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時雨の恋の唄5
あれから何度かあの神社で話したりするしていたが…、俺は次第にかぐやさんに惹かれ始めていた。きっかけはわかっている、彼女とのあの出来事だ。
「……。」
今の俺はきっと頭の悪い人みたいな顔をしているだろう。それぐらいボーッとしてる。体をゾクゾクさせる甘い声、触れる体、柔らかな感触、爽やかな柑橘の香り…。
"約束だよ?"
ボーッとしながら時計を見ると…時計の時刻は
バイトが始まる30分前だった。
「んぁー?…やべぇ!!」
急いで持ち物持って鍵を閉めてチャリンコを走らせる。
どうにか間に合い、いつも以上に疲れた俺はヘトヘトになりながらも自転車を漕ぐ。
「…まさかいないよな?」
いつもの神社に行き中へと入る(もちろん礼儀作法は忘れない笑)。中には誰もいないようだ。
「やっぱりな。しかし…疲れた。」
心の中でここの神様に少しグデグデさせて欲しいと祈りながら座る。
「はぁー。…改めてここ綺麗だなー。今度ここ掃除しにいこうかな。」
ここでかぐやさんと出会い、一緒に話せてもらってるんだ。 これくらいの労働は当然だ。
「あっ、そうだ!」
バイト先のお土産でもらった日本酒を出す。
「俺未成年だから飲めないし、料理酒あるから料理には使わないし。…その…、貰い物ですがこのお酒をお納めください。日頃のお礼です。」
祭壇がありそうな場所にお酒の瓶を差し出す。
「どうぞお納めください。」
〜境内にて〜
"ん?あの二人の…男の人のようですね。”
その何かは神社の●●。人には見えないが柔和で中性的な顔だ。
"おやおや、そんなことはいいのに。ここに来てくれるだけで嬉しいのですよ。”
そう言って人間である彼を気に入っている様子だ。
"おや?…お酒?嬉しいですね。この間の皿うどん?もそうですし…ん?”
それは…そのお酒を見てしまった。純米の大吟醸、それも上物で霊酒と言われるほどのできである。
"え?!これは!!私の本家のケツノミコノオオノカミ様の!?えぇ!なんで!?なんであの方の加護ついてんの!?”
自分の本家の加護付きのお酒に驚きながらも嬉しがる。
"…日頃の行いもありますし、少し彼らの縁を引き合わせましょう。…彼には覚えてないみたいですけど彼女はあなたのことを昔から知っている。それも好意的な意味で…さて神様らしくいきますか。”
男が帰る前に彼女との縁を太くする。
"…恐れ多いですが…ケツノミコノオオノカミ様…アマテラス様…。あなたがたに感謝を、いただきます。”
霊酒と化した大吟醸をチビチビと飲む神社の●●であった。
その日を境に俺たちは急速に進んで行く。