ジャンドミッドレンジ虎ノ巻(兄弟戦争スタンダード)
お久しぶりです。虎咲タイガと申します。
先日、晴れる屋広島店にて開催された、チャンピオンズカップサイクル2のエリア予選にて、ジャンドミッドレンジを使用して、4−0−2の4位で通過することができました。
本記事では、一時期は覇権を取ったかとすら思われたものの、いつの間にか環境からいなくなってしまった、ジャンドミッドレンジというデッキについて解説させていただきます。
記事前半ではジャンドの弱点とその克服へのアプローチについての調整記、
記事後半では具体的なプレイングについて書いておりますので、
もしご興味をお持ちいただけたなら、是非どちらかだけでもお読みいただければと思います。
ジャンドミッドレンジの凋落
黒緑赤ビートダウン?
兄弟戦争期のスタンダードにおいて自分の入賞リストは、晴れる屋さんのアーキタイプ分類では、黒赤緑ビートダウンに分類されています。
グリクシスやエスパーはジャンク判定なのに何故?とは思いますが、これは単純に、単一アーキタイプになれるほどの有意なリスト数がこのカラーリングにはもはや存在していないためです。
自分の主観的な話をすると、《ヨーグモスの法務官、ギックス》が入っている形がビートダウンだと思います。兄弟戦争下のスタンダードでは、主に黒単がこの型を主軸とし、次いで赤黒も半分程度はこの型になりました。
そしてそこにさらに緑をタッチした挑戦的なデッキが現れ、黒赤緑のデッキがそれしかないので、アーキタイプ分類がビートダウンになってしまったのだと推測されます。
団結のドミナリア(DMU)環境では、MOでも入賞を重ね、グリクシスに比肩するほどのアーキタイプだったジャンドは、なぜ存在しないアーキタイプになってしまったのでしょうか。
兄弟戦争(BRO)の新規カードは確かに強力ではありますが、環境初期に新カードが多く採用されて、新規デッキが登場して激変した、という訳でもないので、これは単純にメタゲームによる淘汰と考えられます。
自分は、このデッキを黙々と使い続けていたので、消えてしまった理由については正確にはわかりません。
しかし、環境黎明期にはおそらく若干数は存在したはずで、その残滓すら残っていないことから考えると、既存のリストが急増したグリクシスに不利で、デッキリストを記載できる成績に達さなかったのが第一の原因と感じています。
兄弟戦争実装直前の10月末にMOで入賞した、MTGHolic氏のリストをサンプルとしてご用意しました。
一部《絶望招来》を使用しているリストも見られましたが、当時は5マナ域は《作業場の戦長》が主流で、今から振り返ると大振りなカードが多く採用されています。
仮に、環境初期にこのリストを使用したプレイヤーがいたとすれば、2マナ域を手厚く取ったグリクシスには苦戦を強いられたことでしょう。
グリクシスの青とジャンドの緑
当時のリストの相性関係については、カード選択が影響している部分も多そうなので、一旦脇に置いておくと、グリクシスとジャンドという三色デッキの差異というのは、当然緑と青のカラーパイに起因することになります。
実際に、《鏡割りの寓話》《税血の収穫者》や汎用除去の枠はほぼ共通していると言っていいでしょう。
ジャンドの強みは《豪火を放て》《羅利骨灰》などの強力な帰化系呪文。
グリクシスの強みは主にイカれた性能のアンコモン、《死体鑑定士》と打ち消し呪文になります。
確かにグリクシスの強みは明確で強固ですし、日本人には青を好むプレイヤーが多いとは言いますが、これだけ環境に蔓延る致命的なアーティファクトとエンチャントを、歴代最強レベルの帰化で対処出来るジャンドの地力も十分高く見えます。
そもそも、カラーが弱かったのであれば、前環境にも存在できなかったはずなので、デッキリストを洗練させれば決して戦えなくは無さそうです。
ここからは推論とはなりますが、現代マジックにおいては、熱狂的なビルダーが存在しない限り、アーキタイプの使用者が少ないというのは、即ちデッキリストの改善が遅くなると言い換えることができます。
そんな状態のリストを盲目的に使用しても、勝利に繋がるはずもなく、諦めてしまったプレイヤーがさらに離脱していき、リストも変化しない……という負の循環が形成されていたのではないでしょうか。
ジャンドとグリクシスの骨幹が共通しているという部分もここでは悪い方に働きました。特に、グリクシスのミラー対策は、ジャンドの弱点も的確に撃ち抜いていたのです。
さらにさらに、同じような呪文を打ち合うマッチで、片方だけに打ち消し呪文が存在しうるというのは、技術的にも精神的にも中々筆舌に尽くし難いものがあります。
こちらが2マナに怯えて、《絶望招来》を温存してしまったが故に、先打ち有利な招来ゲーに負けてしまう……
自分も片手の指では足りないほどに経験しています。
ちょうどこの時期は、パイオニアシーズンの真っ只中。競技プレイヤーがほとんどスタンダードに触れない時期が11月の末まで続きます。自分が放浪皇のために重い腰をあげてスタンダードを再開したときには、とっくにジャンドは環境から消失していました。
とはいえ、アリーナで流行のグリクシスを少し触った限りでは、ジャンドに対してそこまでの優位性があるとは感じられなかったので、乗り換えの金銭的コストを考慮して、しばらくはジャンドを使うことを決心します。
この時期から、グリクシスのミラー対策を参考にしつつの、孤独なアリーナ調整記が始まりました。
グリクシスの弱点をジャンドの長所に
この頃を境に、恐らくミラーマッチを意識して、グリクシスのカード選択はさらに2マナに寄っていきました。
環境を定義していた《かき消し》と《勢団の銀行破り》のための余剰マナでついでに他の行動を選択できるため、相性が良かったことが原因だと思われます。
とはいえ、汎用的とはいえただの除去である《喉首狙い》《削剥》の増量、
後半に戦力にならない不確定カウンターの《かき消し》、
更には、空中戦専用の《眼識の収集》までもメインに積むデッキまで登場しました。
かつてのエースだった、《黙示録、シェオルドレッド》に比べると、単純なカードパワーは比べるべくもありません。
一強に近いデッキが登場し、ミラーマッチが増えていくと、デッキ構成はどんどん先鋭化されていき、当初はそこまででもなかったはずの弱点がいつの間にか顕在化してしまいます。
それを突いて倒すデッキが現れるというのがマジックの面白いところです。
今回、グリクシスが突かれた弱点は2つあると自分は考えています。
一つは、アーティファクトとエンチャントに触る手段に乏しいこと
もう一つは、アドバンテージを取る手段が限定的なことです。
何故ジャンドミッドレンジの記事で、延々グリクシスの弱点を解説しているのか?とお思いの方もいらっしゃると思いますが、グリクシスが突かれたこれらの弱点こそが、消えてしまったジャンドがグリクシスに立ち向かうための大きな可能性だったからです。
・アーティファクトとエンチャント
グリクシスというのは、太古より置物の対策を苦手としているカラーリングなのは周知の通りです。
色の役割の見直しにより、最近では黒にエンチャントの布告が与えられましたが、それでもカードとして多いとは言えません。
白や緑にあるような《解呪》《帰化》は当然無く、メインデッキ内で役割を果たせるようにクリーチャー除去を兼ねているとなると、使用されるカードはかなり固まってきます。
具体的には、アーティファクトは《削剥》と《兄弟仲の終焉》、
エンチャントは《絶望招来》でしかほぼ触ることができません。
前者は、重いアーティファクトの対処が難しいという形で顕在化しており、[パワーストーンランプ]が突いています。
《鏡割りの寓話》はもとより、《マイトストーンとウィークストーン》等のカードは、グリクシスでは打ち消し以外での対処が難しく、《街並みの地ならし屋》はそもそも打ち消しですら100点の解答とはいきません。
《瞬足光線の大隊》はそもそも打ち消しでしか対処不可能な環境最強のフィニッシャーで、枯らした打ち消しを掻い潜れば、一瞬でゲームを決めるだけの圧力があります。
後者は、狙ったエンチャントの対処が難しいという形で顕在化しており、白系のデッキが意識しています。
前環境を牽引していた《婚礼の発表》はいまだに強力で、定着さえしてしまえば、裏面の《栄光の頌歌》効果も相まって不利な交換を強いられます。
《神憑く相棒》や《永岩城の修繕》はアドバンテージを取りながら、これを《絶望招来》から守ってくれますし、これら全てを《セラの模範》で使い回すことができます。
では、ジャンドに対してはどうでしょうか。
グリクシスのミラー対策こそ、クリーンヒットしてしまったのでジャンドですが、アーティファクトとエンチャントの破壊については他の追随を許しません。
ジャンドには《告別》以外では環境唯一の全体帰化、《歴史の彼方》が存在します。ソーサリーなので、《瞬足光線の大隊》には満点とは行きませんが、他のカードはマナ加速ごと破壊できるためかなり良さそうです。
《羅利骨灰》は追放になった帰化と《完全なる終わり》が一枚になったとんでもないカードで、《街並みの地ならし屋》への100点の解答です。
さらに、そもそも《鏡割りの寓話》《婚礼の発表》への強さを買われて前環境から採用されていた《豪火を放て》も健在です。
グリクシスの置物に関する弱点を突くデッキが環境に増えれば、当然強力な帰化系呪文を持つジャンドの立ち位置は相対的に良くなります。
とは言え、環境で最多のデッキに不利を付けられているまま状態では、その他のデッキにいくら強かろうとも、ローグデッキの域を脱せません。(エスパーはグリクシス不利ってほんまですか?)
ジャンドミッドレンジが復権するためには、こちらもグリクシスの弱点を突くことで、トップメタ相手に明確な強みを持つ必要があります。
とすればまずは当然、対処されづらい強力なアーティファクトやエンチャントを採用できないかと考えることになります。
《ファイレクシアの幻視》は見た目以上に強力なカードでした。
唱えたターンにも得られるパワーストーン・トークンが、テンポの悪い《勢団の銀行破り》や手掛かり・トークンの起動を常に助け、アップキープに得られる《前哨地の包囲》効果は、単純にアドバンテージ源として優秀で、インスタントをめくった際にはパワーストーンと呪文の両方を得ることすらできます!
非常に強力なカードを発見したと、友人にも吹聴していた記憶があります。
後手4ターン目に設置した返しに《絶望招来》を撃たれるまでは。
次に採用した《マイトストーンとウィークストーン》は見た目通り強力なカードでしたが、ジャンドではそもそも通すのが簡単ではありませんでした。
一旦設置した後も、《勢団の銀行破り》と手掛かり程度にしか使えず、《ファイレクシアの幻視》のパワーストーンは、あくまでオマケだったから強かったのだと思い知らされることとなりました。(2ドローはついてんやけどね)
……さて、もうこうなった以上はジャンドで置物に関する弱点を突くのは諦めましょう。何もしてないのに他のデッキに有利になってむしろラッキーで埋め尽くされたと言えます。
《安らかなる眠り》を受け入れる前に、改めてグリクシスのもう一つの弱点を見てみましょう。
・アドバンテージ手段
これについては当然反論もあるとは思います。
グリクシスは、《絶望招来》で取り返せないアドバンテージ差を付けて勝つデッキでは無いのか?と。
しかし、《死体鑑定士》《絶望招来》は、いつでも無条件で大量のアドバンテージを稼げた《スフィンクスの啓示》ではありません。
最近は《さまよう心》が採用されていたりしますが、これも得られるのは2/1飛行とアドバンテージと呼ぶには微妙な性能です。(十分強いは強いけど)
《死体鑑定士》の妨害のために《未認可霊柩車》を入れる等は本末転倒ですが、デッキ内のクリーチャーカードの比率を下げ、布告除けのトークン・クリーチャーとエンチャントを大量に展開していけば、グリクシス側はどんどんリソースの余裕が無くなります。
さらに、グリクシスというデッキは、クロックはそこまで優秀ではなく、《絶望招来》のライフルーズを勝ち手段としているという側面があります。
生け贄に捧げるパーマネントを用意することで逆に、相手のリソースと勝ち手段を奪う……そう、グリクシスに8割近い勝率を叩き出しているという噂の白単の戦術です。
ここに、ジャンドが直接対決でグリクシスを克服するための最後の手掛かりがありそうです。
早速土地を置いて、調査していきましょう。
まず、この条件に最も合致しているのは、クリーチャー・トークンを出せるエンチャントです。クリーチャーではないので《死体鑑定士》の餌にならず、クリーチャー・トークンが盤面を支えるため、序盤のアクションとして信頼でき、招来避け以外でも無駄になりません。
仮に《鏡割りの寓話》が8枚使えたならば、この議論はそもそも全員グリクシスを使えで終わっています。
主に《婚礼の発表》のために、マルドゥ民が不毛のマナベースに出立しているように、ある程度のカードパワーを備えた上で、この条件を満たすカードは中々多くありません。
また、赤黒(青)のカードは、きっと大量のグリクシス使いが掘り尽くしているはずなので、実際に試すのは緑のカードに集中できます。
データベースとにらめっこをして、求める性能に最も近かったのは《麒麟の教え》でしたが、当然《鏡割りの寓話》とは比べるべくもありません。
1章の3枚切削でクリーチャーを落としてしまえば、《死体鑑定士》が舌舐めずりしながら現れます。本末転倒もいいところです。
2マナのカードが2/2と1/1を生み出すというのは決して弱くは無いのですが、変身後の《麒麟触れの大蛇》が1/1にも関わらず攻撃することを要求されます。(殴れるの5ターン目なんすけど??)
書いてある効果自体は強かっただけに、2/2程度でもサイズがあれば、《死体鑑定士》を抜けられるので使えそうでしたが、何より、この性能で2ターン目に緑マナを要求するのは厳しく抜けていきました。
次に、求める条件に合致しているのはトークンを出せるプレインズウォーカーです。
とはいえ、プレインズウォーカーというのは大概は強力なフィニッシャー。《放浪皇》は実際にトークンを出せるプレインズウォーカーですが、《絶望招来》を軽減する、というよりはむしろ、除去できて喜ぶようなカードです。
事実、《焦熱の交渉人、ヤヤ》は、+1能力でクリーチャー・トークンを生成できるため要件を満たしていましたが、《ファイレクシアの幻視》と同様に、折角の高忠誠度のプレインズウォーカーを《絶望招来》に持っていかれては割に合わない、という形で抜けて行きました。
あぁ、もし1枚のカードが2体のプレインズウォーカーを出して、それぞれがクリーチャー・トークンを出せたらなんんとかなるのに……
できればプレインズウォーカー最軽量クラスの3マナで……
そんな……そんなカードが…………
実のところ、自分は《敵対するもの、オブ・ニクシリス》は、ライフゲイン目的で環境初期から使っていました。
《黙示録、シェオルドレッド》の減量もあってクロックが乏しく、ライフを高水準で保つことは、それだけでも僅かながら対策になるためです。
なんかこのカードグリクシスに強いな〜、とは思っていたのですが、こうしてグリクシスの弱点を突くにあたって、このカードは招来避けとしての能力も異常に高いことを認識しました。
《兄弟仲の終焉》こそ裏目ですが、元々犠牲にしたのは史上最大の兄弟喧嘩に巻き込まれるはずのクリーチャーですから、そこまで大損しているわけでもありません。
そしてトチ狂った自分は、これこそがグリクシスに対する解答だ、と確信し、メインボードに3枚採用したリストで、意気揚々とアリーナラダーの海に飛び込んだのでした。
犠牲のタネがおらん……!
《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の強さはしっかりと認識しつつも、常識的な枚数に留め、メイン1サイド1の採用を固定化します。
しかし、この枚数の《敵対するもの、オブ・ニクシリス》はグリクシスに対してずっと使っていたカードのため、ただ強さを再認識したところで、グリクシスへの相性は何一つ好転していません。
いくつか試したエンチャントもプレインズウォーカーも、グリクシスとの相性を好転させることはできませんでした。
特に、《敵対するもの、オブ・ニクシリス》は、環境に存在していることが奇跡の、ほぼオリカのような性能だったのにも関わらず、です。
《鬼流の金床》の発見
もはや万事休すか……といったところで、《崩老卑への貢納》を試してみる。
環境に存在しないカードを探すのはやめて、方針を切り替えます。
例えば、《絶望招来》に引っかからないアーティファクトが、継続的にトークンを出せるとしたらどうでしょうか。《兄弟仲の終焉》を乗り越え、迫り来る《絶望招来》の波を軽減し続けてくれるはずです。
もしそんなカードがあれば、《ヴェールのリリアナ》やアグロデッキにも強く立ち回れそうです。
つまり、令和の《苦花》を探していたわけですが、そもそも《苦花》エンチャント。《戦慄衆の侵略》以来、そんなカードそうそうある訳が……
あったわ。
《鬼流の金床》は、パイオニアのラクドスサクリファイスでは一定の活躍を見せていた、構築実績のあるカードではありますが、普通のミッドレンジに単独で投入するというのは初めての体験で、一抹の不安が過ぎりました。
しかし、《税血の収穫者》の血・トークン、
《茨橋の追跡者》の手掛かり・トークン、
《鏡割りの寓話》、《勢団の銀行破り》の宝物・トークンなど、
グリクシスと比べて、ジャンドには意外とアーティファクト・トークンを出す機会が多く存在します。
もちろん、グリクシスでも使えないことはないのでしょうが、手掛かりは血に比べると積極的に起動したいと言えますし、《死体鑑定士》と比べて、マナが掛かるわ3枚見られないわトークンサクると2/3だわで泣く泣く採用していた《茨橋の追跡者》が、急に価値のあるカードになった瞬間でした。
さらに《鬼流の金床》は継続的にトークンを供給できるので、《茨橋の追跡者》のパワーを維持しやすくもなり、相性も良好です。
本来は相手のエンドフェイズに起動することの多い置物トークンたちではありますが、それをメインで起動するだけでおまけで1/1がついてくると思えば、2マナの置物というのは破格だと言えるでしょう。
もちろん、起動型能力を使えば、物言わぬアーティファクトを物申すアーティファクト・クリーチャーに、マナを使わずに変換しつつ、1点ドレインすることができます。
また、一旦場に出た1/1は、《鬼流の金床》を対処されない限り1ターンに一度復活できるという見方もでき、《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の犠牲の種や、《電圧のうねり》の種を提供したりと、低マナ域のカードはほぼ全て何らかの形で《鬼流の金床》と相性がいいです。
他のカードが無くても、トークンが残っていれば少なくとも1点のドレインは担保されており、ライフアドバンテージは見た目以上に取ることができます。
《電圧のうねり》以外のカードはそもそも一切シナジーを考慮せずに採用していたので、悲報続きだったジャンドミッドレンジに、ここに来て嬉しい誤算です。
とはいえ、新たなカードを採用することで、他のデッキに対する相性が悪化してしまうというのはよくある失敗談です。
今回代わりに抜けたのは、《土建組一家の調達者》でした。
しかも、さらに嬉しいことに、、《鬼流の金床》はデッキの核となるカードでありながらも、他の採用カードにはジャンドミッドレンジ時代から一切の変更が無いので、弱い相手には抜くこともできます。
たとえ《魔女のかまど》が弱くても、全抜きしたらデッキが回らない……といった悩みは無いわけです。
どこかで聞いたような強い動きですね。
ちなみに、《鬼流の金床》は並べば並ぶほど強くなるため、カードパワー的にも4積みが妥当と考えられます。事実、自分もそうしていたのですが……
調子に乗ってグリクシス相手に複数枚並べた結果、《兄弟仲の終焉》の下のモードでクリーチャー・トークンごと全てを一方的失ったので3枚に抑えることにしました。
2枚目を引いても《兄弟仲の終焉》をケアすると気軽には出せず、他にアクションが無い場合の、テンポ損が響くためです。
こうして孤独な調整の結果、環境に適合していると思われるジャンドミッドレンジが完成しました。
途中赤白パワーストーンランプなどに浮気をしながらも、エリア予選に持ち込む決意を固め……
本戦でなんとかグリクシス、エスパー×2、白単を倒し、権利を勝ち取ることができました!!
プレイング・サイドボーディングガイド
ここからは、アリーナで回して得た自分のプレイング・サイドボーディングの知見をお伝えいたします。そのため、相手がわからん殺しをされている可能性が多分にあります。体感相性を記載していますが、統計等はMacのため取れていないので、個人の感想です。
現環境では特に、同アーキタイプでも採用カードはだいぶ散っていますので、相手に合わせたサイドボーディングを行う必要があるので、感覚に任せて微調整してください。
例えば、《黙示録、シェオルドレッド》が多く見えているなら、《喉首狙い》《魂転移》《羅利骨灰》《豪火を放て》などの除去を可能な限り残しますし、《さまよう心》が多く見えたら、単体除去を減らして《兄弟仲の終焉》に巻き込むことを考えます。
グリクシスミッドレンジ
先手
後手
先手、後手に共通するプランとしては、前述の通り《死体鑑定士》と《絶望招来》のバリューを下げつつ、打ち消しに若干の耐性がある低マナ域のカードで攻めることです。
《税血の徴収者》は、《キキジキの鏡像》との凄まじい相性もあって、減らすのが本当に正しいかは確証が持てていませんが、少なくとも後手2ターン目に相手がマナを構えている場合は、出さない方がいいと思います。
除去or打ち消しから、先手3t《死体鑑定士》はそのゲームを早くも決めるほどの力があります。
先手では適正マナのアクションに換算できないソーサリー除去を減らし、《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を増量します。
着地さえしてしまえば、《絶望招来》へのいい盾になりますし、《兄弟仲の終焉》でも注意して忠誠度を調整すれば大損はしないでしょう。
後手では手掛かりの起動マナが確保しづらい《茨橋の追跡者》を減らして受けに回ります。相手が《黙示録、シェオルドレッド》《ギックスのくぐつ師》《刃とぐろの蛇》などの中堅クリーチャーを多く採用しているようなら、《刃とぐろの蛇》を減らして《魂転移》《羅利骨灰》を増量してもいいです。
体感メイン相性:微不利〜微有利
相手の《死体鑑定士》が不要牌を弾ける分長期戦は不利になりやすい。
ただ、《鏡割りの寓話》合わせ打ちからの先手《絶望招来》《豪火を放て》の動きはどの道お互い返せないので、先手後手の範囲に留まっている印象です。
体感サイド相性:五分〜微有利
サイド後はこちらがクリーチャーを減らし、デッキの不要牌も減るため、《茨橋の追跡者》と比べて相対的に《死体鑑定士》は弱体化する。
《豪火を放て》がインスタントであることを最大限利用して、相手の脅威を取り除ければ、相手が先に動いてくれて打ち消しをケアしやすい。
赤単
共通
相手の方が圧倒的に速いマッチなので、先手でも後手のようなサイドボードになります。
本デッキの二大ライフゲインカード、《敵対するもの、オブ・ニクシリス》か《黙示録、シェオルドレッド》の定着を目指します。
《鬼流の金床》や《墓地の侵入者》も相手は嫌がるので、この辺りから攻めてカードを使ってもらいます。
相手の初動を捌けるカードは十分あるので、ライフが尽きて負けることは少なく、どちらかといえば相手のプレインズウォーカーや銀行破りなどでアドバンテージ負けすることの方が多いです。
こちらは初手に引きたくない、とリソースカードを減らしている以上、相手のプラン、お互いの引き次第ではむしろ相手の方から長期戦を仕掛けてくることもあります。
《魂転移》はできるだけ両モードで打てるように意識して、《茨橋の追跡者》を使いまわしましょう。相手が長期戦を是としていると感じられたなら、《鬼流の金床》の代わりに《勢団の銀行破り》や《絶望招来》を残してもいいと思います。
体感メイン相性:微不利
相手が分からない状態で、赤単に最適な手札をキープするのは難しく、《絶望招来》では間に合わない盤面になることもしばしば。
メインでは若干処理しにくいため、相手のPWが定着しがち。
《敵対するもの、オブ・ニクシリス》《黙示録、シェオルドレッド》が運良く定着すれば後手でも勝機があります。
体感サイド相性:有利
サイド後は赤単用の手札をキープできるのが大きく、高い水準でライフを保ちやすいです。また、《豪火を放て》がミシュラランドを割れるため、詰めの攻撃を凌ぎやすく、負け筋はやはりライフよりPWになるか。
エスパーミッドレンジ
先手
後手
《婚礼の発表》型のエスパーデッキのサイドボードです。
《告別》が入っている可能性もありますし、《絶望招来》を打ってこず、飛行クロックが多い相手なので《鬼流の金床》は全て抜きます。
タフネスの高いクリーチャーが多く、《兄弟仲の終焉》も通りが良く無いので、この辺りを単体除去と差し替えています。
厚めにとった追放除去と帰化呪文が効率的に当たるため、有利マッチですが、さらに意識を向けるなら《抹消する稲妻》の追加をお勧めします。
体感メイン相性:微有利
《放浪皇》に耐性のある《茨橋の追跡者》が、サイズも相まって攻め手として非常に優秀です。
《豪火を放て》は枚数が少ないですが、一旦打てれば《邪悪を打ち砕く》がバカらしく思えるほどのインパクトがあります。
問題はやはりテンポ良く対処しづらい《策謀の予見者、ラフィーン》。
先手デニックラフィーンの対処には《抹消する稲妻》が必要です。
体感サイド相性:有利
こちらはラフィーンに対処しやすくなり、相手が効果的なサイドボードを持っていなければ十分有利を継続できるでしょう。
体感ですが、エスパーは一番わからん殺しが決まっている気がします。
エスパーレジェンズ
最近流行りのクリーチャー型のエスパーデッキのサイドボードです。
赤単同様にこちらが100%受けに回らされるマッチです。
《賢明な車掌、トルーズ》の定着もあって、軽量追放除去が望まれるマッチで、《抹消する稲妻》のみならず、《炎恵みの稲妻》も喉から手が出るほど欲しくなります。《スレイベンの守護者、サリア》と合わせてガードが上げられるためです。先手のサリアへの回答は《電圧のうねり》と《税血の収穫者》しかなく、不安を感じる枚数です。
ゲーム全体を通しては、こちらのクリーチャーも十分サイズがあり、《茨橋の追跡者》の警戒を活かして殴り合う展開になりがちです。
相手のシナジー、およびサイズアップは《策謀の予見者、ラフィーン》にほぼ依存しているため、これを咎めることができれば有利に立ち回れます。
体感メイン相性:不利
《スレイベンの守護者、サリア》に対する解答がキープできません。
《税血の収穫者》《喉首狙い》《兄弟仲の終焉》あたりが打てればいいのですが、大体は3マナで置いた《勢団の銀行破り》を起動している間に死んでしまいます。
サリア影響下での護法クリーチャー、追放要求クリーチャーがとにかく辛く、メインはやや辛くと感じます。
体感サイド相性:五分〜微有利
クリーチャー主体な以上、相手は効果的なサイドボードをほとんど持っていません。初動のサリアも弾きやすいですし、天敵のシェオルドレッドも増量できます。
兵士
共通
とんでもない追加カードを複数もらってメタゲームに花開いた、先進気鋭の部族です。(狼男にも追加をください)
《兄弟仲の終焉》をメインに2枚採用しているのはひとえにこのマッチのせいだと言っても過言ではありません。
アーティファクト、エンチャントが《ヨーティアの前線兵》だけなら《豪火を放て》は減らしますが、《戦闘態勢》など、他の非クリーチャーの置物を見たら2枚残します。
負け筋はなんと言っても《先兵の飛行士、ハービン》なので、兵士の数とインスタント除去の確保には意識を払いましょう。
体感メイン相性:微不利
《スレイベンの守護者、サリア》に対する解答がキープできません。
(表現の反復)
一方で、除去耐性のあるクリーチャーは少なく、ロードの修正込みでも《兄弟仲の終焉》がクリティカルなのでメイン2にした甲斐を感じます。
体感サイド相性:有利
エスパーレジェンズ相手と大きく違うのは、兵士相手は《鬼流の金床》が十分強いという点です。《天空射の士官》のアドバンテージと《先兵の飛空士、ハービン》の突然死にさえ気をつけていれば、こちらのライフより相手のリソースが先に尽きるはずです。
白単ミッドレンジ
共通
《集団失踪》と《告別》を有する白単相手では、基本的に長期戦は免れないでしょう。白単側が攻撃的なサイドボードを取ってくる可能性もありますが、こちらのクリーチャーや除去の総数が減っているわけではないので、《輝かしい聖騎士、エーデリン》がうっかり完走でもしない限り大丈夫でしょう。
こちらから盤面をリセットすることはできませんので、盤面を微有利程度で回しつつ、《告別》で触られない《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を定着させながら手札を増やしていくのが基本戦術です。
いつまでも、あると思うな、《勢団の銀行破り》。手掛かりなどは早めに手札に変換しておきたいですね。
また、盤面を作る際には、相手が出したパーマネントと同じタイプのパーマネントを優先して展開して行きましょう。うっかり相手だけエンチャントやアーティファクトを残されてしまうと盤面が一気に傾いてしまいます。
体感メイン相性:有利
《鬼流の金床》は《告別》には弱いためサイドアウトしますが、メインの《告別》の枚数には好みが出ますし、思ったよりメインは弱くありません。
勢い次第ではゲームを決めることすらあります。
相手がどんな型でも大活躍する《豪火を放て》、相変わらず《放浪皇》の
効かない《茨橋の追跡者》が強みとして立ち上がります。
体感サイド相性:微有利
全デッキの中で、一番対ジャンドのプランを妨害してくるのが白単ですが、打ち消しもハンデスも無い以上、こちらの強いカードも全て通ります。
長期戦、怪獣大決戦は避けられませんので、引きの偏りで多分に紛れが生まれてしまいます。《敵対するもの、オブ・ニクシリス》が《告別》耐性もあって強力で、世のグリクシスが採用していないのが不思議なくらいです。
マルドゥミッドレンジ
先手
後手
マルドゥミッドレンジについては、カードパワーが高い分、採用カードのブレについては少ない印象です。
アドバンテージを取る軽い置物と、高マナ域のタフネス4のクリーチャーという構成が多く、打ち消しも無いことから豪火の通りは非常に良いです。
特に、《怒りの大天使》の存在が大きく、《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の定着は難しいので減らし、確定除去の多さから《黙示録、シェオルドレッド》も減らします。
ライフを得られるカードがデッキから無くなっているので、相手に《絶望招来》が無いとはいえ、少し気をつけてプレイする必要があります。
このマッチは基本的には《鬼流の金床》が弱いマッチではありますが、相手が《絶望招来》か《ヴェールのリリアナ》を採用しているのが見えた場合は2枚程度残しましょう。
体感メイン相性:五分
こちらの《豪火を放て》が凄まじいように、向こうの《怒りの大天使》も
凄まじいです。
こちらのメインの除去は限られており、タフネス4のクリーチャーを連打
されるとどうしても捌ききれないという展開は多いです。
ただ、《婚礼の発表》《勢団の銀行破り》がほとんど定着しない以上、
相手の息切れは早いです。なんとか長期戦に持って行きましょう。
体感サイド相性:微有利
大幅に追放除去を増やしてはいますが、《怒りの大天使》《聖域の番人》
のインパクトが大きいです。どちらも実質6マナなので、それまでに優位
を築きたいです。
《告別》をはじめとして、盤面だけではなかなか勝てないカードが揃って
いるので、リソース差での勝利を目指します。
パワーストーンランプ
とにかくこっちが攻めさせられるアーキタイプです。
《街並みの地ならし屋》は《羅利骨灰》という完全解答があるのでまだマシなのですが、《瞬足光線の大隊》は対処するのは非常に難しく、返しの《絶望招来》で勝てるくらいにはライフを詰める必要があります。
ライフを詰めると言えばクリーチャーなのですが、こちらのクリーチャーはほぼ《兄弟仲の終焉》でまとめて対処され、頼りの《黙示録、シェオルドレッド》には《マイトストーンとウィークストーン》と、噛み合いこそ要求できますがしっかり対応札があります。
本来はコントロールキラーの《敵対するもの、オブ・ニクシリス》ですが、このマッチでは《兄弟仲の終焉》、《家の焼き払い》が両方採用されていることから忠誠度の管理が難しく、本体火力として扱うくらいの気持ちで臨みます。
ついでに《ヴェールのリリアナ》で手札を締め上げるプランも考えましたが、相手がアドバンテージ獲得手段に優れているため、先にこっちが干上がってしまう体たらく。まだ《鬼流の金床》で少しでもライフを詰めた方が有意義です。《鬼流の金床》も、2枚並べるとドレインとトークン生成の両方が劇的に加速しますが、ここにも《兄弟仲の終焉》が突き刺さります。
準専用サイドボードの《歴史の彼方》を綺麗に当てられればアドバンテージ、テンポ両面での挽回が期待できますので、兎角《絶望招来》を通してライフを詰め切りましょう。《歴史の彼方》を採用しない場合は《豪火を放て》を追加しますが、マナコストの高い置物が多く、打ち消し呪文も使われているので思った様には当てられないことに注意してください。
体感メイン相性:五分
メインは、相手のマナ加速キープを咎める手段が多く、ライフを詰めることができます。
サイドアウトしている除去についても、最低限《鏡割りの寓話》には当たるので、思ったよりダブつくことはありません。
《瞬足光線の大隊》より前に決める、あるいは《街並みの地ならし屋》に
《羅利骨灰》を当てるなど、うっかり拾える勝ち展開というのは、むしろメインの方が多いです。
体感サイド相性:微不利
こちらも十分意識してはいますが、相手の打ち消しと《兄弟仲の終焉》の増量によって、ライフを削るのが難しくなります。
《マイトストーンとウィークストーン》は、壊すことこそできますが、アドバンテージの損失が大きい展開で、大隊を投げられるまでの時間をなかなか稼げません。
とはいえ、相手も点対応のデッキなので、《兄弟仲の終焉》《マイトストーンとウィークストーン》を引けない等の噛み合いがあれば一瞬でライフを削りきれたりもしますね。
青単
《傲慢なジン》というオリカが1枚で成立させた青単デッキです。
本来は劇的なはずの《黙示録、シェオルドレッド》が、専用サイドボードの《嵐風招来》で奪われるのはかなりクるものがあります。
正直全部抜いてしまいたいくらいなのですが、追加カードの《知識の流れ》のせいで、多少はドローを咎めないとすぐにとんでもないことになってしまいます。
とはいえ、こちらの低マナアクションはどれも脅威度が高く、特に《ヴェールのリリアナ》は1枚で完封が狙えるほどのカードです。
相手にドロースペルを撃つ隙を与えなければ何かは通ります。出たとこ勝負ですね。
体感メイン相性:微不利
メインは、こちらのキープも最適解では無く、除去としては無駄に重いカードが多いのでカウンターで咎められやすいです。
一対一交換をして、相手のドロー呪文を止めている間は、なかなか
《傲慢なジン》も出てきませんので、如何に無駄牌を引かないかの勝負になってきます。
体感サイド相性:微不利
あまりサイドボードを取っておらず、相性は劇的には改善できません。
結局《傲慢なジン》が定着するかどうかだけのゲームなので、たとえば《税血の収穫者》を2枚通せれば急に除去札が増えたりします。
かつては長期戦はこちらに分がありましたが、今では《知識の流れ》を撃たれたらゲームセットなのが辛いところです。
終わりに
思わぬ長文となってしまった拙記事を最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
来たる2月3日は[ファイレクシア:完全なる統一]の日本での発売日となり、スタンダードにはさらなる激動が待っているものと予測されます。
このジャンドミッドレンジガイドがそれまでの期間のエリア予選、放浪皇争奪戦PWCSの助けとなれば幸いです。
願わくば、この期間でジャンドの使用者が増えて、次環境にてグリクシスの牙城を崩せるほどの完成度に進化することを期待しています。
虎咲タイガ