
その場しのぎの嘘は、いつかバレる。
情報提供いただいた内容についてです。黙って見ていられませんでした。
N変異が30蓄積している領域にS変異がない事例はありますか?あれば教えてください。さらにその変異の殆どが過去に研究されたものであること、かつBsaIを使うとスパイク蛋白部位だけ切り出せることはどう評価しますか?
— Hideki Kakeya, Dr.Eng. (@hkakeya) September 8, 2022
(下記リンク参照)https://t.co/Mr3T7qlUTNhttps://t.co/0nk7fvdzFE https://t.co/g1jHF6fNK5
HIVのenv geneの変異と、gag geneの変異を比べてみてください。とても人間では考えつかないような変異が、驚くほど濃厚に集積してることが、よくわかると思いますよ。データベースはLos AlamosのHIVsequence コンソーシアムが良いかと。論文は大杉ですので省略。
— Emi E. Nakayama (@EmiNakayama7) September 8, 2022
特定の制限酵素である領域が切り出せることは、ウイルス遺伝子上で何ら不思議はありません。私もHIVとSIVのキメラウイルスを作っていた時は制限酵素を使っていました。
— Emi E. Nakayama (@EmiNakayama7) September 8, 2022
cleavage配列はHIVやSARSだけでなく、多くのS0がS1とS2に切れて感染性を持つようになるenvelopeウイルスが共通して持つ機構です。
ちなみにBsaI制限酵素サイトは、私が扱っているデングウイルスの配列で検索してみますと4箇所、あります。特に自然天然のウイルスには存在し得ない配列とは思えません。
— Emi E. Nakayama (@EmiNakayama7) September 8, 2022
BsaI : GGTCTC/GAGACC ( 4): 882 3733 6044 9260
私は数理屋ですから、BsaIサイトが確率的に多数生じうることぐらいは理解しています。問題はその配置です。ここまで都合よい配置がランダムプロセスで生じる確率は非常に低いです。詳しくは下記参照。https://t.co/0nk7fvdzFE
— Hideki Kakeya, Dr.Eng. (@hkakeya) September 8, 2022
K氏は、SARS-CoV-2のゲノムには、スパイクタンパク質の前後に『BsaI』という制限酵素で切断される配列(=制限酵素サイト)があり、スパイクタンパク質を『カセット』のように自由に組み換えられるようになっているため、「SARS-CoV-2は人工ウイルスだ!」ということが言いたいようです。
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補足)理解するには高度な専門知識が必要になりますが、Type IIS制限酵素に分類される『BsaI』を用いた遺伝子組換え技術については、こちらで詳しく解説されています。↓(ウイルスに限らず、幅広い分野で利用されています。)
生物工学会誌96(1),20-24,2018
シームレスクローニング法 ~古典的な制限酵素と DNA リガーゼを用いないクローニング~
本橋 健
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9601/9601_yomoyama.pdf
まずは、SARS-CoV-2のゲノムに存在するBsaI制限酵素サイト周辺をもう一度詳しく見ていきましょう。(相手の情報の精査は大切です。)
Tony VanDongen氏のツイートの画像を引用していますが、SARS-CoV-2ゲノムには、先頭から数えて「17972番目」と「24102番目」の塩基の2ヶ所にBsaI制限酵素サイトがあります。したがって、赤色の矢印で示した部分が『カセット』として機能する部分になります。
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これを見れば、K氏がデタラメを言っていることがすぐに分かるでしょう。
スパイクタンパク質をコードする遺伝子(Sと書かれた緑色の四角)は、「21563番目」から「25384番目」の塩基まで、です。
BsaI制限酵素サイトで切り出される配列(17972~24102)には、完全長のnsp14(18040~19620), nsp15(19621~20658), nsp16(20659~21552)と呼ばれる3種類のタンパク質が含まれる一方で、スパイクタンパク質はその全長の3分の2しか含まれません。
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したがって、スパイクタンパク質は1273個のアミノ酸から構成されますが、その後半部分のN856(スパイクタンパク質の先頭から数えて856番目のアスパラギンの意)やQ954などに変異を加えることはできず、オミクロン株を作ることはできません。
将来的に、新たな変異ウイルスを作る場合にも困ることになるでしょう。
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以上のことから、K氏の言う「BsaIを使うとスパイク蛋白部位だけ切り出せる」は、全くのデタラメであることが分かっていただけたかと思います。
N変異が30蓄積している領域にS変異がない事例はありますか?あれば教えてください。さらにその変異の殆どが過去に研究されたものであること、かつBsaIを使うとスパイク蛋白部位だけ切り出せることはどう評価しますか?
— Hideki Kakeya, Dr.Eng. (@hkakeya) September 8, 2022
(下記リンク参照)https://t.co/Mr3T7qlUTNhttps://t.co/0nk7fvdzFE https://t.co/g1jHF6fNK5
BsaI制限酵素サイトは先頭から〇〇番目にあり、スパイクタンパク質は〇〇番目から始まり…というのは、おそらくコロナウイルス研究者でもパッとは出てこないでしょう。
その場ですぐに確認できない自分にとって都合の良い偽りの根拠を出すことは、議論において最大の障害になります。科学者であるならば、決してやってはいけません。(ただし、Twitterが「議論の場」であるかどうか分かりませんが。)
彼らにとって科学的な厳密さとか以前の発言との整合性とかはもう関係ないのですよ。その場その場で(一部の)聴衆・視聴者にウケるように適当な事を言っているだけで、まともに相手をすると彼らを目立たせてしまいかえって逆効果の事も多いです。
— 新型コロナウイルス_ワクチン情報 (@VaccineWatch) September 11, 2022
学会や論文の世界で相手にされないのは,
— ECCCM (@Ecccm2Ecccm) September 20, 2022
「不都合な真実を語っているから」
ではなく
「専門家に検証されるとすぐバレるガバガバなことを言っているから」
です.
過激なことを言って専門家への不信を煽り,自分の書籍や有料講演で儲けるビジネスモデルに乗せられる被害者が不憫です.
確かにK氏の言う通り、スパイクタンパク質の直前と直後にBsaI制限酵素サイトがあれば、人工ウイルス説を主張するのに十分な根拠となるでしょう。
しかしながら、そうはなっていませんでした。
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他にも言いたいことは多々ありますが…、取り急ぎ以上。
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