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カオス化する?学会会場

私たち研究者が参加する学会、特に生命科学関連分野の学会が、今後どうなるのか、非常に心配です。

以下は、先週、横浜で開催された『第96回日本整形外科学会学術総会』の様子と、それに関連したツイートです。

Hideki Kakeya, Dr.Eng. @hkakeya
宮澤先生のスペースでも触れたが、今後は学会が主戦場になると思う。素人は騙せても専門家は騙せない。新型コロナについて間違ったことを言ってきた学者を学会で徹底追及していくフェーズに突入した私も分子生物学会、ウイルス学会、リスク学会等でその種の活動をする予定。宜しくお願いします。
午後8:05 · 2023年5月13日

学会ホームページのプログラムを見ると、尾身茂先生の講演は、13日に行われたようです。

様々な分野の専門家による講演があったようです。(画像:https://joa2023.jp/program/kouen_0428.pdf)

「新型コロナウイルス感染症 これまでとこれから」という漠然としたタイトルから、その内容までは分かりませんが、ツイートの動画で、質問者が「先生、これなんで超過死亡には触れられないんでしょうか?一言も」と言っていますので、内容は『超過死亡』とは関係のない、何か別の話題だったのでしょう。

1時間で話せることは限られています。整形外科学会ですから、「自粛による活動制限が、高齢者や子供の骨や筋肉に与えた影響について」とか、そんな話があったのかもしれません。とても大事なことだと思います。

基本的に、学会では、発表内容に関係のない質問はすべきではありません。それは、大人としてのマナーです。『質問してはいけない』というルールはありませんが、スポーツ選手のヒーローインタビューで、「好きな動物は何ですか?」や「彼氏/彼女はいますか?」と聞くのと同じような空気の読めなさを感じます。(『KY』は、死語でしょうか?)
そういった状況を「場の空気が凍る」と表現するか、「白ける」と表現するかは人それぞれでしょう。

会場は凍りついていたそうです…

例えば、ウイルス学会の口頭発表で、インフルエンザウイルス研究者の、「インフルエンザウイルスの『X』というタンパク質が、ヒトの『Y』というタンパク質と結合し、免疫を抑制することが分かりました」という、まぁよくありがちな研究発表があったとします。
それに対して、いきなり、「『人工ウイルス』のパンデミックに繋がる、(インフルエンザウイルス研究の大家である)河岡義裕先生らの行う危険な機能獲得研究に賛成か?」という質問が来るようになるかもしれません。
まさに、今後、そういうことをしていくという宣言です。

新型コロナについて間違ったことを言ってきた学者を学会で徹底追及していくフェーズに突入した。私も分子生物学会、ウイルス学会、リスク学会等でその種の活動をする予定。

https://twitter.com/hkakeya/status/1657341318279094278

ウィスコンシン大学マディソン校(米国)と東京大学医科学研究所に所属するウイルス学者、河岡義裕は、助成金交付の一時禁止によって影響を受けた研究者の1人であり、今回の新しい枠組みは「重要な成果」だと話す。河岡は、鳥インフルエンザウイルスのどのような分子変化が鳥からヒトへの感染を起こしやすくするかを研究しており、現在は、生きたウイルスを使った実験に対する助成金交付の申請を計画中である。
一方で、ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院(米国マサチューセッツ州ボストン)の疫学者Marc Lipsitchは、機能獲得研究は「パンデミックに対する備えの向上に、これまでほとんど役立っていません。むしろ、偶発的にパンデミックを作り出してしまう恐れすらありました」と話す。

https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v15/n4/致死的ウイルスの改変実験を解禁/91562

ちなみに、『機能獲得研究(Gain-of-function research)』とは、一般的な分子生物学分野では、『遺伝子Xの機能を調べる際に、その遺伝子を改変することで、遺伝子の機能を増強させる実験』を行うことを指しますが、ウイルス学における機能獲得研究は、『遺伝子を改変することで、種を飛び越えて感染するウイルスを作出する実験』を行うことを指します。

(画像:https://www.cas.go.jp/jp/influenza/kako_11.html)

この『種を飛び越える』という文言が大事なポイントで、SARSコロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝子を改変することで、ヒトへの感染力が多少増強されたとしても、他の生物種に感染させるようなことをしなければ、ウイルス学的にはセーフ、問題なしなのです。
現在、声高に機能獲得研究に反対している人たちは、ウイルスを他の生物種に感染させる『ウイルス学の機能獲得研究』を止めさせたいのか、遺伝子を改変する『機能獲得研究全般』を止めさせたいのか、はっきりさせましょう
後者に反対の場合、それは科学の否定であり、全ての分子生物学者に対して敵意を持った、反科学主義的な思想が背景にあることが推測できます。(老婆心ながら、この2つを曖昧にしたままでいると、今、反ワクチン界隈でmRNAワクチンにプラスミドが入っている・入っていないで分断が起きているように、必ずどこかで歪みが出てきますよ。)

話を戻しますと、学会は、単に自分の研究を発表する場ではありません
ラボの(内輪の)ミーティングをしているだけでは気付くことができなかったことが、質問者の新しい視点によって見出され、研究が大きく発展する良い機会になります。また、『良い質問(Good question)』は、聴衆の研究に対する理解を深めます。
それを関係のない質問で邪魔されるのは、正直我慢なりません。迷惑です!!

特に、今回の件では、研究者以外への『パフォーマンス』的な要素が見て取れました。基本的に、学会会場内での撮影・録音・録画は禁止です。

会場凍らせて来ましょうか?

こんだけネット民意を得ちゃもう引っ込みつかんね!!

座長のいる発表であれば、「発表内容に関係のない質問は控えてください」というような一言があると思いますが、それでも引き下がらずに(あるいは、引き下がれずに)、「逃げるのか?」、「質問に答えろ!」などと言ってくるかもしれません。隠れてコソコソと録音・録画しているかもしれません。
そんな様子が、容易に想像できます。『活動家』か何かでしょうか?

記者会見の終了直後に移動しようとする相手に対し、後ろから非難じみた質問を投げかけ、いかにも相手が都合悪い話を拒否して立ち去ろうとしている構図を作るのは、日本独自の文化かもしれない。この方式は、首相官邸の記者会見でもよく見られる光景である。

そんな『活動家』となった彼らは、学会会場でどんな騒動を引き起こすのでしょうか?
今後、会場警備との綿密な連携、対応マニュアルの作成などが必要になるかもしれません。

もちろん、意見の異なる人を排除することに加担するつもりはありません。しかしながら、学会の秩序は保たれるべきだと思います。

以上。

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※ この記事は個人の見解であり、所属機関を代表するものではありません。
※ この記事に特定の個人や団体を貶める意図はありません。
※ 文責は、全て翡翠個人にあります。
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