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来年の会長が決まる
選挙委員会の先生からメールが来た。
「今度会長選挙の説明会があるので、例年通り現会長として心構えなどを話してください」
とうとうこの時期になった。私の任期はもうすぐ終わって、新しい時代になる。
喜ばしいことだ。贔屓目なしでも後輩たちは優秀だ。私なんかよりよっぽど良い生徒会を作れる。私もこの苦しい一年から解放される。こんなに嬉しいことはない。
でも、この苦しい一年に飛び込む後輩がいるのは少し怖かったりする。もちろんあの子達なら私よりうまくやれることは分かっている。でも、うちの学校の生徒会長は楽な仕事じゃないのだ。正確に言えば、先生に言われたことだけやるならアホほど楽できる。何か新しい企画を…と言い始めた瞬間心身ともに削られる。
私から話せる心構えなんてない。はっきりした心構えがなかったからこんなことになっているのだ。そして、心構えを話すことで(私の意志とは無関係に)後輩たちを「こちら側」へ引き摺り込むことになるのだ。
考えるだけで頭が痛い。吐き気がする。比喩とかじゃなくて物理的に。吐き気と言うと違うかもしれない、別に胃から何かが出てきそうとかではない。なんか、えずくような咳き込むような感覚。なんでこんな立場にわざわざ後輩を連れてこなければいけないのだろう。
去年のことを思い出してみる。私は会長選挙説明会をブッチした。「こんなに責任感がない人間なんだから会長立候補やめます」と言うつもりで放課後担当教員にお叱りを受けに行った。100:0で私が悪い。でも、私が何か喋る間もなく30秒ぐらいの説教で許されてしまった。他に立候補者がいないんだ、私がやるしかないんだと漠然と思って、訳も分からず涙が出てきた。
去年も一昨年もあんまりよろしくない会長だったから、私が当選したときは「華の時代到来」なんて言ってくれた先輩もいた。実際には暗黒の周年だったわけだが。
ああ、期待を裏切りたくなかったなあ。もっといろんなことをやりたかった。せめて会長という立場をもっと有意義なポジションにしたかった。後輩たちのやりたいこととか、もっとサポートできたかもしれないなあ。
でも、そんなことより何より。
3年前の、初めて生徒会に入った時の生徒会長のようになりたかったなあ!
生徒会長へのモチベーションがあるとしたら、ずっとあの人だ。ユーモアがあって、優しくて、活動に熱心で、3つも後輩の私とあんなに仲良くしてくれた。部活が同じわけでもないのに。
三年程度で追いつける背中なら最初から憧れていないけど。あの頃の生徒会はなんだか生徒会っぽくて、感染症拡大も手伝って「やれることを考える」作業が妙に楽しくて。あの人に出会えたことが、私の生徒会史上最も有益な出来事だったと思う。
あの頃の私がなりたかった生徒会長にはなれなかった。あの頃の私が今の私を見たらなんと言うだろう。
ああ、やっぱり私は『生徒会長』になりたかったんだ。
※バッチバチに余談だが先日後輩に「今年暴れすぎて来年以降フラッシュバックに苦しめられないでくださいね」と心配のお言葉をいただいた(先輩としてそれで良いのか)
これでも中3の修学旅行実行委員長の方が辛かったが、別に思い出すと嫌〜な気持ちになるだけでトラウマでもなんでもないので生徒会活動も大したトラウマにはならないと思う(それで良いのか(2回目))