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米国株式投資の真実を伝える [Vol.45]2022年5月2日配信
新企画【人生を豊かにする日経の読み方】
社会人になって40年以上読み続けている日経新聞の中から気になる記事をピックアップしコメントする企画だ。毎週土曜日午前9時〜9時45分にズームへの参加形式で実施している。
参加は無料なのでご興味あるかたはPeatixでお申込みください。
以下は先週土曜日にカバーした記事の表題をいくつか。
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2000万円達成ペースメーカー
出所:金融庁 資産運用シミュレーションを基にエグゼトラスト株式会社作成
※上記数字はあくまでシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではございません。また手数料、税金は考慮しておりません。
読み方:想定利回りと達成年限
3~4%なら30年以上:ラップファンドやバランス型の投信がこれ
5~7%でも25年はかかるよ:米国以外の株式投信だとこうかな
8~10%なら20年ほど:控えめにみたS&P500の上昇率だとこうだ
S&P500のパフォーマンス実績(配当再投資1970-2021)
正しいリスクテイクで早期に2000万円達成しよう
川田のメッセージはすこぶる簡単。2000万円の達成には余裕資金にできるだけ効率的に働いてもらうことだ。そのためには当事者の皆さんがリスク・リワード(見返り)の意味を正しく理解することが大事だ。毎週メルマガを読む前にこのテーブルを眺め、正しい投資姿勢を確認しよう。
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1.マーケット振り返り(4月25日~4月29日)
<主要指数>
・NYダウ -2.5%
・S&P500指数 -3.3%
・ナスダック総合指数 -3.9%
=駆け足バージョン=
先週は業績発表とインフレ懸念を受けて大きな値動きとなりました。市場予想を上回る決算を発表する企業は過去平均を上回るものの、大手ハイテク企業による低調な見通しに加えて金融政策に対する警戒感から週末に急落しました。
=ちょっとだけ詳しく=
週初は中国の景気悪化に対する懸念はあったものの、ツイッターが買収提案を受け入れたことからIT関連成長株を中心に反発しました。
しかしツイッター買収資金のための売却が懸念されたテスラ株が急落すると、市場心理が悪化して下落に転じました。
1-3月期の国内総生産(GDP)成長率は予想外のマイナスとなりましたが、メタの好決算を受けて大幅に上昇しました。
しかし金曜日には個人消費支出のコア価格指数の大幅な上昇を受けてインフレ懸念が強まったほか、アマゾンの予想外の赤字決算や、アップルやインテルから低調な見通しが発表されました。
翌週の連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした警戒感も重なり、IT成長株を中心に大幅な下落となりました。
2.今週のピックアップ記事
資産形成に役立つ情報を、私が得た情報の中から気になるものをセレクトしランキング、極々私的な見解でコメントするコーナーです。
【1】日経新聞 Deep Insight 抗うウクライナ、日本に教訓 4/26
・ロシアによるウクライナ侵略は連日、多くの犠牲者と破壊をもたらしている。このままで自国の安全は大丈夫か。4月15日に刊行された元外交官、岡本行夫氏の自伝「危機の外交」(新潮社)では、そんな苦悩の内幕が生々しく描かれている。
・湾岸戦争(1991年)ではイラクに侵攻されたクウェートを解放するため、米国が多国籍軍を結成し、日本にも強く関与を迫った。結局、130億ドル(約1兆6700億円)の戦費を出すことしかできず、「お金で済ます国」と各国から批判された。
・岡本氏「日本は外国の軍隊に守ってもらいながら、外国人が攻撃されても助けない。防衛費を最低限に抑え、もっぱら自国の繁栄と福祉にお金を使ってきた。こうした「ジャパン・ファースト主義」は続けられない。」
日本の当局者や識者らの見方:大事な教訓は次の3つ。
・第1は、いくら多くの友好国に囲まれていても、有事の際に本当に頼りになるのは同盟国。
・第2「天は自ら助くる者を助く(Heaven helps those who help themselves)」。2010年代半ば、当時の安倍晋三首相は「尖閣諸島が侵攻された時、最もやってはならないのは即座に米国に連絡し、助けを要請することだ。まず、日本が自力で守ろうとしなければ同盟は働かない」
・第3に、軍事力だけでなく、政治リーダーの統率力が戦争の行方を大きく左右する。ウクライナのゼレンスキー大統領は首都キーウにとどまり、国民と軍に直接、結束を呼びかけ続けている。
・今後、課題になるのが、核抑止力のあり方。ロシアの核戦力は米国を威嚇し、ウクライナへの直接介入を阻んでいる。だが、米国の核はロシアを止められず、侵攻を防げなかった。
・同じ構図を、台湾海峡に当てはめたらどうなるだろう。米国は中国との核戦争を恐れて介入できない一方で、中国は米国の核に抑止されず、台湾に侵攻する……。こんな事態も絵空事ではない。
【2】日経新聞 台湾人、有事の米軍派遣「信じない」54% 半年で急増: 日本経済新聞 4/27
・有事の際の米軍派遣の可能性「全く信じていない」が24.8%、「あまり信じていない」が29%。一方「信じている」「まあ信じている」と回答した人はあわせて36.3%。
・中国が実際に台湾侵攻に踏み切る可能性「とてもある」「まあある」と答えた人が38.6%。
・米国が1979年に制定した台湾関係法は、台湾への武器供与などを定める一方、中国への配慮から防衛義務を明記していない。米国は現在に至るまで、有事の際に米国がどういう対応をするかを明確にしない「あいまい戦略」をとってきた。
【川田コメント】
私は【1】の記事に賛成だ。私の住まいの最寄りの駅でも「戦争ハンターイ〜」と叫んでいる集団に時々出くわす。また主流メディアも戦争の悲惨さを我々に繰り返し刷り込む。
しかし“戦争反対!”と思いっきり叫んでそれで敵が攻めてこない?こんな非現実的な世界はない。
今回のウクライナ侵攻と同様の事態が日本に降りかかった時に“戦争反対”と唱えながら殺されるのではたまらない。
安全保障の問題を論ずるとそこかしこで炎上し誰かが火だるまになる。しかし、日ごろから議論を絶やさず常に一定の危機感と緊張感を保つことが抑止力に繋がるのだろう。
ただし、下記の雑誌「Will」のような勇ましい見出しばかりだとちょっと後ずさりしたくなる。それでも現実を直視するなら、こういう見出しにも慣れることもまた必要だろうと思うが、いかがだろう。
【3】日経新聞 ウクライナ戦況、ロシア軍が領土部分奪取など3シナリオ 4/26
【シナリオA ロシア軍優勢、ウクライナ領を部分奪取】
ロシア軍は南部でも攻勢を強め、モルドバ東部の親ロシア派が「沿ドニエストル共和国」を自称する地域につながる回廊を形成しそうだ。その場合、プーチン大統領は「国外のロシア系住民の救済という作戦目的を達成した」として勝利を宣言しそうだ。
【シナリオB ウクライナ軍持ちこたえ、ロシア軍押し戻される】
米欧のウクライナへの軍事支援の中身は質量ともに強まっている。「今後本格化するウクライナ軍の反撃で、ロシアはいずれ本国にまで押し戻されるかもしれない」。
そうした展開になると、ウクライナが平和を回復する一方、ロシアの国内情勢は不安定化していく。「ウクライナ侵攻」から「ロシア不安定化」に事態が転化する。
【シナリオC ロシア軍、劣勢挽回へ大量破壊兵器を使用】
東部や南部での戦闘が膠着状態に陥ったり、ウクライナ軍が明らかに優勢になったりする場合、ロシア軍が化学兵器や核兵器といった大量破壊兵器の使用に踏み切る恐れがある。
「ロシアによるウクライナ領の部分奪取」「ロシア軍撤退とロシアの不安定化」「大量破壊兵器の使用と第3次世界大戦」。3つの可能性の起点となる東部と南部での攻防戦が続く。確かなのは、この先どの展開に向かうにせよ、遅かれ早かれ「ロシアの自滅」が必至になってきたことだ。
【川田コメント】
NHK クローズアップ現代 2022年4月26日で“プーチンの戦争の影で 揺れるロシアの人々”を放送していた。
「ロシアでは、ウクライナへの軍事侵攻に対する経済制裁が、徐々に市民生活に影響を及ぼす中、政権は情報統制を強化。世論調査ではプーチン大統領の支持率が80%を超える結果に。その一方で、ウクライナの現状を前に苦悩するロシア人も。隣国ジョージアでは祖国を追われたジャーナリストたちが、真相を伝えようと活動を始めた。その苦闘は、変化をもたらすのか。ロシアの人々の本音を独自取材し、ロシアの「今」を追う。」
この番組では今回のウクライナ侵攻に対しロシアが一般市民にどのような情報統制を行っているのかを報道している。
国民を情報統制したり世論誘導するのは政治の世界では当たり前だ。ただし、自らの意思が強固で情報を咀嚼する力があれば誤った情報に惑わされない、誰しもそう思っているのではないか。
しかし現実はそんな生易しいものではないのだろう。国家の方針に異を唱えることは自分の生命と引き換えだ。番組で取り上げられていたロシアの一般大衆の多くはそのことを身をもって知っている。だから政府を疑わぬように自らを暗示にかける人も多いのではなかろうか。
危機を察知した時の生存本能は我々日本人にも当然備わっている。自らを愚民化し思考停止する事態に社会が追い込まれないようにするのも、我々の責務だと思う。
【4】日経新聞 家計の国外逃避論じわり 「悪い円安」があおる日本売り 4/27
・4月に入り、為替市場関係者から「家計のキャピタルフライト(資本逃避)」を指摘するリポートが相次いで出されている。
・「本当に恐ろしい円安リスクは家計部門の円売り」。みずほ銀行の唐鎌大輔氏はこう題したリポートで「日本人は『空気』で突然動き出す」として、個人の円売りが一気に強まる可能性を指摘する。
・市場では「貯蓄から投資へ」は「オオカミ少年」のごとく、すべて掛け声倒れに終わり、円預金はずっと膨らみ続けている。そんな「空気」が変わるきっかけになり得るのが、身近な商品の値上げラッシュを招いた「悪い円安」の到来。
・日銀の資金循環統計によると、2021年末時点で初めて2000兆円を超えた家計の金融資産のうち、円の現預金は約半分を占める。唐鎌氏は「その10%が外貨資産に移るだけでも、100兆円規模の円売りを招く」と話す。2021年度の日本の貿易赤字である約5兆3700億円をはるかに上回る金額だ。
・実際、若い世代を中心に外貨投資への関心は急速に高まっており、新型コロナウイルスショック後に円安が進むのと並行するように、投資額も急速に膨らんでいる。
【ご参考】
個人金融資産の95%以上が円資産、50%以上が現預金(図表1)。
【5】日経 インデックスファンド、残高20兆円迫る つみたてNISA追い風 4/28 夕刊
・ETF(上場投資信託)を除くインデックスファンドの純資産残高は3月末時点で合計20兆円に迫り、2年前から倍増。運用資産規模のランキングをみると、首位は米株価指数に連動する「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」。2018年の設定以降、純資産残高は1兆円を超すまで成長。
・上位には日本株指数連動型が見当たらない。首位を含め大半を積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)対象か、確定拠出年金(DC)専用が占めた。資産形成を目的に税制優遇制度を有効活用し、リスクを取りながらも平均を低コストで狙う手法だ。コツコツと積み立て投資する一般個人の広がりを映している。
【川田コメント】
S&P500指数に連動する投信やETFが増えていることは、日本人の資産形成が正しい方向に進んでいることの証左だ。ただしその金額の規模はまだまだ桁違いに小さい。S&P500指数や米国の主要指数に投資するETFや投信が数十兆円単位で積みあがることを願っている。
外国の株式にそんな多額の資産を投資して大丈夫なの?そう思っている人もいるかもしれない。しかし日本の安全保障は米国に依存している。またマイクロソフトやアップル、アマゾン等のプラットフォーマーのサービス無しにビジネスや社会生活も成り立たない。
現実を直視するなら、米国株式に投資することは日本人の資産を守ることと同義と思っていい。つまり米国株式に投資することは国益にも適うことだ。
3.川田の気になる銘柄
川田の保有銘柄を始め、米国株の情報に触れている中で、気になった銘柄を紹介するコーナーです。
今週の銘柄
フェデックス<ティッカー:FDX> FedEx Corporation
概要
世界最大規模の運送会社であり、航空貨物便を主体として迅速かつ信頼性の高い輸送サービスを全米と世界220以上の国と地域で提供しています。航空運送に加えて宅配事業や陸運事業のほか、「キンコーズ」ブランドによるオフィス向けサービスなども手掛けています。
同社の魅力
長期的な需要の成長と世界的なネットワーク
インターネットによる販売がますます便利になって使われている現在、貨物運輸に対する需要は長期的に安定した成長が見込まれます。陸運・空運と宅配事業を行っている物流会社は世界全体で見ても少なく、寡占状態の中で、人件費や燃料費の上昇を運賃の値上げでカバーできる状態にあります。
2016年にオランダの大手運送会社であるTNTエクスプレスを44億ユーロで買収しました。これにより、欧州、中東、アフリカ、アジア太平洋におけるネットワークが拡大しました。2022年度中にオペレーション面の統合はほぼ終了して、今後は収益への一層の貢献が見込まれます。
設備投資の一巡感と株主還元期待
設備投資の収入に対する比率で見ると、TNTの買収や宅配事業整備のための設備投資に一巡感が出てきたため、低下傾向にあります。設備投資に向けていた資金による株主還元の拡充が期待されます。
(図1:FDXの設備投資額の比率=対収入=)
フェデックスは増配を続けていましたが、コロナ禍による不透明感や北米での宅配事業の整備のために2020年度と2021年度(5月決算)は増配を見送りましたが、2022年5月期ではすでに増配を行っています(年間3.00ドル)。
(図2:FDXの配当実績=会計年度ベース=)
割安感による安心感と上値余地
現在のフェデックスの株価は、予想株価収益率(PER)が9倍前後で市場全体や同業他社と比較しても割安な水準にあり、下値余地は限定的だと思われます。一方、利益率の上昇もしくは株主還元の充実が確認された場合の上値余地は大きいと思われるため、現在の不透明な環境下で再び投資家の注目が集まる可能性があります。
リスク
FDXの会計年度は5月末ですが、2022年5月期の決算発表後の6月末に投資家向け説明会を予定しています。FDXは創業者のスミス氏が長らく最高経営責任者(CEO)を務めていましたが、新CEOのスブラマニアム氏による新たな中長期戦略の発表が期待されています。しかし、スブラマニアム氏の戦略に新鮮味がないと判断されると、上昇のきっかけが失われてしまう可能性があります。
FDXの基本データ(出所:会社データ、Yahoo! Finance)
(4月29日現在)
株価 198.74ドル
時価総額 515.1億ドル
総収入 916億ドル
予想PER 8.8倍
実績利回り 1.5%
本社:テネシー州 メンフィス
上場:1978年4月
(図1、図2はFDXの資料より)
株価チャート
チャートはTradingView.comによる
(本コーナーは一般的な情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません)
4.投資のヒント
「投資手法」や「銘柄紹介」だけでなく、「気になった指標や発言」や「社会や政治の動き」を書くコーナーです。
今回は、弊社のYouTubeチャンネルの「アメリカ株式40年投資」シリーズでおなじみの大倉真さんの寄稿です。
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