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【 ももいろそらを[カラー版] 】 感想vol.032 @第七藝術劇場 21/6/20

20/日/16:9/監督:小林啓一/脚本:小林啓一/撮影:小林啓一

純粋に生き、純粋に死ぬ。唐突さもまた、それが人生。

13年に公開された作品のカラー版。カラー版という通り、当時はモノクロでパートカラーの作品であった。懐かしさに絆されて観賞に至る。

いや、こんなにダサかったかね?というのが、率直な感想。出来の悪い高校演劇を終始見させられ続けている様なもの。とにかく登場人物の言動が稚拙で、現実味が全くない。当時も同じ様な感想を抱いていたのかもしれないが、かなり寒々しい。何故にあれ程まで主人公が苛立ち、暴力的な言動を吐くのかが理解出来ない。113分の上映時間が長く感じられて仕方がない。
撮影にしても、一眼系の映画が普及し始めた時代であったので、ボケ味なども、良い空気の捉え方だと当時は思っていたが、カラー版になった事で、フォーカスの外れ具合が際立ち、どうにも素人臭く観えてしまってやりきれない。手持ちのフィックスも安定感にかける。
そして、残念なのが音。やたらとピークが高くて鋭角的。耳に優しくない事この上なし。インディーズであるのは百も承知だが、もう少し観客への配慮を願いたいものだ。ましてや、10年前の映画のリバイバル。技術も進歩しているのだから、再ミックス位かけても良かったんじゃないですかね。

ストーリーについて。新聞記事の採点を日課にしている粗野でガサツな女子高校生の川島いづみ。ある日、30万円の大金と学生証が入った財布を拾う。交番に届けようか悩んだあげく、学生証に記載されている住所を頼りに、持ち主に届ける事にする。辿り着いた先は大邸宅。表札の名前を見ると、どこかで見覚えがある。気になり、過去の新聞記事を図書館で調べていると、財布の持ち主が天下り官僚の息子である事が分かる。「この金は市民から巻き上げた汚い金だ!」と憤るいづみ。学校へ行く気にもならず、釣り堀で時間を潰していると、そこに知り合いの印刷屋の男がやってくる。不景気で仕事がないとボヤく彼に、いづみは拾った財布から20万円を貸してしまう。その後、カフェへと向かい友人と合流。豪気になった彼女は、支払いを拾った財布で済ませようとしてしまい、友人から詰問攻めに遭う。結局、財布を返しに行く事になり、持ち主である男子高校生も絡んだ、それまでとは異なった日常が生まれ始める。

何も良い事がない様に書いてしまったが、好きなシーンが1つだけある。いづみがチャットレディーのバイトを始めようと思い、主婦になりすまして面接を受ける件。ここだけは、映画全体を通してとても異質で、モノクロ当時も面白かったという記憶がある。

帰りがけに、来場者記念のポスターを受け取ってしまった。張る気にはなれないが、これはこれとして、大切に保管しておきます。

過去の想い出は、ライムライト。時として、美化が過ぎる。元々からは、だいぶ変質させてしまうものです。要注意ご用心。

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