短編 梅雨のある日に。
※ノンフィクション。時期外れですがご愛嬌。
ある朝、そういえば水曜日だった気がする。体育館入り口の曇りガラスが一層輪郭をぼやけさせていた。床も微かにしっとりといていて部員の足音が淡々と響き渡った。
私は当時、バレー部に所属していて朝練にギリギリのところで間に合ったところだ。ほんの、気の緩みだった。それがあのミスを誘発してしまった。
用意の手伝いをすべく制服を放り捨てて急いで着替えていると走ってきたからか喉の渇きを覚えた。一口お茶を含むと仲間に呼ばれて駆けて行った。ー水筒の口がうまく閉まっていない事を知らずに。
この後の事についてはご想像にお任せするとしよう。着る服が無くなったので一旦顧問の先生に相談しようと職員室へ向かった。真っ黒なクラブウェアに身を包んだ者がポツリと廊下で佇む。顔は恥ずかしさから赤面しており、消えてしまいたいと願うばかり。
さらに不運は重なる。一番見られたく無い人、幡君に見られてしまったのだ。茹蛸以上に赤くなった頬に血圧が上昇し、追い打ちをかけるように心音が高まる。こちらに真っ直ぐ向かってくる。突っ立っているくらいしか出来ず、顧問が会議中な事にキレながら場を持たせる為に当たり障りのない話をした。彼は名札を忘れたらしい。しばらく話していると、痛いところを突いてきた。やはり、突っ込むか。アンタを責める意味はさらさら無いけど責めたくなるよ、。苦々しく思いながらも笑い話に昇華させ、面白おかしく取り繕ったが長年の付き合いである彼にはお見通しだった。「そんな、恥ずかしんやったら体操服貸すけど。うちのクラスに来て。」
……だから。そうゆうところだよ、。
もうすっかり晴れて、窓の外の白い紫陽花は輝いていた。
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