あなたと夜と音楽堂 〜 日比谷野音ナイトオープンデー
「祖師は日蓮に奪われ、大師は弘法に奪われなんてぇまして」
というのは、古今亭志ん朝師匠の落語『佐々木政談』のマクラ。
どういうことかというと、特定の宗旨を広めた人すべてが祖師だけれども、一般に「お祖師様」といえば日蓮のことであり、同様に達磨大師とかマグマ大使とか他にもいろいろいるにも関わらず、「お大師様」といえば弘法大師だというハナシ。
ところで全国津々浦々に野外音楽堂というのは多々あるけれども、
「野音」
といえば日比谷野外音楽堂、ことに大音楽堂。
おなじみ「フォークの殿堂」「ロックの聖地」。今年で101年になる歴史の中では、数々の伝説も生まれた。
キャロルの解散コンサートで電飾が焼け落ちたりとか、キャンディーズが突如解散宣言をしたりとか、尾崎豊がステージから飛び降りて骨折したとか……盗んだバイクで走りだしたりしたけどフツーの女の子に戻りたいんでそこんとこヨロシク(笑)
その野音が昨日9月12日、「日比谷野音ナイトオープンデー」として無料開放を行ったので、仕事帰りに行ってきた。
実は現在の俺の通勤路に、野音はある。
最短ルートではないので往路だけなのだが、照っても曇っても降られても吹かれても、わざわざ日比谷公園の中を歩き、
「おはよう! 野音!!」
と挨拶するのは、実に気持ちがいい。
行路の左手には「日比谷図書文化館」(千代田区立図書館)。
大声上げて盛り上がる野音が『阿』なら、静かに読書や勉学に勤しむ図書館は『吽』。公園の樹々や花たち、雲形池や鶴の噴水などとともに、毎朝この〝参道〟に清められている。
閑話休題。
今回の無料開放を知ってからあらためて気づいたのだが、俺が野音に入るのは実にちょうど40年ぶりで、おそらく2回目。杉真理さんの名盤『MISTONE』リリース時の『no time concert tour '84』以来というわけで光陰矢の如しだが、いやー、寄って良かった!!
ふだんから映像などで見慣れているせいか懐かしい……ではなかったのが意外だったが、それでも入った途端にグッと来るものがあった。やはり聖地と呼ばれるようなトコロは、場所の力が違う。
うれしかったのはステージに上がったり楽屋に入ったりといった、我ら一般ピーポーがそうそう出来ないことを体験できたこと。
ステージには記念撮影用にマイクも設置されており、順番待ちで長蛇の列。皆さん楽しそうに撮影されてたなあ。きっとそれぞれの心の聖域に、忘れようにも忘らりょかな、ステージやサウンド・オブ・ミュージックがあるのだろう。
というわけで俺も……
愛しあってるかぁああああい!!??
ところでこの野音、今年の1月まではこの9月いっぱいでいったん閉鎖され、四代目への建て替えが進められるはずだった。
それがなんでも再整備の事業者に応募が無かったとやらで、使用期限が1年ばかり延長されることになったらしい。
「事業者の応募が無かった」とはここ数年のTOKIO各所の再開発ブームの中において「はて?」な感じだが、小耳に挟んだ限りながら、野音を含む日比谷公園の再開発計画は、あの神宮外苑のそれにも匹敵する、ろくでもないものらしい。それが故の今回の流れなのかなあと下種の勘繰りもなくはないが、都やらゼネコンやらの思惑が那辺にあれ、良い方向に動いてくれるよう願ってやまない。
とまれそうしたわけで、おそらく来年の今時分も「日比谷野音ナイトオープンデー」は実施されると思われる。また行きたいな。
皆さんもぜひ。
付記:
今回は同行しなかったが女房も野音は1度きりだそうなのだが、しかしそれは1981年5月30日・31日に開催された、RCサクセションの伝説のライブだったらしい。