スタンダードの土地との向き合い方
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マナがなければMTGはできず、土地がなければマナが出ない。ヴィンテージでもなければ、この定説は崩れることはありません。そして、現代MTGは当たり前のように3色以上のデッキが組まれる世界であり、そのために各種の優秀な多色土地が使用されます。現行スタンダード(2020/7/29)で、主に使われている多色土地はいかの3種類+1枚です。
ショックランド
占術土地
トライオーム
寓話の小道
3色以上のデッキであれば、バランスを考えつつこの4種類が適量使用されます。今回はこの4種類の土地を、構築面とプレイ面の両面から掘り下げていこうと思います。
■1:構築面で見たショックランド
ショックランドは、現環境唯一のアンタップインが可能な2色土地です。2色以上3色以下のデッキの場合、脳死してそれらの色のショックランドはフル投入してしまって問題有りません。逆に言うと、フル投入するしかないとも言えます。アグロ相手に2点のダメージは決して無視できるものではありませんが、タップインによるテンポの損失は、ほとんどの場合2点ダメージ以上の被害が出ます。もしもショックランドのダメージによって死ぬデッキになっているのなら、それは土地以外のデッキ構築の問題であると言えるでしょう。
■2:プレイ面で見たショックランド
ジェスカイコントロールでのこんな初手を考えてみましょう。
・島
・青白ショックランド
・青赤ショックランド
・青赤ショックランド
・海の神のお告げ
・焦熱の竜火
・吸収
どういう順番で土地を置きますか? 先手で、3ターン目までその場での有効牌を引かないと仮定し、セットランドを考えてみましょう。
↓少し考えてからスクロール
○1ターン目:青赤ショックランドをタップインorアンタップイン
2点ダメージが決して無視できるものでない以上、ショックランドは可能な限りタップインをするべきです。1ターン目にプレイするカードがないこの初手では、アンタップインの意味はないように思えます。逆に言えば、1マナの何かがあれば、アンタップインを行う可能性が発生します。特に、アンタップインをして返した場合、何かのインスタントを構えたことを暗示させます。
ここで考えるのは、環境に存在するそのマナでキャストできるインスタントです。その点で、何故アンタップインするとして青白でなく青赤なのかは理解できるでしょう。ショックの存在がその理由です。青赤フェニックスは一応環境に存在するデッキであり、そこには4枚のショックが採用されています。ジェスカイコントロールにはショックは採用されませんが、採用すること自体は可能です。一方、白1マナで1ターン目に構えるインスタントが採用されたデッキは環境に存在しません。この点で、ブラフとして青赤ショックランドをアンタップインし、何事もなく2ターン目を迎えた場合、相手は「こいつは神秘の論争かショックを構えているぞ」と感じます。
このブラフを行うか、相手がアグロである可能性を考えて2点のライフを守るかは性格によるかもしれません。もちろん、実際にデッキに採用されている神秘の論争とショックの枚数にもよるでしょう。基本的にブラフは「やり得」であり、うまいプレイヤーほどアンタップインを行えと言うでしょうが、その指示を律儀に守って常に同様の場面でアンタップインをするのではなく、環境のメタと自分のデッキ構築を意識し、アンタップインの必要か否かをしっかりと考えましょう。
○2ターン目:青白ショックランドをアンタップイン
ここで「あれ?」と思った人が居るかもしれません。何故島を置かないのか、と。一度に説明する手前、3ターン目の行動もあわせて示しましょう。
○3ターン目:島
この置く順番は何故でしょうか? 解説していきましょう。
2ターン目は、焦熱の竜火を構えつつ、何事もなければ海の神のお告げをキャストします。つまり、100%場の2マナをフルで使用します。一方の3ターン目は、吸収を構え、それをプレイするかどうかは状況によります。3マナをフルで使用する可能性は100%ではないのです。
1ターン目の行動の中で、ショックインしたことは何かを持っているぞ、というアピールをするという意味であると語りました。事実、2マナのカードを2種持っています。ここでもし、焦熱の竜火をプレイすべきカードがキャストされたとしましょう。そうすれば相手は「あぁ、竜火を持っていたのか」となります。一方、すべきカードが出なかった場合、海の神のお告げがキャストされ、相手は「なるほど、海の神のお告げのためにアンタップインしたんだな」と納得で終わります。ここだけを見れば、島のプレイと何も変わりません。問題は次です。
もしも2ターン目に島を置いていた場合、吸収を構える手前、ショックインが必要になります。そうした場合、どうなるでしょうか? 相手はそこに「ショックインの意味」を想像します。つまり、手札の吸収が透けて見えてしまうのです。一方、島を置いた場合、相手が考えるとしても「3マナの何かがあるかもしれないな」で終わります。吸収は警戒こそされども、透けることはありません。
ブラフとは、存在しないカードをあるように見せるプレイを示します。存在するカードの存在を強く意識させてしまうことはブラフではなく、手札を晒したと同じディスアドバンテージです。1ターン目の青赤ショックインは「ショックか神秘の論争があるぞ」というブラフになった一方、ここでのショックインは「吸収があるぞ」と手札を晒したこととイコールなのです。
つまるところ、ショックランドをアンタップインした場合、そのターンにマナを必ずフルで使う必要性があり、使わないかもしれないカードを構えるためのショックインは、あまり良くないプレイであると言えます。カードを構えたい時にこそ、しれっと基本地形を置く。ブラフの観点で言えば、これは確実に意識するべきでしょう。
■2:構築面で見た占術ランド
占術ランドは確定タップインランドです。タップインはテンポ上で大きな損です。つまり「タップインをしても良いデッキか否か」が、占術ランドの採用枚数に影響を与えます。
例えば、1・2・3・4ターン目に連続して動きたいデッキでは、占術ランドを入れるべきではありません。どのターンで置いてもテンポ的に問題が発生するためです。その一方、1ターン目の行動が何もないデッキならば、占術ランドを入れることの問題は減ります。1ターン目に置けばノーリスクであるためです。2マナと4マナが多く、1マナと3マナが存在しないデッキなら占術ランドは大好きになります。1ターン目と3ターン目の2回にタップインチャンスがあるためです。
また、何かしらの効果で土地を置くカードがあるデッキでも、占術ランドは歓迎されます。樹上の草原獣、成長のらせん、ウーロなどです。これらのカードは、プレイしたターンはマナブーストに徹するターンになります。つまり、これらをプレイしたターンのタップインは、ほとんど問題がないのです。樹上の草原獣に至ってはそもそもタップインを強要しますしね。つまるところ、成長のらせんとウーロをフルで投入するデッキでは、占術ランドを投入するハードルは限りなく低くなるといえるでしょう。
■4:プレイ面で見た占術ランド
占術ランドには2つの側面があります。タップインであること。そして、占術ができることです。この2つの側面でより重要な意味を持つのはタップインであることなのは言うまでもないでしょう。つまるところ、タップインをしてもいいチャンスがあれば占術ランドを置け、ということです。当たり前な話です。
一方、こんな手札ではどうでしょうか。
・青緑占術ランド
・島
・森
・山
・ウーロ
・荒野の再生
・発展//発破
一見1ターン目に占術ランドを手なりで置いてしまいそうですが、ここは基本地形のセットが正解です。何故なら、今すぐに占術で下に送りたいカードが存在しないためです。占術という行動は、漠然と行うものではなく、「下に送るぞ」という意志を込めて行うものです。占術で上に置いて得るものはただの「安心」ですが、下に置いて得るものは擬似的なアドバンテージです。
この手札の場合、追加の土地は先に待つ再生発破のために引いても良く、もちろんそれ以外のカードでも上に置くでしょう。相手が確実に緑や赤でないとわかっている時の霊気の疾風以外、必ず下に送るカードがありません。そして、3ターン目のウーロがある以上、占術はそこで置けば良く、その段階では何か欲しいカードがあったり、いらないカードが想像できることがあることでしょう。占術ランドを置くべきはそこです。
占術は「何かを探している」「明確にいらないものがある」タイミングで行う。これも意識しておきましょう。
■5:構築面で見たトライオーム
3色すべてが噛み合っているトライオームは、とりあえず4枚入れて良いでしょう。3色のデッキが恐れるのは常に事故であり、それはタップインによるテンポロスの恐怖に勝ります。
一方、2色のみが噛み合うトライオームはどうでしょうか。必要マナ色の意味での投入は致し方ないとして、そうでないとしたら、「サイクリングをするタイミングがあるか」で考えます。3マナ1ドローはサイクリングとしては極めて重いと言わざるをえません。マナフラッドのケアとはいえ、これができるのは本当に後半、7枚以上の土地が並んだタイミングです。それまで土地が伸びることがないデッキであれば、そのトライオームは、ゲインランドの方が良いかもしれません。
■6:プレイ面で見たトライオーム
トライオームはとりあえず置いていい土地です。一方、サイクリングをする余裕があることは稀ですが、そのコストは3マナであるため、数ターン先に3マナがあるかどうかを想像することは十分可能です。数ターン先にサイクリングが出来る&するべきタイミングがある場合、そこでのサイクリングを目指してキープします。考えるべきポイントはそれだけです。
■7:構築面で見た寓話の小道
寓話の小道は、タップインランドであり、アンタップインランドであり、フェッチランドです。タップインランドの問題は散々語ったため、そちらを参照してください。置けるタイミングがあるかどうかですね。一方、4枚目以降ならばアンタップインであるということは、4マナ以上のカードに関してはテンポを阻害しないという意味です。4ターンで土地を4枚並べるためには27枚の土地が必要です。例えば、かつてタルキールの頃、確実に4マナまで4ターンで伸ばしたかった、包囲サイを代名詞としたアブザンは、27枚(ないし妥協しての26枚)の土地採用が一般的でした。こういったミッドレンジでは、寓話の小道は積極的に採用したい土地です。
一方、フェッチランドであるため、活用するためには基本地形を入れる必要が発生します。ここでポイントになるのが、ダブルシンボルが必要な色かそうではないかです。2枚目を持ってくる意味があるのなら2枚以上、そうでないなら1枚。これが寓話の小道が機能する最低限の土地枚数です。このあたりは、かつて晴れる屋のマナベースの記事を寄稿した時の、進化する未開地の話がそのまま使えるかと思いますので、そちらを参照してもらえると幸いです。
■8:プレイ面での寓話の小道
フェッチランドの起動には2つの意味が伴います。「圧縮」と「シャッフル」です。圧縮を行えば、土地を引く(引いてしまう)確率が減ります。しかし、占術で下に送ったカードを引いてしまう(引けるようになる)可能性が発生します。序盤に下に送った終盤用のカードが引きたくなった時が一番の使い所。圧縮に関しては、下に送った土地が浮かび上がることを考えれば、逆に土地を引く可能性が高くなるかもしれないことを注意し、本当に必要な時だけ起動することを意識しましょう。
■おわりに
たかだ土地されど土地。今回の記事の中で、今までの漠然としたプレイが、意味を持ったプレイに変わるとうれしいなーと思います。以下いつもの賽銭箱です。手っ取り早くミシックに上がりたい人のための尖ったBO1用デッキと、ミシックやBO3で使うと良さそうな今のメタを意識したデッキを置いておきました。よろしければ賽銭ついでに使ってみてください。
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