。例えば、悲劇作品において、二人の主要な登場人物がいたとして、一人が幸福から不幸になり、もう一人が不幸から幸福になるような筋はダメだと言うことです。また、不幸から幸福になる筋ではなく、幸福から不幸になる筋でなければならないといいます(「悲劇」なのですから)。
また、喜劇ではなく悲劇を重要視していたのは、喜劇が当時の人間より劣った人間の再現を狙っているのに対し、悲劇がそれより優れた人間の再現を狙っているからです。喜劇は娯楽としてはいいのかもしれませんが、文学として追究するのであれば悲劇を選択する必要があるのでしょう。
アリストテレスが考えていた理想の詩人の中にホメロスが挙げられ、本作の中でも褒め称えています。古代ギリシア詩人といえばホメロスの名が知れ渡っていますし、学校の世界史でも習う人物だと思います。アリストテレスがホメロスの作品を褒めるのは、詩作が優れているだけではなく、劇的な再現も行っているからだといいます。一貫して「再現(ミーメーシス)」を重要視していることがわかるところですね。
本作では悲劇を中心に論じる中で、論理立てて解説を加えています。伝統や道徳といった論理で説明できないものを排除しているため、文学理論として成立した作品といえます。
ホラーティウス『詩論』
アリストテレスよりも読みやすい作品だと思います。ここに書かれている内容は、現在の僕たちにとっては当たり前に感じるものが多いのも一つの要因です。後世の作家によって進展・発展させられたため、元を辿ればシンプルなものだったといえます。
作中では、アリストテレスとの考え方の違いも見えます。アリストテレスが筋を重要視していたのに対し、ホラティウスは観客(読者)にウケるかどうかを重要視しています。また、アリストテレスは登場人物の性格も筋に則ったもので因果関係がしっかり構成されているものを求めているのに対し、性格の首尾一貫のみを求めています。このように、アリストテレスの考え方はフォーマル、ホラティウスの考え方はカジュアルといってもいいのではないでしょうか。
ぜひお手に取ってお読みください☕️