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プラスミドゲート事件について #2
前回の続きです。
前回の記事の最後に紹介したTwitterのアンケート結果から、DNAのことをよく知らずに『プラスミドゲート事件』について語る人が意外に多いということが分かりました。
私はよくこういう人たちのことを「中国語を学んで英語を話そうとする人」に例えるのですが、TwitterやYouTubeの動画で『中国語』を学んだところで、英語が話せるようになる訳ではありません。中国語を話す人と英語を話す人の会話が成立しないのは当然でしょう。
絶句…
— 新田 剛 Takeshi Nitta (@takenitta) April 22, 2023
正解が3割切るとは…
そうなん?
そう思ってるのか7割の皆さんは…
ここ最近感じた話の噛み合わなさはそういうこと…? https://t.co/6dIwiQORva
ここ最近感じた話の噛み合わなさはそういうこと…?
前回の記事では、mRNAワクチンに含まれているとされる『10 μgのDNA』を視覚的に表すことで、現役研究者たちの感じている違和感の根拠を解説してみました。

今回の記事から、だんだんと専門的な話になっていきますが、できる限り分かりやすく説明するよう心掛けていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
では、mRNAワクチンにプラスミドが入っているかどうか。
それを知るには、大腸菌の『形質転換(トランスフォーメーション)』を行うのが一番手っ取り早いでしょう。
形質転換とは、大腸菌に、本来存在しない外来遺伝子を導入することによって大腸菌の「形質」を「変える」ことを意味します。
Kevin McKernan氏の解析結果から、mRNAワクチンに混入しているとされるプラスミドには、スパイクタンパク質をコードする遺伝子の他、『カナマイシン』という抗生物質の一種に対する耐性遺伝子が含まれていることが分かりました。

<<ここで注意事項!!>>
以後、Kevin McKernan氏の解析結果が「正しい」とする前提で話を進めますが、解析に用いられたmRNAワクチンは、「匿名で送られてきたもの」で「出所が不明である」ということを、必ず念頭に置いてください。Twitterなどでは、この解析結果を「絶対的に正しい」とする人が多過ぎます。反ワクチンの中には、匿名で送られてきたからこそ信憑性が高いと考える人もいるようです。笑
A limitation of this study is the unknown provenance of the vaccine vials under study. These vials were sent to us anonymously in the mail without cold packs.
訳)今回の研究における限界として、研究対象となったmRNAワクチンのバイアルの出所が不明であることが挙げられます。これらのバイアルは、保冷剤なしで匿名で郵便で送られてきたものです。
https://osf.io/b9t7m/
では続きを。カナマイシンは、細菌性のリボソームに結合し、タンパク質合成を阻害することにより、抗菌作用を示します。したがって、普通の大腸菌をカナマイシンを含む培地で培養すると死んでしまいますが、カナマイシン耐性遺伝子を持っていれば、生き残ることができます。
そして、カナマイシン耐性遺伝子を持つプラスミドに目的のタンパク質(スパイクタンパク質)をコードする遺伝子を挿入しておけば、カナマイシン耐性=目的のタンパク質をコードする遺伝子も持っている、ということが言える訳です。(カナマイシンなどに対する薬剤耐性遺伝子は、遺伝子組換えの『目印』となるため、マーカー遺伝子とも呼ばれます。もちろん、カナマイシン耐性遺伝子はあくまで『目印』なので、その後の追加実験で、スパイクタンパク質の遺伝子を含むことを確認しなければいけません。)
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さて。カナマイシン耐性遺伝子の基礎知識を理解したところで、Twitterで話題になっている画像を見てみましょう。
#mRNA #ワクチン #モデルナ #プラスミド #DNA pic.twitter.com/JnmgJrIVCP
— Discord Disclosure (@disclodure) April 25, 2023
画像は、名前を消してあるが、新田さんがDiscordに貼った、モデルナmRNAを使用した追試画像なのは間違いない。その情報は数十人が見られる状況だったので、10人以上は見ているのでは無いかと思う。この画像から、モデルナmRNAには少なくともカナマイシン耐性遺伝情報が残されたDNA断片が混入していると… https://t.co/n3HecrrI0z pic.twitter.com/8C9RUi9Z4W
— 藤川賢治 (FUJIKAWA Kenji) @ 医療統計情報通信研究所 (@hudikaha) April 27, 2023
ツイートの情報によると、実験では3種類のプラスミドが使用されています。
① ポジティブ・コントロール(ポジコン)となる、カナマイシン耐性遺伝子を持つ「pEGFP-LMP1TM」(先頭の「p」はプラスミド(Plasmid)の名前につける符号。)
② ネガティブ・コントロール(ネガコン)となる、カナマイシン耐性遺伝子を持たない「pBS」(pBSは、おそらくpBluescriptの略。カナマイシン耐性遺伝子ではなく、アンピシリンに対する耐性遺伝子を持つ。)
③ mRNAワクチンに含まれるとされるカナマイシン耐性遺伝子を持つプラスミド
これらをそれぞれ大腸菌に導入し、カナマイシンを含むプレートで一晩培養した結果を示した画像であると思われます。
プレート上の白色のものは増殖した大腸菌です。
カナマイシン耐性遺伝子を持つpEGFP-LMP1TMを導入した大腸菌は、カナマイシンを含むプレート上でもよく増殖していることが分かります(左側)。一方で、カナマイシン耐性遺伝子を持たないpBSを導入した大腸菌は増殖しない、、はずですが、少し増殖しているように見えます(右側)。プレートに含まれるカナマイシンの濃度が適切でない(低い)のかもしれません。(一回一回プレートを作るのが面倒だからと、プレートを作り置きしているとこうなります。)
また、このウ◯コ(笑)みたいにべっとりとした大腸菌の塊は、あまり適切な状態であるとは言えません。
大腸菌が塊状になってしまうと、塊の上の方で増殖している大腸菌にはプレートに含まれるカナマイシンが届きません。ネガコン(右側)でカナマイシン耐性遺伝子を持たない大腸菌が増殖してしまっている原因の一つと考えられるでしょう。同じことが中央のサンプルにも言えます。
実験では、ネガコンが、きちんと「ネガティブ(=大腸菌が増えない)」であることを確認する必要があることは言うまでもありません。中央のmRNAワクチンに含まれるとされるプラスミドを導入した大腸菌が、カナマイシン耐性遺伝子を持っているのか・いないのか、正しい判断できません。
一応、中央の白色の矢印で示したものが、カナマイシン耐性遺伝子を持っている大腸菌とのことですが、最初の大腸菌の量が多ければ、こうなってしまう可能性は十分に考えられます。
では、どうしたら正しい判断ができるのでしょうか?
ここで出てくるのが、今回の記事のキーワード、『シングルコロニーアイソレーション(Single colony isolation)』です。
シングルコロニーアイソレーションでは、まずプレートに大腸菌を適量付け、それを『白金耳』と呼ばれる棒などを使って、ジグザグに伸ばしていきます(動画参照)。
大腸菌を伸ばした後、一晩培養すると、プレートは下のようになります。

始点となった右上の区画は、大腸菌の量が多いため、Twitterの画像と同じように、べっとりとした塊になってしまっています。おそらくカナマイシン耐性遺伝子を持たない大腸菌も含まれているでしょう。
そこから、右下→ 左下へと順番に伸ばしていくことで、大腸菌の量は少なくなり、きちんとカナマイシンが効いて、カナマイシン耐性遺伝子を持っている大腸菌だけが増えるようになります。これが大事!

実験の基本です!
ここで改めてTwitterの画像の実験の主な問題点を整理すれば、
① カナマイシンの濃度が低いプレートを使っている可能性がある。
② シングルコロニーアイソレーションをしていない。
の2点になるかと思います。
私が実験を指導する立場ならば、「やり直し!!」と言いますね。笑
余談ですが、ポジコンとして使用されたプラスミド『pEGFP-LMP1TM』について。
LMP1は、おそらくEpstein-Barrウイルスの持つ「Latent membrane protein 1」のことを、TMは、その「Transmembrane domain」を意味していると思われます。EGFPは(改良型の)緑色蛍光タンパク質のことで、これをLMP1TMに結合させることで、この融合タンパク質の局在(=細胞内での場所)を蛍光シグナルによって検出できるようにしているのでしょう。

新田剛先生は、過去にこのLMP1に関する以下の論文を発表しています。ただし、この論文で「pEGFP-LMP1TM」は使われていません。しかしながら、「pEGFP-N1」と「LMP1発現プラスミド」は使われています。これら2つのプラスミドから「pEGFP-LMP1TM」を作ることができます。
使われたプラスミドの情報から、Twitterの画像の実験を行なったのは、新田先生ではないかと思ったのですが、どうでしょうか?(本質的な話ではないのでこの辺で。)
この記事を書いている途中に、新田先生が以下のツイートを投稿されていました。
貴方は会の関係者でしょうか?
— 新田 剛 Takeshi Nitta (@takenitta) April 30, 2023
非公開の情報をSNSで拡散させることには著作権法上の問題があると思います。ご注意ください。
そのスレッドには続きがあります。
私は関係者の承諾を得ましたので、続きの一部を公開しますね。 pic.twitter.com/CEJr9pDtJJ
結論としては、「mRNAワクチンにプラスミドは混入していなかった」ということになるかと思います。
以上、
— 新田 剛 Takeshi Nitta (@takenitta) April 30, 2023
Discord Disclosure 氏に代わり、
Discord Truth Disclosure がお伝えしました。
有志による非公式の活動ですが、関係者の承諾を得て一部を公開しました。
切り取り画像が無断掲載され、それを根拠としたデマの拡散を防ぐためです。
こんな予備実験結果ではなく、いずれ正式な結果を公開します
こんな予備実験結果ではなく、いずれ正式な結果を公開します
新田先生の続報、期待しています。(書いていた記事は、大幅に省略しました。落ち着いて結果を待つというのも大事なことです。きちんとしたデータを基に、議論が深まることを期待しています。)
#3に続く。(次回は、『DNase』についての記事を予定しています。)
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※ この記事は個人の見解であり、所属機関を代表するものではありません。
※ この記事に特定の個人や団体を貶める意図はありません。
※ 文責は、全て翡翠個人にあります。
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追記)上で紹介した、pEGFP-N1というプラスミドには、ヒトなどの哺乳類の細胞で薬剤耐性遺伝子を発現させるために、『SV40プロモーター』が含まれています(左下)。

このように、他にも『pcDNA3』など、実験室でよく使われる・ごく一般的なプラスミドにも『SV40プロモーター』の配列が含まれます。

mRNAワクチンのプラスミドにだけSV40プロモーターという、反ワクチンの主張するところの『ヤバい配列』が含まれていると思っている人がいるとしたら、それは大きな間違いです。「この配列を加えることによってワクチンで癌を作り出そうとしている!」、「DSの人口削減計画の一環だ!」ではなく、プラスミドが入っている=まぁSV40プロモーターも入っているだろう、程度に考えるべきものだと思います。
Kevin McKernan氏に匿名で送られてきたmRNAワクチンについて、当初、彼の解析では「多量」の・あり得ない量のプラスミドが含まれているという結果でした。

もし、pcDNA3のようなプラスミドが、匿名の誰かの手によって混入されていたとしたら?
この結果を見れば、そういう可能性も考えるべきだと思います。
以下のツイートも紹介しておきたいと思います。
時系列をおさらい。
— 御茶ノ水博打🚲 (@koronanoukyuus1) April 23, 2023
3/9 Kevin氏が約3割の発現ベクターが含まれてると報告。
3/13 molbio氏がKevin砲を紹介。
molbio氏のツイッターには「かなりの確率でスパイク遺伝子がゲノムに取り込まれます。」と書かれており、「スパイク人間」を連想。衝撃的な内容に焚きつけられた読者が一気に拡散
2/
この新田先生の質問内容を皆さんは覚えているでしょうか?具体的にはKevin氏の実験データに不備がある可能性がかなり高いこと。それ以外に情報がありますか?誤情報だった場合の信用失墜の懸念について、です。
— 御茶ノ水博打🚲 (@koronanoukyuus1) April 23, 2023
さて、この質問に対する荒川先生の回答はどうだったでしょうか?
10/
まったく質問内容には触れず、DNA混入が周知の事実(←科学者同士のやりとりの中での周知の事実です)という一文を取り上げ、あたかも世間一般に周知されていると新田先生自身が言ったかのように言い換え、「混入ありき」とした新田先生に対し、
— 御茶ノ水博打🚲 (@koronanoukyuus1) April 23, 2023
11/
「問題の本質をすり替えようとしているようにすら見えてしまいます。」と批判ともとれる発言をしました。これがやりたくてメールへの返信ではなく、公開の場に引っ張り出したのでしょうか?
— 御茶ノ水博打🚲 (@koronanoukyuus1) April 23, 2023
12/12
不思議なのは、kevin砲の不正確性を書くと、「少なくとも可能性はあるのだから、より慎重に議論することは大切でリスクの可能性を周知することはやめるべきではない」という人が反論してくるが、その中の誰もKevinの実験方法を精査しようともしないし、考察の妥当性もし審議しない。ナニコレ?
— 御茶ノ水博打🚲 (@koronanoukyuus1) April 23, 2023
kevin砲の不正確性を書くと、「少なくとも可能性はあるのだから、より慎重に議論することは大切でリスクの可能性を周知することはやめるべきではない」という人が反論してくるが、その中の誰もKevinの実験方法を精査しようともしないし、考察の妥当性もし審議しない。ナニコレ?
仮にmRNAワクチンにプラスミドが入っていなかったとしても、Kevin McKernan氏の解析結果は、「問題提起として意義がある」という考え方は、私には理解できません。
以前、反ワクチンはよく、私のことを「木を見て森を見ず」だと言いました。細かいことにこだわり過ぎていると。しかしながら、木を見なければ(木の種類を調べなければ)、その森が針葉樹林か、広葉樹林か分かりません。全体的に緑だから針葉樹林だと思っていたら、その森が秋には突然赤くなって、驚き、慌てふためくことになるでしょう。
今の反ワクチン界隈の様子を見ていると、まさにその通りになっているかと思います。可哀想に、内部分裂の真っ最中です。
宜しくお願いします
— issey🍉 (@T8Cy4yf9YhKPytv) May 3, 2023
今必要なのは、団結で有り
内部分裂では有りません https://t.co/zpQ9wFHtkC
無理やり団結しようとしても、また同じことを繰り返すでしょうね。
もうたくさんだ!
— 藤沢明徳_北海道有志医師の会代表 (@Papa_Cocoa_Milk) May 4, 2023
新型コロナワクチンへのDNA断片混入疑惑問題を巡って、Twitter上では新田剛先生への人格攻撃、誹謗中傷が過酷さを増している。私はこのような動きをまったく快く感じない。また公にされるべきではない情報まで切り取りで持ち出されるなど、相手を攻撃するためには手段を選ばない→
という状況には強い嫌悪感を感じる。私と同じ想いを持つ方が沢山いるのではないだろうか。そのような状況で現実に離れていった仲間達がいる。結果として運動破壊にしかなっていないのではないか。
— 藤沢明徳_北海道有志医師の会代表 (@Papa_Cocoa_Milk) May 4, 2023
2000人以上の死亡報告と膨大な数の後遺症患者の存在。→
相手を攻撃するためには手段を選ばない→
という状況には強い嫌悪感を感じる。私と同じ想いを持つ方が沢山いるのではないだろうか。
以上。