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米国株式投資の真実を伝える 川田重信の「メディアで鍛える米国株式講座」 [Vol.44]2022年4月25日配信
新企画【人生を豊かにする日経の読み方】
社会人になって40年以上読み続けている日経新聞の中から気になる記事をピックアップしコメントする企画だ。毎週土曜日午前9時〜9時45分にズームへの参加形式で実施している。
参加は無料なのでご興味あるかたはPeatixでお申込みください。
以下は先週土曜日にカバーした記事の表題をいくつか
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2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
さあ、2000万円達成までのカウントダウンを今すぐ始めよう!
1.マーケット振り返り(4月18日~4月22日)
<主要指数>
・NYダウ -1.9%
・S&P500指数 -2.8%
・ナスダック総合指数 -3.8%
=駆け足バージョン=
インフレ抑制のための利上げ姿勢に対する警戒感から、長期金利が2018年12月以来の水準に上昇しました。業績発表は市場予想に対してまちまちの展開で株式市場の下支えとはならず、成長株を中心に軟調な地合いが続きました。
=ちょっとだけ詳しく=
先週の株式市場は、鉱工業生産などの堅調な経済指標を受けて金利が上昇基調となる中で始まりました。
インフレ抑制のための利上げ姿勢を受けて長期金利は2018年12月以来となる3%台直前の水準まで上昇し、ハイテク銘柄などの上値を抑えました。
1-3月期の業績発表では、銀行株やIBMなどの市場予想を上回る決算を発表する銘柄があった一方、動画配信サービスのネットフリックスが初めて契約者数の減少を発表して急落するなど、まちまちの展開となり、株式市場の下支えとはなりませんでした。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長による5月に0.5%の利上げを検討との発言から金融政策に対する警戒感が広がり、週末にかけて売り圧力が強まりました。
2.今週のピックアップ記事
【1】日経新聞 日本企業の「偽りの優しさ」 自己決定重視に転換を
上級論説委員 西條 都夫 4/17
・熱意をもって仕事に取り組むさまを示すエンゲージメント指数で日本は139カ国のなかで132位に沈んだ。日本人には受け身の真面目さはあっても、自発的に仕事に向き合う積極性に欠けるのだ。以前は仕事熱心と称賛された日本人が、なぜこんな事態になってしまったのか。
・一橋大学の伊藤邦雄CFO教育研究センター長は「日本の経営者は『人に優しい』という言葉の意味を取り違えてきたのではないか」と指摘する。経営不振の事業があってもそれを閉じたり売ったりするのは「社員がかわいそう」と尻込みする。経営人材の早期選抜に消極的な会社が多いのも「選に漏れた人がふびん」というある種の恩情がある。
・職場を活性化するキーワードが「自己決定」だ。働く人一人ひとりが自らの選択に覚悟と責任を持ち、自律的にキャリア形成するのが本来の姿である。人事部の言いなりではなく、自ら選んだ仕事なら熱心に取り組むのは当然だ。「やらされ感」から解放され、生き生きと仕事をする人が増えれば、職場と会社は活気を取り戻す。
【川田コメント】
視聴者参加型企画、「人生を豊かにする日経の読み方」では先週(4月23日)、人材関連の記事を取り上げて皆さんの意見も聴いた。
最近の日経新聞には日本人の働き方を考える記事が多いが、この記事もその一つだ。
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今は昔「日本人は優秀で勤勉」
私も昔は、日本人は優秀で自発的に課題に取り組む人達で、自分も当然そうあるべきだと思っていた。その一方で、終身雇用が暗黙の前提で年功序列が幅を利かす組織では、能力ややる気が権限や待遇と一致しないのが普通だ。
しかし、与えられた職場である意味、愚鈍なまでに頑張れば社内の誰かが見てくれていて、いずれ時期が来たらそれが花開く。これが日本の大企業組織で働く人の一つのパターンではないか、そう信じて疑わなかった。
しかし海外で勤務すると分かるのだが、上昇志向があって有能な若手は日本人とは全然違うスピードでキャリアの階段を昇る。周りもそれを待望して受け入れる。
私が勤務したニューヨーク、香港、シンガポールの中では、特に香港でその現実を目のあたりにした。やる気のある若手はキャリア形成に必要なポジションやタイトルに貪欲だし資格試験取得にも熱心で、常に条件の良い職場を探している。終身雇用が前提の駐在員とはベクトルが全然違う。ちなみにニューヨークでは、それほど優秀な社員は私のいた証券会社には来なかった。
元凶は「メンバーシップ型」の「終身雇用制度」か
さて、記事で指摘されている日本人の働き方の問題点を一点に収れんさせるなら、それは‟終身雇用”制度にあると私は思っている。高度成長期まではそれなりに機能した、この仕組みの制度疲労を指摘する声は大きい。
この制度の特徴の一つは「メンバーシップ型雇用」だ。一旦ある組織のメンバーになれば雇用の安定やスキルの習得、さらには組織内労働市場を活用することで異なる職務内容を経験しスキルを習得できる。ただし、労働時間や勤務地、職務内容を限定しない働き方なので転勤や異動も当たり前で、就職ではなく、いわば就社だ。
メンバーシップ型と相対するのが「ジョブ型雇用」だ。この仕組みの下で会社側は従業員に対して職務内容を明確に定義し、労働時間でなく職務や役割で評価する雇用システムだ。転勤も基本的にはない。職務内容を基準として報酬が支払われる(Pay for Job)である。
人事異動、事前の打診なし!
私は大学を出たあと大手証券の‟メンバー”として採用された。家族含めてこの会社に身も心も捧げるのが前提だ。
私はこの会社に19年勤務したが、その間に海外留学と海外駐在に加え、部署の異動を通してこの会社が長年蓄積した貴重な経営資源にアクセスし、学ぶことができた。それらがあるから独立していままで何とかやってこれたと大変に感謝している。
このメンバーシップ型では本人と会社が相思相愛の関係を維持することが双方の満足度を高める鍵になると思っている。その一端が人事異動だ。私の勤めた会社では勤務地も新たな職務内容も本人の意思や希望と無関係に発令されると思っていい。
私の場合、次の部署への異動を事前に打診されたことはほとんどない。たとえば、入社3年目に京都支店から本店引受部(投資銀行部門)への異動は、ある土曜日(当時は半日勤務)昼頃の社内一斉ファックスの異動発令で知った。
その後、海外留学後の系列研究所への異動、その半年後の国際引受部(投資銀行部門)への異動もそうだ。ただし東京での勤務なので家族への負担はない。
しかし5年駐在したニューヨークでは、平日の朝出社後に東京の同僚からの電話で自分の異動を知った。直後に外資系証券の知り合いからも連絡が来た。私より先に東京の同僚や社外の人の方が情報は早かったわけだ。その後、2カ月ぐらいで家族は急遽米国を去ることになる。子供らはずいぶんと驚いたことだろう。
さらにびっくりしたのは香港時代で、2年経過した夏の異動で突然シンガポール行きを命じられた。この時妻は3人目の出産目前だったが、なぜこのタイミングで打診も無く?
その時は家族を香港に残し、シンガポールに単身赴任した。このころからメンバーシップ型雇用の持つマイナス面を意識するようになった。そしてシンガポール着任後しばらくして腹を固めると、帰国希望を直接東京の本部長に伝えて(通常は禁じ手)1年後には東京への異動を発令してもらった。帰国後に転職活動をして翌年には退社した。
メンバーシップ型の功罪
メンバーシップ型には利点も大いにある。たとえば自分にどんな可能性や適性があるのか、会社のほうが客観的に見極められるかもしれない。上手くいけば会社のローテーション人事で社内に広範なネットワークができるし、スキルも自然に身に着くようになっている。
それでも、もっと本人の意向や家族の状況を考慮した人事異動であって欲しいと思ったものだ。また金銭処遇の上限が低いので、退社して独立・起業といった思い切ったリスクテークが出来ない仕組みだ。
会社と‟相思相愛”の関係が大事
ところで私が経験してきた‟抜き打ち人事異動”だが、当時はそれが当たり前と思っていた。ところが、その後社外から古巣を観察して思うのだが、本当に将来を嘱望されたエリートは人事異動などで不満など漏らさないのかもしれない。
というのも、若いときから将来が約束されていると本人が確信しているならどんな異動もライバルに差をつけるための会社側の配慮と思える。それなら不満など出ようはずもない。つまり‟抜き打ち”という被害者意識に捉われるかどうかは本人と会社の関係性の問題で、‟相思相愛”指数次第ということだ。
ちなみに私はニューヨーク勤務の途中ぐらいまでは、会社との‟相思相愛”指数はかなり高いと思っていた。やはりウォール街を経験したことで私の価値観に変化があったのだろう。1985年以降のバブル相場でのノルマ営業の異常さには驚いたが、1989年以降の下落相場の中でも個人投資家の犠牲の上に成り立つ事業モデルにはずいぶん違和感どころか嫌悪感があった。
1985年からのあの狂乱相場とその後の暴落、そして長引く相場低迷の中で1998年に山一証券の自主廃業などの金融危機を迎える。一部始終を見ていながら、自らの進退を社外に見出すことなく口を閉ざしてもくもくと危機脱却の経営計画を策定するのが将来を嘱望されたエリートの了解事項だったのだろうか?
私はニューヨークとアジアでの経験から、日系証券のビジネスモデルに希望があるとは思えなかった。そこで1997年から外資系証券に転職し、2年半だけ在籍した。いわばジョブ型採用でのポジションだ。
仕事の中身はあまり変わらないのに待遇が格段に改善した。ただし職種がセールスヘッドなので処遇はある決まったフォーミュラ(計算式)で算出され、不満の言いようがない。“終身雇用や年功序列を無くせば同じ仕事でこの待遇が可能なのか!”。たかだか2年半の外資系証券勤務で独立起業が可能になったことは本当に有難かった。
抜き打ち人事異動も楽しいと思えた時代があった
ところで、あの抜き打ちの人事異動はそれはそれでスリルがあった。異動時期が近くなるとワクワク、ドキドキした時期もあった。いつ自分がどこに行ってなにをするのか、皆目不明だ。しかし、どこへ異動になろうとも行く先々で同じ価値観を共有し理解し合える人が一緒なので不安は無い。
さらに角度を変えてみれば家族も新たな生活環境で異文化体験できる。これをどうとらえるかの問題だ。本人がそれを前向きに捉えるには、繰り返しになるが、会社との‟相思相愛”指数が相当高いことが条件だろう。
【2】日経新聞 ウォール街ラウンドアップ 大幅利上げに混乱の記憶 4/23
・ナスダック総合株価指数は週間で4%安となり、3月に付けた今年の安値に再び接近した。FRBは5月3~4日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げに加え、保有資産の縮小開始を決定する見通し。利上げ幅が通常の0.25%の倍にあたる0.50%となれば、2000年5月以来だ。
3倍にあたる0.75%となれば94年11月以来。当時は大幅利上げで「逆イールド(長短金利の逆転)」が鮮明となり、デリバティブ(金融派生商品)取引での損失計上が相次いだ。カリフォルニア州オレンジ郡の財政破綻はその代表だ。米国への資本還流でメキシコの通貨危機も発生した。
・FRBのパウエル議長は21日、5月の会合で「0.5%の利上げを検討する」と述べた。金利先物市場では6月と7月の会合でも0.50%以上の利上げを織り込む動きがみられる。
・米国野村証券は、5月は0.50%、6月と7月は0.75%の利上げに踏み切ると予想する。その場合、7月時点で政策金利は2.25~2.5%へ引き上げられ、中立金利水準へと急上昇する。(NQNニューヨーク=張間正義)
ナスダック100過去5日間のチャート 木曜と金曜の2日間で一直線に急落
【川田コメント】
先週の株価下落を招いたのが、利上げスピードと上昇幅に対する投資家の予想の変化だ。この間の市場の見方の変化をいくつか拾ってみる。
*4月15日の時点では、12月のFOMCでFF金利は2.50~2.75%になるとの見方が優勢だった。しかし4月22日の時点で、FF金利先物市場の年末の予想は、2.75〜3%と3〜3.25%の間でほぼ半々にまで上昇してきた。
*米国野村證券は6月と7月で各々0.75%、その後9月、11月、12月にそれぞれ0.25%の引き上げを予想。年末までにFF金利は3〜3.25%と市場のコンセンサスよりアグレッシブな利上げを想定している。
*一方でクリーブランド連銀のメスター総裁は4月22日午後のCNBCのインタビューで、FRBの目的は金融引き締めだが、一気に引き締めるわけではないことを認めた。
*今週は、5月4日のFOMCを控え、FRB高官たちは公式の場での発言を控える「沈黙期間」に入る。経済指標ではFRBにとって重要なインフレ指標である第1四半期の雇用コスト指数(ECI)などが注目。
イメージしているのは1994年2月〜95年2月までの積極的な利上げだ。その後1995年からの長期上昇相場が出現した。今回は1994年当時のようにその後の長期上昇の布石になるような引き締めとなるのか、期待したいところだ。
【3】日経新聞 米株、悲観論じわり 景気減速警戒で見通し下げの動き
要因交錯、荒れる展開も 4/20
米株式相場の先行きに悲観論がじわじわと広がってきた。急激な金融引き締め路線やウクライナ危機でも大幅な調整を免れてきた米国株式市場だが、景気や雇用、インフレ、地政学を巡り様々な要因が交錯するなか、値動きが不安定になりつつある。
弱気派
代表格は米モルガン・スタンレーだ。その根拠は景気に減速のサインがともっていることだ。サプライマネジメント協会(ISM)が発表した3月の製造業景況感指数では、個別項目のうち「新規受注」が53.8と2月から7.9ポイント低下した。2年ぶりに「在庫」の55.5を下回った。モルガン・スタンレーのストラテジスト、ウィルソン氏は「供給が需要に追いついた今、値上げ力は失われる」として供給過剰から値崩れにつながると予測する。
株価の先行きで見方が割れている
ゴールドマン・サックス
S&P500指数の年末時点の見通しを3月に4900から4700に引き下げた。「商品高騰や世界の経済成長見通しが弱まったこと」を背景に、米株の1株あたり利益(EPS)の予想を下方修正した。スイスの金融大手、UBSも、「中立」の姿勢を保ちつつ、同じくS&P500指数の予想を4700に下げている。
強気派
クレディ・スイスだ。3月に米国株を「オーバーウエート(強気)」に引き上げ、足元でも維持している。「健全な家計や企業の財務、サービス産業の回復が先進国の持続的な成長にとって力強いサポートになる」として、「世界経済は当面、成長が続く」と予想する。自社株買いの継続も株価を支えるとみる。
JPモルガンも「経済活動や労働環境の強さがリスク資産を支える」として、S&P500指数は年末までに2割超上昇するとみる。
セクター
ほとんどが「ヘルスケア」を挙げる。弱気派は「(景気の影響を受けにくい)ディフェンシブであること」(モルガン・スタンレー)、強気派は「成長産業であること」(クレディ・スイス)が理由。
【川田コメント】
上記がウォール街のセルサイド(証券会社)の公式な投資の見解だ。これに併せていくつかの季節要因、特殊要因をご紹介する
①年初来の4か月でS&P500指数がマイナスの年
「バロンズ・ダイジェスト」4月18日号「今年は「5月に売り逃げろ」が最良の戦略か」によれば、株式市場の年初から4カ月のパフォーマンスはマイナスとなりそう。それに関する分析は:
年初来の4か月でS&P500指数がマイナス(1980年以降)の場合
15回あり、その後5月~9月では過去6回、つまり40%の確率で下落。平均のパフォーマンスはマイナス1.5%。
年初から4月末まで上昇の場合
5月から9月にかけて下落となる確率は23%で、パフォーマンスの平均は+8%だ。
②米中間選挙と株価
5月は11月に予定される中間選挙の半年前。4年の大統領任期のうち、この期間は株価が最も軟調だ。中でも民主党の大統領の1期目が最悪。
1926年以降、大統領任期2年目(2022、2018、2014、2010、2006年、2002年、、、)の5月~10月のS&P500指数のリターンの平均は+2.26%と、最もパフォーマンスが低い6カ月間だ。逆に11月から大統領任期3年目となる翌年4月までの6カ月間のトータルリターンの平均は13.9%。
1962年以降の株価急落
中間選挙の年の下落率が大きくなる傾向がある。中間選挙年の下落率の平均が19%であるのに対し、それ以外の年では平均13%だ。しかし、中間選挙年の大幅な下落後、市場は平均で31.6%回復。
「政権交代か再選かにかかわらず、政権に対する失望感は2年目に強まる傾向、投資家は11月の中間選挙の前に、不満をあらわにする」。多くの中間選挙年の大幅な株価急落は「(弱気派の命取りとなるが失敗する)ベアキラー」、より長期的な下落局面には「陰の極」になった。
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