【はじめに全文公開】生まれ変わっても福祉の仕事がしたい
こんにちは。NPO法人み・らいず2代表の河内崇典です。
大阪を拠点に、障がい児・者支援事業、子ども・若者支援事業ほか、福祉事業団体にて人材育成にも取り組んでいます。
▼み・らいず2/障がい児・者支援事業、子ども・若者支援事業
▼Face to Fukushi/就職フェアやインターンシップを通じた福祉業界の人材育成など
前回、twitterやnoteで「9/5、本を出版します!」の記事を公開したのですが、直後からたくさんの仲間たちや福祉でつながる方々が興味を持ってくださり、応援してくれています。
いつもありがとうございます!
こうして一緒に福祉を盛り上げてくださることを、僕自身とても嬉しく思っています!
9月5日の発売日に向けて、み・らいず2内でもプロモーションチームを立ち上げました。スタッフそれぞれにPRを後押ししてくれていて、本当にありがたい限りです。
みんなの応援を力にして、少しでも多くの、福祉業界に少しでも興味関心がある方、あるいは「福祉なんて全く想定外」と思っている方々にも、ぜひ本書を届けたいと思っています。
『ぼくは福祉で生きることにした』、通称 #ボクフク 、どうぞよろしくお願いします!
さて、今日は、本書の「はじめに」の部分を、ここで公開したいと思います。
この本は、福祉を全く知らない若い世代にも、この仕事の面白さや魅力を届けたいという気持ちで書きました。
けれど、一体どんな内容の本なのか、果たしておもしろいのか?、中身について気になっている方も当然いらっしゃると思います。
古くから僕を知ってくださっている方ならわかると思いますが、自分が福祉の仕事をするなんて、学生時代は考えもしなかったことです。
なぜ、この僕が、福祉だったのか。
仲間たちの支えや仕事のやりがいはもちろんですが、そのひとつには、僕を福祉へ導いた"お母ちゃん"の存在があります。
この本には、僕が「生まれ変わっても福祉の仕事がしたい」と思えるようになった、出会いや学び、そして、失敗や挫折もふまえて、お母ちゃんへの感謝の気持ちをつづるつもりで書きました。
1ミリでも興味を持ってくださる方がいたら、本当に嬉しく思います。ぜひ、応援よろしくお願いします!
はじめに
ぼくのスマホの待ち受け画面は、ある人のお墓の写真になっています。もう何年も、その写真から変えたことがありません。
それは、ぼくが福祉事業を手がけるNPO法人みらいず(現在は「み・らいず2」に名称 変更、以下「みらいず」と表記)を設立するきっかけになった、「お母ちゃん」のお墓です。 ぼくが、お母ちゃんと出会ったのは大学一年生のとき。ひょんなことで脳性麻痺の男性 の入浴介助を手伝うことになり、その母親であるお母ちゃんと出会いました。
こう書くと、まるでぼくは心やさしい青年で、お母ちゃんはぼくを福祉に導いた恩人であるかのようなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際はまったく違います。
ぼくは当時、大学にも行かず、親からもらう小遣いで夜な夜な友だちと遊び、モテたくてコンパに明け暮れていた大学生。お母ちゃんは、福祉に接点も興味もなかったぼくを、 ただ「たかのりちゃんはええ子やがね」とやさしく受け入れてくれただけです。さらに言えば、お母ちゃんの口から、自分の境遇を嘆くような愚痴も、福祉とはどういうものかと いった説教も一度も聞いたことがない。
ぼくはそんなお母ちゃんに導かれるように、今も福祉の道をひた走っています。
お母ちゃんとの出会いをきっかけに、ぼくの大学時代は、仲間たちと立ち上げたガイドヘルパーサークルの活動に明け暮れました。そして、それこそがぼくたちみらいずの原点になっています。
大阪市を拠点に、障害のある人たちが、自分らしく地域で生きていくための支援を届けようと、みらいずを立ち上げてから二十年。創業当時に比べれば、事業の規模も環境もずいぶん変わりました。現在は、大阪市を中心に、二十以上の事業を運営。かかわる学生を含めると、スタッフは毎年二〇〇名を超え、若者や子どもたちの支援を中心に、居場所づくり、不登校の相談や、就労支援など、子どもや若者の生きづらさに焦点を当てながら事業を続けています。
ぼくたちの思いは、創業当時から何も変わっていません。
ーー声なき声に耳を傾け、必要な支援をつくって届ける。
みらいずが掲げるこの言葉は、ぼくたちの原点にある想いです。できないことがあるなら、一緒にやればいい。やりたいことがあるなら助け合えばいい。ガイドヘルパーというものに初めてふれ、こんな自分でも誰かの役に立てると知ってから、ぼくは、それまでの福祉に対して疑問を抱くようになりました。
社会が発展しても、なぜ、障害のある人たちの暮らしにはこんなに選択肢がないのか。
なぜ、彼らやその家族がこんなに我慢しているのか。福祉の制度や仕組みは、本当に困っている人を支えられているのか。
そこには、決して声高に何かを訴えることのなかった、お母ちゃんの姿がいつもありました。
ぼくを福祉の道に導いたお母ちゃんは、二〇〇八年に他界。スタッフに連れられ、お墓参りにようやく行くことができたのは、お母ちゃんが亡くなって数年後のことだったと思 います。「お墓の前で写真撮るのお前ぐらいやで」と言われながら撮った写真は、今でも、 気を緩めればふと顔を出すダメな自分を律するためのお守りです。
福祉事業をしているからといって、立派な人間になったわけでも、何か大きな結果を残 したわけでもありません。身を削られるような挫折を味わい、失敗も繰り返し、お母ちゃ んに何かひとつでも喜んでもらえる仕事ができたのかどうかすら、自信はありません。でも、みらいずを通して、かけがえのない仲間たちに出会い、生まれ変わっても福祉という 仕事をしたいと思える自分にはなれた。
だからこの本には、本当に福祉になんの関心もなかったぼくが、いつの間にか福祉にの めりこみ、その魅力を伝えたいと思うほどになるまでの軌跡をつづりました。もしかしたら、「自分には何もできない」とか「やりたいことがわからない」、「福祉は特別なもの」 と思い込んでいる若い人たちに、届けられる言葉がひとつやふたつ、あるかもしれません。
そして、この本をきっかけに、少しでも多くの方が福祉に興味を持ったり、かかわってみたい、福祉っておもしろいと感じてもらえたらと願います。お母ちゃんがぼくに何も言わずにそう教えてくれたように、福祉は何も特別なものではなく、ぼくたちの暮らしそのものだと、気づくきっかけになれたら幸いです。
NPO法人み・らいず2代表 河内崇典