カオス化する?学会会場
私たち研究者が参加する学会、特に生命科学関連分野の学会が、今後どうなるのか、非常に心配です。
以下は、先週、横浜で開催された『第96回日本整形外科学会学術総会』の様子と、それに関連したツイートです。
学会ホームページのプログラムを見ると、尾身茂先生の講演は、13日に行われたようです。
「新型コロナウイルス感染症 これまでとこれから」という漠然としたタイトルから、その内容までは分かりませんが、ツイートの動画で、質問者が「先生、これなんで超過死亡には触れられないんでしょうか?一言も」と言っていますので、内容は『超過死亡』とは関係のない、何か別の話題だったのでしょう。
1時間で話せることは限られています。整形外科学会ですから、「自粛による活動制限が、高齢者や子供の骨や筋肉に与えた影響について」とか、そんな話があったのかもしれません。とても大事なことだと思います。
基本的に、学会では、発表内容に関係のない質問はすべきではありません。それは、大人としてのマナーです。『質問してはいけない』というルールはありませんが、スポーツ選手のヒーローインタビューで、「好きな動物は何ですか?」や「彼氏/彼女はいますか?」と聞くのと同じような空気の読めなさを感じます。(『KY』は、死語でしょうか?)
そういった状況を「場の空気が凍る」と表現するか、「白ける」と表現するかは人それぞれでしょう。
例えば、ウイルス学会の口頭発表で、インフルエンザウイルス研究者の、「インフルエンザウイルスの『X』というタンパク質が、ヒトの『Y』というタンパク質と結合し、免疫を抑制することが分かりました」という、まぁよくありがちな研究発表があったとします。
それに対して、いきなり、「『人工ウイルス』のパンデミックに繋がる、(インフルエンザウイルス研究の大家である)河岡義裕先生らの行う危険な機能獲得研究に賛成か?」という質問が来るようになるかもしれません。
まさに、今後、そういうことをしていくという宣言です。
ちなみに、『機能獲得研究(Gain-of-function research)』とは、一般的な分子生物学分野では、『遺伝子Xの機能を調べる際に、その遺伝子を改変することで、遺伝子の機能を増強させる実験』を行うことを指しますが、ウイルス学における機能獲得研究は、『遺伝子を改変することで、種を飛び越えて感染するウイルスを作出する実験』を行うことを指します。
この『種を飛び越える』という文言が大事なポイントで、SARSコロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝子を改変することで、ヒトへの感染力が多少増強されたとしても、他の生物種に感染させるようなことをしなければ、ウイルス学的にはセーフ、問題なしなのです。
現在、声高に機能獲得研究に反対している人たちは、ウイルスを他の生物種に感染させる『ウイルス学の機能獲得研究』を止めさせたいのか、遺伝子を改変する『機能獲得研究全般』を止めさせたいのか、はっきりさせましょう。
後者に反対の場合、それは科学の否定であり、全ての分子生物学者に対して敵意を持った、反科学主義的な思想が背景にあることが推測できます。(老婆心ながら、この2つを曖昧にしたままでいると、今、反ワクチン界隈でmRNAワクチンにプラスミドが入っている・入っていないで分断が起きているように、必ずどこかで歪みが出てきますよ。)
話を戻しますと、学会は、単に自分の研究を発表する場ではありません。
ラボの(内輪の)ミーティングをしているだけでは気付くことができなかったことが、質問者の新しい視点によって見出され、研究が大きく発展する良い機会になります。また、『良い質問(Good question)』は、聴衆の研究に対する理解を深めます。
それを関係のない質問で邪魔されるのは、正直我慢なりません。迷惑です!!
特に、今回の件では、研究者以外への『パフォーマンス』的な要素が見て取れました。基本的に、学会会場内での撮影・録音・録画は禁止です。
座長のいる発表であれば、「発表内容に関係のない質問は控えてください」というような一言があると思いますが、それでも引き下がらずに(あるいは、引き下がれずに)、「逃げるのか?」、「質問に答えろ!」などと言ってくるかもしれません。隠れてコソコソと録音・録画しているかもしれません。
そんな様子が、容易に想像できます。『活動家』か何かでしょうか?
そんな『活動家』となった彼らは、学会会場でどんな騒動を引き起こすのでしょうか?
今後、会場警備との綿密な連携、対応マニュアルの作成などが必要になるかもしれません。
もちろん、意見の異なる人を排除することに加担するつもりはありません。しかしながら、学会の秩序は保たれるべきだと思います。
以上。
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※ この記事は個人の見解であり、所属機関を代表するものではありません。
※ この記事に特定の個人や団体を貶める意図はありません。
※ 文責は、全て翡翠個人にあります。
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