見出し画像

1日で10%下げた指数 【投資のヒント】

■未曽有の下落相場

昨日のニューヨーク市場では、開始早々今週2度目となるサーキットブレーカーが発動するなど終始売りが先行し、ダウ平均株価は2352ドルと過去最大の下げ幅を記録して終わった。主要指数の下落率は軒並み10%近くに達し、ブラックマンデー(1987年10月19日)以来の大きさだ。ブラックマンデーの時は、S&P500指数はアジア取引時間でNY引け値よりもさらに4%程度下落した。

さて、S&P500指数は史上最高値からの下落率が27%にもなった。1年でもそれなりの変動率だが、それが見ているわずかな間に進行している。リーマンショックの8月からの相場がそうだったので、当時のメモを読み返している。あの時実際に相場が底打ちするのは、2009年3月9日で、それまでに高値から56%下落した。
なお、本日のダウ先物は一時2000ドル近く下落していたが、その後1000ドル程度のマイナスまで値を戻している(3月13日15時)。

■2008年10月までの12カ月で株価は40%下落

NYダウが40%以上下落したことは過去に10回あるが、そのうちの9回は1900年から1930年の間に起きている。50%以上の下落となると1929年から1932年にかけての1回だけで、その時の下落率は89%だ。この時の景気悪化は誰もが知っている「大恐慌」で、1929年8月から1933年3月まで44カ月続いた。当時は預金保険というような安全網はなかったし、米連邦準備制度理事会(FRB)が資金供給を実施することもなかった。

2008年10月までの12カ月間の株価下落で株価は割安になった。S&P500指数採用銘柄の株価は、2008年の株価収益率(PER)に対し17.1倍、翌2009年予想PERに対しては11.6倍まで下落した。それでも過去の主要な景気後退期におけるPERに比べると必ずしも高くはない。1974年、80年、82年の景気後退期における実績PERは6.8~7.2倍。一方、1974年、1990年、2001年の景気後退期にはPERは12.9~23.5倍で推移した。

■さよならトランプ大統領相場

トランプ大統領は就任以降、大幅な株高を背景に多少の綻(ほころ)びを隠して3年間過ごしてきた。2016年11月に「予想外」の勝利を収めてからS&P500指数は6割近く上昇していた。しかし、今回のコロナショックにより、現時点での上昇率は2割を切り、貯金を使い果たそうとしている(※)。再選に向けて、何より重視すべき経済の好調維持に失敗しかけている状況で、再選には黄色信号が灯っていると言わざるを得ないだろう(日本の安倍政権も同様の状況だが)。ちなみに、オバマ政権の1期目の同時期に株価上昇の貯金は7割近くあった。
※全米株市式場の時価総額の98%をカバーするラッセル3000指数構成銘柄でみると、就任後の増額分11兆ドル(約1200兆円)が現時点で既に消滅している。

トランプ大統領は、一連の株価下落を意にもかけない様子で、自らの政策を自画自賛しているが、状況は深刻だ。「今、どうすればよいのか」という質問を多くいただくが、こういう時期は何もしないで嵐が去るのを待つしかないと考えている。私が「何もしなくていい」と考えているのは、米国株式市場と付き合ってきた過去の経験に基づいている。

下表は、双日総合研究所の安田佐和子さんが作成されたものだが、過去に20%を超える下落をして弱気相場入りしたケースが少なくとも9回ある。平均下落率は44.7%だが、突出する世界恐慌を除くと39.5%だ。弱気相場入りする前の直近高値を回復するのに要する期間は、平均55.6カ月、世界恐慌を除くと29.1カ月だ。現在からさらに20%程度の下落はあり得るのかもしれない。その場合、ダウ平均はあと3500ドルほど下げる計算になる。そして回復まで30カ月・・・この期間は大統領選の結果で変わってくると思っている。今回のコロナショックは米国市場に定期的(約10年に一度)に下される鉄槌なのだろうか。しかし、鉄槌で地が固まって一層成長してきたのが米国株式市場だ。私は、その強さを信じている。

画像1

(作成:My Big Apple NY)

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?