水の致死量

水の致死量は6Lから10Lといわれている。
血中のナトリウムが薄まると昏睡に至り、神経が麻痺して死ぬのだ。

つい先日嫌な事があり、この先到底生きる望みもないと考え水のバカ飲みをやってみる事にした。

開始時刻は13時。10L分の炭酸水(箱で常備している500mlを20本取り出してきた)を用意して飲水開始。500mは簡単にクリアしたが、そこから急にキツくなる。

「飲みたくねぇ」

現れる拒否感。身体が水はもういいと訴えている。たった1Lでこれかぁと挫折しかけるも仕事について考えると勇気が湧いてきた。勢いに任せてボトル一本完飲し、次の蓋を開ける。さぁ一気に飲もうとグラスを持った瞬間、ふと、二日酔いで潰れている時のことを思い出した。一度に大量に水を飲むと戻すのだ。せっかく飲んだものを吐き出してしまうわけにはいかない。俺は少量を機械的に入れていく方針に変え、10分かけてボトルを空にした。ペースを維持したまま3Lまでいくと吐気の症状が現れる。やべぇかもなぁと思いつつ引き続き飲んでいくと嘔吐。炭酸の泡と水と、少量の内容物を吐き出す。もったいねぇと思いつつ口を洗って再開。炭酸ガスによって誘発したのかもしれないと考え、ボトルを振ってグラスに勢いよく入れる方法を取り、さらにペースを落とす。おおよそ3時間。6Lの危険域まで到達。目眩と動悸、倦怠感、異常な眠気に気がつく。

これは死ねるかもしれん。

そう考えると苦しみから解放される希望が湧いてきた。もう働かなくていい、金の心配をしなくていいと思うと途端に肩の荷が降りた気がした。そのまま7Lまで完飲。ここで猛烈な腹痛と尿意。フラフラな足取りでトイレに駆け込むと信じられない量が排出されていく。ほぼ水である。

あれ、これ血中ナトリウム薄まる前に出しちゃってない?

目眩と倦怠感の緩和が俺を焦らせる。また飲まなきゃいけないのか。どれだけ出たんださっき。

畜生と思いながらボトルを開けて飲んでいく。しかしどれだけ飲んでも襲ってくる尿意に勝てず出す。まぁ尿にもナトリウム入っとるやろという精神に開き直りのような精神に到達し、ひたすら飲む出すを繰り返すと、寝落ち。起きたら深夜だった。身体の関節と腎臓が痛く、下腹部が重い。濾過と循環で内臓に負担がかかったんだろう。しかし、それだけだ。死ねなかった。身体が動く。ならば働かなくてはならない。俺は落胆し、今日も仕事に行くのだった。関節が痛く、満員電車で立っているのが辛い。世の中しんどい事だらけだ。なぜ生まれたのだろうと思い、また生きていく。


※この記事は自殺を推奨するものではありません。

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