ヴァラクート調整記/A Guide to RG Valakut
みなさんこんにちは。虎咲タイガと申します。
残念ながら、大きな大会で目立った成績を残したわけではないのですが、このたび念願のリーグ5-0をすることができました。
いい機会なので、自分の使っているヴァラクートデッキの記事を書きたいと思いました。これはヴァラクートに限った話ではないのですが、最近のモダン環境は強力な新カードが連発されており、まさに激動の時代です。
そんなモダン環境では、シーズンごとのメタに合わせて、デッキ選択そのものを変えるプレイヤーが多く、一度デッキの根幹部分が固まったデッキはあまりアップデートがされない傾向があるように思います。
この記事が、自分が初めてヴァラクートデッキを作ったときに、多くの先達の記事を参考にしたように、同業者と後輩のみなさんのお役に立てば幸いです。
0.ヴァラクートを使い始めた理由
恥ずかしながら、自分がこの[赤緑ヴァラクート/タイタンシフト]というデッキを使用し始めたのはごく最近、2019年4月19~21日のグランプリ横浜からになります。
それまでは、[出産の殻][アブザン][The Rock][ジャンド]といったBG系のデッキを愛用していたのですが、《出産の殻》禁止以降のBGデッキでは常に後半の引きムラに悩まされていました。
そんなとき、動画でスタン当時のヴァラクートデッキの動きを見て、土地、クリーチャー、呪文の全てがフィニッシャーとなるこのデッキなら、引きムラに悩むことも少ないだろうと考え、デッキを乗り換えるという決断をしました。
そのため、自分のレシピは既存のリストを参考にはしていますが、かなりスタンダード時代の[赤緑ヴァラクート]に寄っていて、コンボデッキとしての要素はかなり薄れていると思います。
[赤緑ヴァラクート]を実際に使用して見た結果、感じたメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット
・キルターンの遅いデッキ(5ターン~)に強い
・地上のアグロデッキに強い(死者の原野加入後)
・対策カードが限られている
デメリット
・キルターンの早いデッキ(~3ターン)には弱い
・相手のアクションを咎める余裕があまり無い
・緑赤というデッキカラー故の不器用さ
これらのメリットに心惹かれた方は、是非以後の拙文もお読みいただければと思います。
1.現在使用中のレシピ
現在使用しているレシピがこちらになります。
メインボード(60)
土地(28)
《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》 4
《霧深い雨林/Misty Rainforest》 1
《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》 1
《吹きさらしの荒野/Windswept Heath》 1
《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》 1
《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 3
《燃えがらの林間地/Tinder Glade》 2
《隠れた茂み/Sheltered Thicket》 1
《山/Mountain》3
《冠雪の山/Snow-Covered Mountain》3
《森/Forest》1
《冠雪の森/Snow-Covered Forest》1
《ギャレンブリグ城/Castle Garenbrig》1
《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle》3
《死者の原野/Field of the Dead》2
クリーチャー(9)
《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》1
《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》2
《探索する獣/Questing Beast》2
《原始のタイタン/Primeval Titan》4
呪文(23)
《明日への探索/Search for Tomorrow》4
《遥か見/Farseek》4
《探検/Explore》4
《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》2
《カルニの心臓の探検/Kahlni Heart Expedition》2
《大いなる創造者、カーン/Karn, the Great Creator》4
《僻境への脱出/Escape to the Wilds》1
《目覚めた猛火、チャンドラ/Chandra, Awakened Inferno》1
《風景の変容/Scapeshift》2
サイドボード(15)
《古えの遺恨/Ancient Grudge》2
《紅蓮地獄/Pyroclasm》2
《目覚めた猛火、チャンドラ/Chandra, Awakened Inferno》1
《活性の力/Force of Vigor》1
《減衰球/Damping Sphere》1
《罠の橋/Ensnaring Bridge》1
《ナイレアの弓/Bow of Nylea》1
《護法の宝珠/Orbs of Warding》1
《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》1
《虚空の杯/Chalice of the Void》2
2.基本構築理論
これは個人的な考えですが、[赤緑ヴァラクート]というデッキでは、以下の3点を最低限抑えておくべきだと思います。
・緑マナ源(タップイン含) 16枚~ 土地 28枚
・2マナ以下のマナ加速 14枚~
・フィニッシャー 8枚~10枚
これさえ守っておけば、すべて自由枠と言っても過言ではありません。
これらのカードを軸として、4~5ターン目に勝つ、もしくは圧倒的な盤面を作るのが[ヴァラクート]デッキの基本戦略となります。
本項ではまず、必須枠に採用するカードに対する自分の評価を共有できればと思います。
・《死者の原野》採用時の土地
M20で《死者の原野》が登場したことで、[ヴァラクート]の土地事情は一変し、サーチする土地やセットする土地の順番にも、以前はほとんど無かった、正解と間違いが現われてきました。
現在採用している特徴的な土地について、それぞれ解説したいと思います。
・フェッチランド
赤緑以外のフェッチランドは1枚ずつ散らしたほうが懸命です。
対戦相手が呪禁を持っている、《ルーンの光輪》で《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を指定されるなどの状況下において、《風景の変容》がフィニッシャーの場合、《死者の原野》+フェッチランド数種で、可能な限り原野を誘発させたいためです。
この展開で、戦場にフェッチランドが並んでいる場合は、全体除去に耐性が付く上、その後のドローも(フェッチランドが弾かれているので)相対的に強化されます。《風景の変容》の時点で、デッキからマナの出る土地を大量に消費してしまうと、その後の展開が厳しくなってしまいます。
また、僅かながら《真髄の針》、《外科的摘出》への耐性もつくため、《吹きさらしの荒野》4で妥協するのはやめましょう。
[赤緑ヴァラクート]が1ターン目にサーチする土地は、《森》《踏み鳴らされる地》《隠れた茂み》であることが多いです。《血染めの月》を考えても、緑絡みのフェッチ3種がまず優先されると思いますが、2ターン目以降では《山》をサーチしたいことも多いので、4枚目以降は赤絡みのフェッチを1枚ずつ増やすのが良いと思います。
《虹色の眺望》はあまりお勧めできません。(後述)
・《冠雪の基本土地》と《基本土地》
対戦相手の方は、誘発するまで意識してないことも多いのですが、名称が異なるので《死者の原野》を誘発させることができます。現状のモダンでは、氷雪であることのデメリットはほぼ無いので、当たり前ですが散らしておきましょう。
森は[1:1]なので問題ないのですが、山には[3:3][4:2][5:1]の3パターンが考えられます。
比較すると、[3:3]は基本山を2枚以上素引きした場合に、異なる名称である可能性が高くなるという点で、[5:1]は山を素引きしてない場合に1枚のほうをサーチして置くことで、後引きの山を被らせないという点で強みがありますが、ここの比率は正直好みでいいと思います。
・《死者の原野》2枚の採用
めでたく10月25日付けでスタンダードで禁止カードの仲間入りを果たすぶっ壊れカード。アップデートの少ないテンプレ[ヴァラクート]でも、今日はどのデッキでも1枚採用される《死者の原野》。
非常に強力なカードであることには、もはや疑いの余地もありませんが、2枚採用しているレシピは見かけません。
しかし《原始のタイタン》キャスト時に《死者の原野》プランを取り、6種類の土地をコントロールしている場合、《死者の原野》が1枚と2枚では大きな差が生まれます。デッキに2枚の原野を投入している場合は、ブロッカーにもなる14点クロックを用意することができ、次のターンの誘発を考えると充分人が殺せる数字です。
仮に盤面を凌がれたとしても、その後のゾンビが出てくるスピードも段違いなので、可能な限り2枚の採用をお勧めいたします。
代わりに、サーチして場に出すことが多い《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を1枚削りました。土地を何枚も破壊されるようなゲーム展開では影響が出ますが、普通のマッチでは、後述の理由により3枚のほうが強いくらいだと思います。
・《踏み鳴らされる地》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》3枚
4枚フル採用されることが多いこれらの土地ですが、《死者の原野》を使う場合は、思考停止で投入するのはおススメしません。
素引きで同種の土地カードを重ね引きして、なおかつ置かざるを得ない展開になった場合、勝敗に影響するテンポロスが発生してしまいます。
《踏み鳴らされる地》は強力な土地ですが、フェッチランドからサーチもできますので、3枚程度に抑えておくのが無難かと思います。
・《隠れた茂み》
[ヴァラクート]というデッキは、本当にマナの余らないデッキで、手札に来た場合のサイクリング(2)よりも、タップインのデメリットが大きく、自分は原野以前には使用に値しないと思っていました。
今では1~2枚採用したほうがいいでしょう。フェッチランドからのタップインや《遥か見》では、まず最初に探すのがおススメです。レアケースですが、手札が土地ばかりでアクションが無いときはサイクリングすることもあります。
《死者の原野》が生きている限り、今後も名前の違う[山・森]の土地が出るたびに1枚ずつ採用されることになるでしょう。
・《ギャレンブリグ城》
まだ採用枚数については確証がありませんが、強力なカードです。
早速2枚投入したリストが結果を残していますが、自分はまだ1枚しか枠が取れないでいます。
デッキ内でこのマナ能力を活かせるのは《原始のタイタン》1種のみですが、[ヴァラクート]最強のフィニッシャーを1マナ軽くキャストできるのは大変嬉しい。
《明日への探索》を経由した場合は最速3tにキャストできる爆発力だけでなく、3tを《クルフィックスの狩猟者》《大いなる創造者、カーン》のようなマナ加速でないアクションに費やしても、4tにタイタンをキャストすることができます。
1ターン目以外にタップインする危険性はほとんど無いのですが、最大の懸念はやはり山でないためヴァラクートの条件を満たせないこと、マナ能力の起動には緑のダブルシンボルが要求され(計2GGG)ることです。基本土地でこのマナを購うと、ヴァラクートの噴火は絶望的です。一方で、《森》ではない緑マナなので、《死者の原野》とは相性がいいです。
・[基本土地カウント]
厳密には個々の土地と言うわけではないのですが、大事なことなのでここで尺を取らせていただきます。
ずいぶんと既存のヴァラクートから剥離してしまっている自分のデッキですが、基本土地の枚数については、多くのデッキと一致しています。
自分も長らく考えた結果、ヴァラクートの基本土地の枚数は8枚[1,1,3,3]が最も優れていると感じます。
しかし、ここで気をつけなければいけないのは、[基本土地のみをサーチできるカード]の合計枚数です。
使用に値するカードでは、《明日への探索》《桜族の長老》《カルニの心臓の探検》《耕作》《木霊の手の内》《ニッサの復興》《虹色の眺望》などのカードが上げられます。
これらの合計枚数は、8枚程度に纏めておいたほうが懸命です。
《流刑への道》《暗殺者の戦利品》《廃墟の地》など、近年は基本土地を代償とするカードの枚数も増えたこともあり、デッキ内の基本土地の残量が危うくなるだけでなく、基本土地を並べていくと、場の山の枚数、土地の種類、緑マナの確保などに難が生じます。
およそ《明日への探索》が必須枠なので、自分は《桜族の長老》3枚を隠居させてあげることにしました。
・各《2マナ以下の加速》の評価
モダン環境において、2マナ以下で土地を戦場に出せるアクションというのはそれほど多くありません。それぞれの長所と短所が存在するので、それを解説できればと思います。
採用カード
・《遥か見》
M20から《死者の原野》が加入したことによって、名実ともに最強ランパンとなった《遥か見》。先行2ターンにとりあえず打つマナ加速としては最適で、赤赤と緑緑をライフの負担無く揃えることができます。
5種13枚のカードをサーチすることができますが、大抵の場合は《隠れた茂み》《踏み鳴らされる地》《燃えがらの林間地》《山》の順にサーチしていけば大丈夫です。例外的に、手札に素引きした《燃えがらの林間地》をアンタップインとしてカウントしないと動けない場合には、適宜《山》をサーチする場合があります。
・《探検》
しかし、ヴァラクートで最強の2マナ加速はこの《探検》。
最大の強みは、土地がアンタップインという点で、3t以降は実質1マナというところ。手札に来た《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》や《死者の原野》を一度に2枚処理する動きは他のカードにはできないし、《クルフィックスの狩猟者》とはズッ友の関係です。
確定加速では無いことが唯一の弱みなので、手札に充分な土地が無いときは、他の加速を優先して打ちましょう。この展開を重く見るなら、《耕作》などを採用すると安定します。
・《明日への探索》
1マナで待機2ができるというのが唯一無二の強みで、弱みは数多くあるのだが、その一点のみで帳消しにしている。
[ヴァラクート]唯一の1ターン目のアクションと言ってよく、このカードの有無で、違うデッキと言えるほど強さが変わるのは有名な話。
弱みをあげるとすると、基本土地しか持ってこられない点、(後手番で待機した時は)《時を解す者、テフェリー》《夢を引き裂く者、アショク》といったヘイトスピーカーに弱いのが特徴的です。
ファッキンヘイトスピーカーども
最速待機時は3tのアップキープに土地をアンタップインで出せるので、マナが使える速度としては2tのタップインと同じタイミングです。
自身の使う《虚空の杯》と相性がいい点や、サーチが後回しなので《レオニンの裁き人》に強い点などは地味ながら見逃せない長所です。
・《桜族の長老》
みんな大好きおじいちゃん。遺産で《山》購入。
ほぼ《不屈の自然》の上位互換カードで、巷では最強の2マナ加速との呼び声も高いです。
決して弱いカードではないのですが、デッキの基本土地枚数を考えると、あまり重ね引きはしたくないところです。
非クリーチャー呪文を咎める《呪文貫き》《否認》《否定の力》系のカウンター、《スレイベンの守護者、サリア》《ギラプールの希望》《イーオスのレインジャー長》系のキャスト妨害にかからないのは、2マナ加速ではおじいちゃんだけです。
また、起動タイミングを調整できるので、《タルモゴイフ》《死の影》系の大型クリーチャーにブロックした後に起動できるのと、《レオニンの裁き人》《夢を引き裂く者、アショク》に対する耐性が若干あるのが強みです。
各種フェッチランド、《桜族の長老》、《カルニの心臓の探検》は、[ヴァラクート]デッキに置ける強力なインスタント火力でもあります。
[コピーキャット][ケシスコンボ]などと相対するときには、安易に起動せず温存しておきましょう。
・《カルニの心臓の探検》
条件を満たすと《爆発的植生》になるエンチャント。え!?2マナで《爆発的植生》を!?
《時を解す者、テフェリー》や《突然の衰微》などの置物破壊に弱い側面こそありますが、基本土地とはいえ一気に2枚もサーチできるのは破格で、おじいちゃんと同様に《死者の原野》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》をインスタントタイミングで誘発できるのが強みです。
また、《カルニの心臓の探検》+1枚の加速で4t土地7枚が達成できるので、リソース勝負にも強い上、《明日への探索》が絡めば、《約束の刻》《原始のタイタン》を出したターンに12点を誘発できるなど、爆発力が非常に高いカードです。
後引きに弱いという意見もありますが、それは大抵、他のデッキの手なりで圧縮のためにフェッチランドを無為に消費しているのが原因です。
あえて断言しますが、[ヴァラクート]デッキにおいて、後半に圧縮のためだけにフェッチを切るということはほぼありえません。《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》や《死者の原野》の効果を下げてしまいます。(意味のある土地が全部抜かれたら…残る勝ち手段に向けて僅かでも圧縮しましょう)
弱点としては、2マナのアクションではありますが、3t4マナに貢献しないので、手札が完璧ならば、《原始のタイタン》が着地するまで(あるいは、ゲームが終わるまで)出さない余剰カードになることも多いです。
不採用カード
・《不屈の自然》
元祖ランパン。《桜族の長老》より優先することはなく、追加で採用するというのも基本土地の総数を考えるとほぼ無いでしょう。
・《北方行》
他の氷雪土地を用意できないと、《不屈の自然》の更なる下位互換。それでも《遥か見》より優先することはほぼ無いでしょう。
山のサブタイプを持った、氷雪タップインデュアルランドが登場した場合、1枚採用する可能性はあります。
番外編
・《小道の再交差》
これは3マナ加速ですが、アンタップインなので、《明日への探索》の通常キャストと同じスピードです。
特徴的なのは、ライブラリーを探さないことで、《夢を引き裂く者、アショク》に耐性があります。
デッキの上から土地が出るまでめくってそのカードを戦場に出すので、ランダムながら《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》《死者の原野》にアクセスすることができます。
激突で勝利すれば手札に戻せるので、2回以上使えることもありますが、それよりも大切なのは、激突が実質占術1になることで、トップから土地を出してから、激突をする関係で、《クルフィックスの狩猟者》のようにスペルにアクセスすることができます。
安定しないカードではありますが、唯一性が非常に高いので、いつか必要になる環境が来ると思うので憶えておきましょう。
・フィニッシャー
・《原始のタイタン》
説明不要のヴァラクート最強のフィニッシャー。場に出た時点で仕事をしているのに、次のターンに攻撃できればほぼ勝利というのが強み。
このカードを水増しするために《召喚師の契約》が使われているほど。
・《風景の変容》
こちらも説明不要でしょうか。土地を選り好みする《原始のタイタン》と違い、任意の7枚の土地から18点ダメージ、8枚の土地から36点ダメージを叩き込めるのが強みです。
コンボデッキと速度勝負をする際には頼りになります。
その性質上、実質7~8マナのソーサリーとなるので、序盤の動きに関与できないのは気になります。
また、重ね引きする展開も非常に弱いです。ハンデスやカウンター、土地破壊といった消耗戦に対しては、手札で腐る展開になりがちです。
さらに、《原始のタイタン》とは必要なゲーム展開が厳密には異なるので、手札のフィニッシャーがどちらかを考慮して、マナ加速やフェッチランドでサーチする土地はしっかりと決めましょう。
手札に複数フィニッシャーがある展開では、そのどちらかがあまり札になることが多いですので、対[ヴァラクート]でのハンデスは、場に出たときに対処できないデッキだと、タイタンなどを落としたくなるのですが、割り切って、加速を落とすのが正解であることが多いです。
・《目覚めた猛火、チャンドラ》
M20の新戦力その2。フィニッシャーとしては1段劣りますが、青系コントロールデッキとアグロデッキに対しては充分な圧力があります。
メインボードにこのカードの枠を割くことについて、重要なのは、《罠の橋》《血染めの月》(《神聖の力戦》などを含む)の上から1枚で勝てるフィニッシャーという点です。
プリズン系のマッチでは、上記のヘイト置物を置かれ、土地加速分のライブラリー差でメインボードを落とすという自体が頻発します。盤面を完全に掌握したにも関わらず、ライブラリー差で負けるというのは屈辱的ですので、しっかりと対策しておきましょう。
以前はこの枠は《反逆の先導者、チャンドラ》でしたが、明確に強化されたと感じます。しかし、どちらもパワーカードであるのは間違いないので、併用は充分ありえると思います。
ここからは準フィニッシャー枠です。そのカード1枚で勝つわけではないけども、他のマナ加速が代わりにフィニッシャーになったり、引き込んだカードで勝つことができるカード群です。
・《約束の刻》
このカードは一番分かりやすいカードだと思います。《原始のタイタン》の誘発型能力を抜き出したソーサリーで、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》《死者の原野》にアクセスする用途がメインです。
《風景の変容》と大きく異なるのは、自身がランプスペルとして充分な能力を備えているので、爆発力と引き換えに、消耗戦に強い点が挙げられます。
《死者の原野》が加入したことで、異なる名前の土地5マナから、ゾンビを2体生成してブロッカーにすることができるようになり、アグロデッキに強く出られるフィニッシャーの立場を手に入れました。
かつてスタンダードで砂漠をサーチしてゾンビを出していたことを思うと大変趣深いです。
《ギャレンブリグ城》の加入で《原始のタイタン》を5マナで出せるようになったので、唯一性は多少失われましたが、2枚くらい採用するには大変いいカードです。
・《僻境への脱出》
大好評発売中!のエルドレインの王権からの新戦力です。カード効果は、《探検》+4枚になった《衝動的な行動》みたいなものです。
アドバンテージを活かすためにはアクションが固定されてしまいますが、この効果で《原始のタイタン》《風景の変容》を探して、フィニッシャーとすることができます。
《約束の刻》ほどではないですが、最低限ランプスペルとしての性能も備えているので、よほど運が悪くなければ、2ターン土地を置くことで、7マナに到達できます。
問題は、5マナアクションであるにも関わらず、盤面に対する影響がほぼ0なことで、ミッドレンジデッキに強い反面、アグロデッキには頼りない部分があります。
・《大いなる創造者、カーン》
灯争大戦の新戦力。とはいえ、モダンホライズンによって成立した[ウルザソプター]への対策カードとしての側面が強いです。
[ヴァラクート]はその性質上、高速コンボデッキに不利がつき、[ウルザソプター]はその中でも最もメジャーなデッキといっていいでしょう。
《大いなる創造者、カーン》は安定して3tにキャストすることができ、アーティファクトの起動型能力を止める常在型能力でコンボに干渉することができます。
さらに、サイドボードのスロットを消費しますが、-2能力によって各種ヘイトカードをサーチして、メインボードから様々なデッキに対応することができます。
カーンのシルバーバレットカードについては、専用の項目を用意していますので、後ほど詳しく解説いたします。
3.テンプレ構築との差異
ここからは、自分の構築の特徴的な部分を解説したいと思います。
Goldfishのカード使用率を参考に、いわゆるテンプレ構築で使われているカードを不採用にした理由を解説させていただきます。
不採用カードたち
・3,4枚目の《風景の変容》
《風景の変容》というカードは、4ターン目に勝利することができる非常に強力なカードで、どんな相手にもコンボパーツとして最低限の働きができます。
しかし、自分はこのカードの採用枚数を2枚に留めています。かつて4枚使用していたときに感じた大きな問題は以下のとおりです。
・固め引きをした場合に無駄牌になる。ハンデスの的にもなれない。
・《原始のタイタン》とゲームプランが異なる。
・カードの寿命が短い。4t以降に1枚だけ必要なカードを、初手に何枚も抱えていられない。
※《否定の力》に引っかかる。
もちろん、《風景の変容》4というレシピを完全否定するわけではありません。自分は爆発力の代わりに、安定性を選んだというだけです。
・《稲妻》《神々の憤怒》などの不採用
アグロデッキ、クリーチャーコンボに対して、多少は妨害したいというのは当然の感情です。
しかし、一般的なヴァラクートのメインプランは[2マナ加速]+[2マナ加速2枚]+[フィニッシャー(風景の変容)]という流れで、そこに《稲妻》や《神々の憤怒》の居場所はありません。
《原始のタイタン》プランのときは多少はマナの余裕がありますが、今度はリソース枚数が重く圧し掛かってきます。
前述のとおり、ヴァラクートのプランを完遂するためには1,2枚の余剰リソースがありますが、《稲妻》はその余剰リソースを確実に食べるカードです。
つまり、他の手札はほぼ完璧でないといけない、ということになり、強みである安定性が大きく損なわれてしまいます。
しかも、ヴァラクートはしっかり回れば《稲妻》《神々の憤怒》がメインボードに無くても、部族デッキには有利が取れると思いますので、これらのカードは[ドルイドコンボ]や[バーン]のような極端に苦手なマッチアップのためにデッキを歪めているカードだと感じました。
とてもメインボードに入れる気持ちにはなれませんので、サイドボードに落としました。メインデッキに火力を入れる際には、PWのようにアドバンテージが取れるか、何度も起動できるものが望ましいです。
余談ではありますが、つい最近、サイドの《神々の憤怒》を《紅蓮地獄》に変えました。そもそも《神々の憤怒》《焼けつく双陽》を始めとした3点火力の採用理由は[人間]や[スピリット]のような部族デッキ対策で、特に《神々の憤怒》を《焼けつく双陽》より優先して採用するのは、[ドレッジ]の対策としての側面が強いです。
しかし、《神々の憤怒》では対バーンやデルバーの後手などでは間に合いません。《目覚めた猛火、チャンドラ》の加入もあり、減少傾向にある部族デッキ、[ドレッジ]には、あまり意識を割かなくてもいいでしょう。
現在の環境では《紅蓮地獄》のほうが優れていると考えています。と言ってたら赤単果敢に《変異原性の成長》で回避されて負けました。
マローの過ち
~season.5~
・《召喚師の契約》不採用
このカードは、実質的に《原始のタイタン》の追加枠として採用されています。そして、必要に応じて他の生物にもなれる・・・というカードなのですが、世の[ヴァラクート]ユーザーは、このシルバーバレット部分に囚われすぎだと思います。
《エラダムリーの呼び声》がモダンリーガルとなった今、2マナ相当の効果に、後払いとはいえど4マナは重いです。そのため、対策カードや単純なパワーカードに対して、このカードを使ってサーチした場合には、それらのクリーチャーに支払い強制のエコー(2GG)が付加され、バリューが落ちてしまいます。
このデメリットを無視できるほどのクリーチャーは、きちんと着地した《原始のタイタン》のみです。
また、《召喚師の契約》のシルバーバレットのために《溜め込み屋のアウフ》《再利用の賢者》などにサイドボードを割くのは、デッキ全体のパワーも下げてしまいます。
《大いなる創造者、カーン》と《自然の要求》などと比べるとその差は一目瞭然だと思います。
この追加の《原始のタイタン》としての枠には、《緑の太陽の頂点》というカードがおススメです。1ターン目に森とは言え土地を加速し、7マナで《原始のタイタンを戦場に送りこめ・・・
ピッチスペルで土地も手札に加えることができる新規カード《むかしむかし》などを採用したほうがいいと思います。
・《虹色の前兆》不採用
《虹色の前兆》を漠然とコンボが強くなるカード、と捉えている人も多いのですが、このカードは、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と《風景の変容》を強く使うためのカードで、他にはほぼ何もしません。
《風景の変容》が、法外なダメージを得るためのカードです。
まず問題なのは、現在メインプランのひとつになっている《死者の原野》と相性が悪いことです。
普通の2マナ加速カードと比較した際に、強みとなるのは土地6枚(加速の場合は7枚)の時点で20点以上のダメージが飛ぶ点と、フェッチランドで2回ヴァラクートが誘発する点、さらに《約束の刻》などで《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》をサーチした際に、速やかに相手を殺せることです。
個人的には、《カルニの心臓の探検》よりも《突然の衰微》などの打ち所を与えてしまいますし、土地6枚での《風景の変容》キャストは、スタックで対処されるリスクが伴います。
総合的に見て、2マナ加速より優れている点は少ないと思います。
採用カードたち
・《渋面の溶岩使い》
現在の環境では、《渋面の溶岩使い》はメインに1枚あったほうがいいと思います。ドルイドコンボやアグロデッキに対するカードとしてはこれ以上なく、仮に一般的レシピを使用して、《稲妻》を4枚積んでいたとしても、追加で枠を割くだけの価値があります。
バーンやジャンドなどにも当然強いですが、真価はやはり対部族デッキで発揮されます。
相手の余った除去が飛んでくるという学説もありますが、今のヴァラクートは相手の除去を完全に腐らせて勝つ、というデッキではないのであまり気になりません。
《大いなる創造者、カーン》でサーチしたカードが墓地に落ちてしまった際に、コストとして追放しておくことで、再びカーンでサーチができるようになります。憶えておきましょう。
《クルフィックスの狩猟者》
マイナーカードと言うわけではありませんが、あまり使用率が高くありませんのでここで。
現状の[ヴァラクート]におけるバーン対策ではこのカードが最適だと思います。メイン《強情なベイロス》とは比べ物にならないほどデッキに噛み合います。(当たり前です。)
先述のとおり《探検》とは非常に相性が良いですし、手札に土地が無い、土地しか無いという偏った展開では非常に頼りになるクリーチャーです。
ヴァラクートはプラン完遂に大体1,2枚の余裕があるので、他のハンドが完璧なら無理にキャストせず、手札に残しておけば大丈夫です。
ジャンドなどBG系のマッチでは、ハンデスで削られたリソースを補充するなど、カードの効果は非常に強力なのですが、《王冠泥棒、オーコ》にパクられて負けたり、ハンデスされて《タルモゴイフ》のサイズを上げたり、《夢を引き裂く者、アショク》に《精神を刻む者、ジェイス》さながらの検閲をされたり、強さが裏目に出てしまうお茶目な奴です。
はじめまして
《虚空の杯》
《蘇る死滅都市、ホガーク》と過ごした熱い夏ではメインに4枚投入していました。今はそれほどではないにしろ、とても強力なカードです。
ヴァラクートには1マナのスペルがあまり入っていないので、《稲妻》《召喚師の契約》のようなカードが無ければ[X=0][X=1]で気楽に設置できます。
[X=0]は、《オパールのモックス》《ミシュラのガラクタ》《死せる生》《均衡の復元》などを仮想敵として、
[X=1]は、死の影やアロサウルスデッキのキャントリップを封殺するほかに、フェアデッキの《思考囲い》《外科的摘出》のプランを躱すことができるのを憶えておきましょう。
また、《減衰球》設置後の緑トロン戦では[X=3]で置いたり、ウルザソプターに[X=2]で設置することも稀にあります。
なお、注意としては鱗親和を相手にしたときは、[X=0]で置くための1枚だけをサイドインしましょう。蓄積カウンターは相手のおもちゃなので、[X=1]で設定してもこっちの《原始のタイタン》を打ち消す[X=6]にまで増えてしまうことも多々あります。
4.灯争大戦以降の新カード
ここまでも、灯争大戦以降のカードが数多く登場してきましたが、最近のカードセットは非常にパワーが高く、自分のデッキは、かなり新カードで構成されています。単なるお試し枠では無く、納得した上で使えています。
新カードをまだ試していないヴァラクートプレイヤーのみなさんは、ここまでの自分の好みを踏まえた上で参考にしていただければと思います。
灯争大戦
《大いなる創造者、カーン》
大事なことなので2回言いますが、ヴァラクートというデッキは、3~4ターンキルのデッキを苦手としています。現環境でその筆頭はやはりウルザソプターでしょう。
相手側の動きにも多少左右されますが、3t《大いなる創造者、カーン》というのは、相手をヴァラクートのゲームレンジまで落とすには充分なアクションです。
このカードが《溜め込み屋のアウフ》よりも優れているのは、《王冠泥棒、オーコ》や除去などによって対処され辛い、PWというカードタイプであることに加えて、メインボードに入れられるの充分な強さを備えたカードであることが大きいです。
これは一般論の話ですが、自分の意見としては、メインボードを落とすほど相性の悪い相手に、サイド後2本を、対策カードを引いた上でそれを対処されずに勝つ、というプランは難しいです。
多少サイドボードの枠を食いますが、相手に合わせてサイドボードから対策カードを持ってくることで、ヴァラクートのメイン戦の勝率は飛躍的に向上します。
モダンホライズン
《虹色の眺望》
基本土地をアンタップインで持って来られる新フェッチ。3色目のタッチをしない限りは追加の《樹木茂る山麓》として使うことになります。
先ほども述べましたが、ヴァラクートにとって自然に積める基本土地の枚数は8枚程度です。
基本土地しかサーチできないマナ加速が大量に入っている以上、この扱いには慎重になる必要があります。
森しかサーチできないフェッチ、山しかサーチできないフェッチも、《血染めの月》等を考慮しなければ、《踏み鳴らされる地》を通して望むマナや土地タイプを揃えることができるので、結局のところ、このカードは基本土地を通してライフを守るためのカードということになります。
その一方で、見過ごせない弱点としては、名称カウントの際、5種13枚(山)5種9枚(森)のフェッチと比べて、4種8枚の《虹色の眺望》は一段格が劣ります。
引いたフェッチが噛み合ったときに温存できる2点のライフにそこまでの価値が見出せない、と言う結論に現状ではなりました。
《溜め込み屋のアウフ》
厳密にはこっちのほうが《大いなる創造者、カーン》より後に出たカードではあるのですが、使用し始めた期間はほぼ同時期です。
カーンより優れた部分を強いてあげるなら先行2tに着地させることで《探検の地図》などを抑止できる点が挙げられます。
しかし、サイドボードから1,2枚のこのカードを引いた上で、2マナの加速を放棄してまでやることかは疑問が残ります。
また、《王冠泥棒、オーコ》の登場で、非常に対処されやすいカードになってしまいました。一方、《大いなる創造者、カーン》は5マナあれば《真髄の針》をサーチすることでオーコを止めることができます。
またあったね
《活性の力》
熱心なテストプレイヤーによって、とてもよく調整されたピッチスペルサイクルの緑版です。
主な用途は、緑マナを出さずに《血染めの月》を割ること、ではなく、[呪禁オーラ][ウルザソプター]のようなわるいやつらに、マナを使わずに[2:2]交換を仕掛けていくべきカードです。
ヴァラクートがこのカードをピッチで打つタイミングと言うのは非常に限られていて、マナが浮いていない序盤にあって、今後の展開に影響する置物を置かれた場合に限られます。
《神聖の力戦》や《血染めの月》クラスのカードになら、どこかで2:1交換をしてもいいとは思うのですが、ヴァラクートのヘイト置物は《夢を引き裂く者、アショク》以外はキルターンに破壊すれば事足りるので、緑マナが無いなどの非常時を除いて、リソースを大切にして、4マナで打つことになるでしょう。
こうした性質を持つカードなので、あまり枚数は必要ありません。1枚のみの採用に留めるのが良いと思います。追加のエンチャント破壊が欲しい場合は、別のカードを採用しましょう。
《嵐の乗り切り》
[バーン]と[ストーム]憎しでこんなカードを入れても、ヴァラクートには1マナの呪文がほとんど無く、自分からストームを稼げるデッキではないですし、序盤に脅威を置かないヴァラクートが2マナを立ててこのカードを構えるのは、実質1ターンパスしてしまったのと同じことです。
[バーン]には盤面に出ているクロックで打点を刻まれ、[ストーム]にはキルターンに向けて手札を整えられ、マナが寝たタイミングで仕掛けてくるでしょう。
[ジャンド]や[氷雪スケープシフト]など、構えた時に別のアクションの択があるデッキでは、非常に強力なバーン対策カードであることは間違いありません。
余談ですが、こういうカードほどピッチスペルにして欲しい。
《マグマの陥没孔》
こういうカードは、まず誰に打つか、仮想敵を明確にする必要があります。稲妻で落ちない相手となれば、まず《グルマグのアンコウ》《タルモゴイフ》などでしょうか。
もう毎度のことになりますが、ヴァラクートでサイドボードのカードのためにマナを浮かせるのは大変難しいです。
そのため、探査コストを使って《夢を引き裂く者、アショク》を焼けるという幻想は、(1回起動されて墓地を掃除されてしまうため)捨てたほうが懸命です。
更地に出した《夢を引き裂く者、アショク》は1回起動しておくのが、このカードの対策のみならずおすすめでしたが、後述のとあるカードの登場で覆りました。
ピンピンしている
基本セット2020
《死者の原野》
あまりにも強すぎて、スタンダードでも絶賛大暴れ。10月25日付けでスタンダードで禁止されるカードパワーはお墨付き。
デッキ構成の根幹に関わるので、ここまでのカード選択でも常に意識が必要なすごいやつ。
カードの効果自体は、少し誘発条件が変わった《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》で、《稲妻》の変わりに《歩く死骸》が出ます。
ヴァラクートと比較して、これのすごいところはフェッチランドから2回誘発するところで、エンドにクロックを追加できるのでコントロール、ミッドレンジに強いです。
反面、高速コンボデッキには、ゾンビがブロッカーとして有用でもなければ、負け場を賑やかすくらいのことしかできませんが、たまに、手間取った相手を速やかに賑やかせることもあります。
《夏の帳》
緑のクリコマ
本当に毎回言ってるんですが、タイタンシフトがマナを構えるというのは難しく、ショックインで緑マナを立てた日には、相手の目にもさすがに露骨に映ります。《夏の帳》は1マナなので《嵐の乗り切り》よりは構えやすいですが、ケアされるとマナの浮いてるターンにはクロックを展開されるのがオチです。
ただのハンデスでは無く、《大爆発の魔道士》や《ヴェールのリリアナ》の奥義を弾けたりすれば値千金ではありますが、《ヴェールのリリアナ》の+1能力には効果が乏しく、《大爆発の魔導師》はアップキープに起動できるため、追加のドローも得られず、メインで使うマナを1マナ縛られてしまいます。
打ち消し呪文に対しても、同じような欠点が言えて、《風景の変容》以外呪文を1マナ余らせた状況で打つのはかなり厳しいです。
スタンダード環境で示されているように、非常に強力なカードですが、余剰マナを使い切ることの多いヴァラクートには、あまり合っていないのではないでしょうか。
※《外科的摘出》は《夏の帳》では防げません。気をつけましょう。
《丸焼き》
《夢を引き裂く者、アショク》への回答。現環境ではそれ以上でもそれ以下でもない。
メインプランに関係しない、余りやすい対策カードを、出てくるかどうか分からないアショク野郎のためにサイド枠に割くのか、サイド後入れるのか、7枚にあったらキープするのか、
大変ジレンマを発生させる憎いカードです。
なお、そのジレンマはエルドレインの王権でとあるカードが登場したことで解消されました。
仮に《欠片の双子》が解禁された際にはまた出番が来るかな、と思いますが、双子サイドも《潜水》というプランに合致した1マナカードを手に入れているのが気にかかります。
《目覚めた猛火、チャンドラ》
お待たせしましたすごいやつ。自分が考えるヴァラクートのM20最大の収穫です。(ただし、原野を除く)
前述のとおり、[ヴァラクート]には、メインに1~2枚特殊なフィニッシャーが必要です。すなわち《血染めの月》《罠の橋》《魔女封じの宝球》などの上から勝てるフィニッシャーの存在です。
このヘイト置物どもを割るのはメインでは非現実的なので、この妨害を潜り抜けて勝利する必要があるマッチが存在します。
《目覚めた猛火、チャンドラ》は、+2で燃え続ける紋章を各対戦相手に与えます。起動回数が少なければ多少時間はかかりますが、最も対処の難しい紋章という性質上、フィニッシャーとしての信頼感が段違いです。
他の能力も見て見ましょう。打ち消されないと言う一文は、主に[青系コントロール]、[石鍛冶]などに有効です。
青系デッキの対ヴァラクート鉄板の動きは、脅威を置いて4マナフルオープン。ヴァラクート側は、《謎めいた命令》に飛び込む勇気と、相手のハンドの読みを強要されます。が、《目覚めた猛火、チャンドラ》はそんな勇気を外付けで与えてくれる。
アグロデッキには[-3]の全体除去によって、これらのマッチでもフィニッシャーとして機能することができますが、[-3]はエレメンタルクリーチャーにはダメージが通らないため、多相クリーチャーである《不確定な船乗り》には注意が必要です。
ミッドレンジやコントロールデッキ相手には、盤面に合わせて、+2の忠誠度稼ぎと全体3点、単体X点を使い分けていく形になります。
その過程で相手のライフが徐々に減るので、他に何もしなくても勝利が近づき、忠誠度が高いため《稲妻》などではなかなか落ちません。
PWに飛ぶーXの存在はかなりありがたく、初期状態から憎きヘイトスピーカー《夢を引き裂く者、アショク》を倒すことができます。
や~ら~れ~た~
どんな使い方をしても概ねヴァラクートのプランに合う、強力なPWですが、《原始のタイタン》とマナ域が被っているのが難点で、採用は1~2枚程度かなと思います。
エルドレインの王権
《僻境への脱出》
5マナの多色になったら5枚引けるようになった超探検。サーチと比べれば信頼性はかなり落ちますが、それでも欲しいスペル1枚と土地2枚くらいは捲れる。全部のカードを無理に使わなくても、3枚くらいでマナコスト相応くらいの強さがあります。
マナ域の関係上、《約束の刻》との比較になりますが、この2枚は前述の通り、用途がまったく違うカードです。
《僻境への脱出》は、自分や相手が、除去や対策カードを使わざるを得ないマッチにおいて、薄くなったハンドを回復し、タイタンなどの真打のフィニッシャーにつなげるためのカードです。
フェアデッキと置物でぐだらせたコンボ戦に強い中継ぎのカードです。
かつては2,3枚のハンデスを受けると、《耕作》《カルニの心臓の探検》《不屈の追跡者》のような専用のリソースカードを使わなければ、《風景の変容》に辿り着けないというのが、ヴァラクートデッキの弱さでした。
《僻境への脱出》は、土地5枚と自身の計6枚で、フィニッシャーまでのリソースを確保することができます。
このカードは、あくまで《耕作》《不屈の追跡者》のようなカードの最新型で、リソースの必要性に応じて採用するカードです。
《探索する獣》
君のような逸材を待っていたんだ!!!!
スタンダードで暴れまくる(反復/Rebound)カリスマビーストくん。
4/4/4速攻というスタッツだけでは、当然ヴァラクートのプランには合うはずもありませんが、警戒が加わることでブロック時にも いま きみのまえで そんざいかん を はなつ。
ヴァラクートを相手取るにあたって、18点というライフが土地7枚の《風景の変容》ラインというのは、よく知られていると思いますが、実は《原始のタイタン》のラインは12点で、かなり頻発します。(ヴァラクート2+山2)
探索獣くんが8点のライフを削ってくれると、《原始のタイタン》のキルターンが1ターン早くなります。
接死とブロック制限によって、[エルドラージ]相手ですら、コンバット絡みで損をすることはほぼ無く、打ち消されない限りはかなりの出し得クリーチャー。
そんなオーバーパワーのクリーチャーがプレイヤーを殴ると、なぜか脇にいるPWが蒸発するという怪奇現象が発生する。
あの憎き《夢を引き裂く者、アショク》も返しに探索獣くんを出せば、1残ることもありますが、アドバンテージ面ではキレイに対処できます。
トロン相手にも、4マナカーン、7マナカーンどちらにも強く、一度殴れれば、相手の次のアクションは探索獣の除去に充ててもらえます。土地の枚数が担保されてさえいれば、ヴァラクートはほぼトロンには負けませんね。
このカードをメインボードに投入した背景として、カーンによるサイドボードの圧迫もありましたが、《稲妻》と《突然の衰微》が効かず、《致命的な一押し》以外では相手の対処も大振りになりがちなので、充分活躍できると踏みました。(事実、しっかり活躍できています。)
イゼットデルバー相手に、《若き紅蓮術師》のトークンを乗り越えて20点完走したことすらもあります。今回の記事で1番自信を持っておすすめできるカードです。ご購入はこちらまで。
5.カーンのシルバーバレットのススメ
最後に、《大いなる創造者、カーン》で使用するサイドボードカードをまとめて、この記事は終わりにします。[ヴァラクート]に限らず、カーンを使用する際には多少参考にできるかと思います。
採用カードたち
《虚空の杯》
単純にサイドカードとしても優れていますが、カーンからサーチする相手は《死せる生》《均衡の復元》などをキーカードにした邪悪なデッキです。
《大爆発の魔導師》次第の死せる生と比べて、土地を飛ばされるガルガドンバランスとの相性は最悪クラスですが、《均衡の復元》が早く打っても効果が乏しいこともあり、カーンからの《虚空の杯》X=0は悠々間に合います。その後は《罠の橋》やブロッカーで《大いなるガルガドン》を対処しておけば負ける心配はほぼありません。
《仕組まれた爆薬》
メインボード時点での役割は《死の影》《タルモゴイフ》などのマナレシオの非常に良いクリーチャーを破壊したり、《飛行機械の鋳造所》や《時の篩》《献身のドルイド》などコンボパーツを破壊するのが主な役割ですが、サイドボード後にはキラーカードである《高山の月》を破壊するという役目があります。
《高山の月》は、そもそも入っているかどうかが不確かなカードで、あまり劇的には効かないのですが、噛み合い次第でこちらのコンボを減速させてくる恐れがあります。
そういったサイドカードに、汎用性の高いカードを通して対応できるのは非常に重要です。
《突然の衰微》のようなカードが無い赤緑というカラーリングにとって、このカードは重要な役目を担っています。
(《夢を引き裂く者、アショク》と《血染めの月》を割りたくて、1色のタッチカラーを考えましたが、基本土地を要求されるのでやめました。)
月が綺麗ですね
《真髄の針》
様々な起動型能力に対処できる定番カードです。最速3tに5マナでカーンの4マナ+1マナでキャストできるのがスマートです。
良く指定するカードは、《王冠泥棒、オーコ》《ヴェールのリリアナ》《解放された者、カーン》などのPW、《献身のドルイド》《飛行機械の鋳造所》《桜族の斥候》などのコンボパーツなどで、盤面の脅威に対して器用に使えるいいカードです。
特に、《王冠泥棒、オーコ》はこちらのアーティファクトを鹿にしてくるので、真っ先に止めておく必要があります。
あやつは忠誠度が高すぎるので、《真髄の針》が最高の回答だと思います。
また、あえたね
《減衰球》
このカードは[ストーム]、[むかつき]、[緑トロン]、[エルドラージトロン]、[アミュレットタイタン]などにクリティカルなサイドボードです。
この手のクリティカルサイドボードには珍しく、有効な相手が非常に多いので、普通の[ヴァラクート]デッキにもサイドに数枚つまれています。
カーンからのサーチは、若干遅く感じるときも多いですが、クリティカルな相手が、《大いなる創造者、カーン》をそもそも苦手としていることが多く、相手がカーンの対処にターンを使ってくれるため、間に合う印象です。
《液鋼の塗膜》
《大いなる創造者、カーン》とコンボすることで一躍有名になったシンデレラカードのNo.2。
土地をアーティファクトにして、カーンの+1で墓地に送るのが基本ムーブだが、なかなか基本ムーブをさせてもらえないカード。
一番多い使い方はアップキープに《リシャーダの港》《真髄の針》的に使う方法で、そのターンカーンが生きている限り、相手のカードを1枚無効化することができます。
《古えの遺恨》を投入するマッチでは、遺恨を《名誉回復》に変えるという動きも可能です。
ただ、このカードはアーティファクトなので、相手に後追いで《大いなる創造者、カーン》を出された際は起動ができなくなってしまいます。
そのときは開き直って2/2のクリーチャーとして殴りましょう。
《罠の橋》
カーンのウィッシュボードとしてはド定番ですが、アグロデッキを1枚で封殺するとんでもないカードです。
ヴァラクートでは、普通に入れて3tに置く、というのは手札が掃けてないことが多く微妙な印象でしたが、カーンを通して使用することで、手札のマナ加速を適宜消費できて、ちょうど良いと感じました。
《罠の橋》が機能している間に、土地を並べてヴァラクートで本体を焼いて勝つか、原野でゾンビを充分ブロッカーにできればいいので、実際に引きこもっている時間はあまり長くはないです。
こちらの《原始のタイタン》も当然攻撃できなくなりますが、どんどんキャストして土地を並べていきましょう。
カーンで《罠の橋》をクリーチャー化すると、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の誘発で殺すことができるので、スマートではないですが覚えておきましょう。
《護法の宝珠》
《魔女封じの宝珠》と同種の呪禁付与アーティファクトです。[バーン][ストーム][ライブラリーアウト]などに対してのキラーカードになります。
2種を比較した際にはおまけのテキストとマナコストを比べるのですが、《護法の宝球》は、5マナになっている代わりに、プレイヤーが受けるダメージをそれぞれ1点ずつ軽減します。
バーンの地上クロックや、ストームのゴブリントークンを考えると、1マナの差よりも効果の差は大きいと感じました。《大歓楽の幻霊》のダメージも軽減されるので、非常に動きやすいです。
カーンを無視されて本体を殴られる展開は非常に多いのですが、このカードで1ターンを稼げることも多く、なかなか存在感のあるアーティファクトです。
《ナイレアの弓》
僕がこの記事で言いたいことの大半は、《探索する獣》と、この《ナイレアの弓》の強さだ!
《ナイレアの弓》は非常に器用なカードで、まず常在型の能力で、攻撃クリーチャーに接死がつきます。《原始のタイタン》のトランプルを強化し、さらに、大量のゾンビトークンを一切の損なく相手のブロッカーと交換していけます。
春の能力で、クリーチャー1体に+1/+1カウンターを1個置けます。ヴァラクートではあまり使い道がないですが、相手のブロックにマージンを要求し、最後の1点になることも多々あります。
夏の能力で、飛行クリーチャーに2点のダメージが飛びます。[デルバー]、[スピリット]、[フェアリー]のようなデッキに対して非常に強力です。
秋の能力で、3点ゲインができます。盤面を取り返し、ライフのみが懸念という段階でサーチして、毎ターン3ゲインが可能です。[バーン]に対して軸となるモードで、[デルバーデッキ]、[石鍛冶]などにも効果的です。
冬の能力で、墓地から4枚のカードをライブラリーのボトムに送ることができます。一見地味な効果ですが、モダンヴァラクートにおいて、《ナイレアの弓》の最重要モードはこれです。
相性[1:9]とも言われる[ライブラリーアウト]相手に、相手のエンドフェイズ、自分のアップキープのタイミングに起動することで、ライブラリーアウトによる敗北をかなりの確率で避けられます。
《護法の宝球》と併用できれば、勝利は目前と言っていいでしょう。
デッキを削られて、《大いなる創造者、カーン》そのものを《外科的摘出》されないように、《虚空の杯》X=1で対策するのがおすすめです。
他に、ライブラリー修復の効果を使うマッチは、[青白コントロール][ガルガドンバランス][赤緑ポンザ]などです。一度割られてしまった土地をデッキに戻すことで、マナ加速スペルを生き返らせ、ヴァラクートを誘発させることができます。
不採用カードたち
《マイコシンスの格子》
《大いなる創造者、カーン》とコンボすることで一躍有名になったシンデレラカードのNo.1。
全パーマネントをアーティファクトにすることで、土地からもマナが出なくなり、ロック状態に持ち込まれるのは、有名なコンボです。
始めは、カーン採用に併せて、このカードも投入していたのですが、全体除去に乏しく、ブロッカーを出せていない[ヴァラクート]デッキでは、カーンを殴られることで、ロックを解除されてしまいます。
《原始のタイタン》よりも、インパクトがある展開になることはあまり無いので、不用であるという判断を下しました。
余談ですが、[ヴァラクート]はマイコカーンのロックを脱出することができます。《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の誘発でカーンを焼き切れれば、自由に動くことができるようになります。
《殴打頭蓋》《ワームとぐろエンジン》
クリーチャーを使ってのライフゲイン枠。《頭蓋割り》さえ合わせられなければ、バーンに対して圧倒的な強さを誇ります。
どちらのカードも、クリーチャーとしてのカードパワーが高いので、ミッドレンジデッキなどにも流用できます。
カーンのブロッカーを用意したいという展開は多々あるので、サイドに1枠用意できれば活躍するタイミングはあると思います。
《不屈の巡礼者、ゴロス》
スタンダードで大暴れ、そしてお役御免のゴロス君。
このデッキではカーンから持って来る準フィニッシャー役を務めます。
3/5のスタッツは、カーンを守る壁としては充分で、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》《死者の原野》を持って来られるので、その後の展開が安定します。
《領事の旗艦、スカイソブリン》
サーチできる除去カード枠で、戦場に出たときの3点の効果がメイン。
登場時+攻撃時の計6点で、《夢を引き裂く者、アショク》を退治することができるが、搭乗3はこのデッキではかなり重い。しかし、《大いなる創造者、カーン》からアショクを倒すには、X=3の《仕組まれた爆薬》か、このカードくらいしかないというのが現実。
アグロデッキにも非常に強力だと思われるが、《罠の橋》を優先するため、あまり活躍する機会が無い。
《墓堀りの檻》
弱体化した[ドレッジ]、[ドルイドコンボ]、[カンパニー]に効果的ですが、1枚で完封できるかというと難しいところ。
墓地対策としては、カーンを用いたウィッシュボードにおいては、《大祖始の遺産》に軍配が上がるため、ライブラリーからのクリーチャーサーチが横行するようなら、また枠を割く必要があると思います。
《大祖師の遺産》
《大祖師の遺産》は、カーンの影響下では奇妙なシナジーがあります。
後半の効果起動時に、自身が追放されるため、カーンの[-2]で再びサーチすることができるようになります。
手札を増やしながら何度も起動できる墓地対策は、《タルモゴイフ》レベルの墓地利用カードにも効果があるレベルです。
また、タップ能力で自身の墓地のアーティファクトを追放することで、それもカーンの[-2]でサーチすることができます。
[ヴァラクート]デッキでは、よくメインに入っていることもある馴染み深いカードですが、カーンと併用する際はずいぶんテクニカルなカードになる印象です。
・おわりに
思ったより長くなってしまいましたが、今回の記事は以上で終わりになります。大会でいい成績を残したり、書いた記事の評判が良かったり、使用デッキに大きな革新が生まれれば、是非また改めて何かの記事を書きたいと思っていますが、とりあえず当面の目標であった、使用デッキの言語化ができたのかなと思っています。
記事の内容、またはヴァラクートデッキに関して、疑問や一言申したいなどございましたら、Twitter @kawatora_2までDM等送っていただければ、できる限りの誠意を持って対応いたします。
巷に聞く、マーフォーク調整チーム(魚会)のように、ヴァラクート調整チームがあれば、是非参加したいなぁと思っている今日この頃です。
駄文長文失礼いたしました。