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2020年1月の記事一覧

奥多摩の猿

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893480044/episodes/1177354054893480047

奥多摩に猿が出たとの報せが入った。
 猿は人里に降り人を襲って身ぐるみを剥いでいくという。猿が人間の着物をかっぱらってどうするのだろうかと大石は訝しんだが、実際被害が出ているわけだし、そもそも猿の奇行を人間の理知で推し量ることなどできるはずもな

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少年エロティシズム

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885801418/episodes/1177354054885801423

 エロビデオが欲しかった。
 兄が引越し、俺の部屋にデッキが来た。となれば、エロビデオは必須ではないか。
 だが、店舗で購入するにはリスクが高すぎる。18禁ののれんが、ベルリンの壁のように立ちふさがるのだ。これを突破するのは容易ではないし、さらに商

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色のない花

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882412686/episodes/1177354054882412688

男が手酌したビールの泡はすぐに消えた。
 卓に並べられた肉じゃがとお新香。ずいぶんと貧相な晩酌であるが、男はこれに満足していた。彼は毎週決まった時間にやってきては決まったメニューを頼むのである。それで不服があるとしたら精神が破綻している。

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掌編 狭量

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893773792/episodes/1177354054893773798

昼休憩の鐘が鳴ると一目散に駆けていくのは社食のみそ汁を大盛りでよそうためである。
 その俊足を見て工場の面々はやれやれといったように苦笑を浮かべ、つられるようにして食堂へ向かうのだが、相田だけは鋭い目つきで戸塚の後姿を睨むのだった。

 相田は

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