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『本郷隼人の きょうのサブスク』 Vol.1 フィルム・スタジオ・オーケストラ『永遠不滅の映画音楽 ベスト30』

 音楽のサブスク(サブスクリプション、定額制配信)が本格化して10年ほど。賛否両論あるが、筆者は「夢のようなサービス」だとして、大いに利用している。

 かつて入手できなかったアルバムが聴けたり、このnoteをはじめとして他者から知りえたミュージシャンや楽曲をすぐに聴くことができたり。
 のみならず時には絶版(盤)となってひさしく高値で取引されているレアアイテムや、いわゆる珍盤のたぐいが配信されていたりするのも楽しい。

 というわけでこの連載では、サブスクで聴けるアルバムやプレイリストなどを分野ジャンルを問わず、駄文を交えながら紹介していこうと思う。

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 現在では音楽だけではなく映画のネット配信も当たり前だが、一般家庭にビデオが普及する1980年代半ばぐらいまで、多くの人々にとって「所有できる映画」といえば『映画音楽』にほかならなかった。

 しかもいわゆる「オリジナル・サウンドトラック盤」をずらりと揃えているのは、少数というか好事家ジレッタントな皆さん。多くの一般家庭のレコードラックにあったのは、「映画音楽大全集」や「懐かしのスクリーン・ミュージック」といったタイトルの、オリジナルの演奏(劇伴)ではないヽヽヽヽ、有名無名の「楽団バンド」が演奏するオムニバス盤だったはずだ。

 1975年/昭和50年に中学に入学してすぐに洋画に目覚めた筆者もご多分に漏れず、それらをBGMに、なけなしの小遣いをはたいて毎月買っていた『ロードショー』や『スクリーン』といった映画雑誌のページを繰りながら、まだ見ぬ名画たちへの憧憬あこがれに胸をざわつかせていたものだ。

 さてそうした「楽団系の映画音楽」はありがたいことにサブスクで多数配信されているが、今回はそれらの中でも、選曲といい演奏といいどうにも素晴らしい、それこそ「配信限定」(※もちろんサブスク契約だけではなく、ダウンロード購入も可能)の1枚……んじゃなくてタイトルを紹介したい。

『永遠不滅の映画音楽 ベスト30』

※曲目

01 80日間世界一周
02 エデンの東
03 虹の彼方に~映画「オズの魔法使」より
04 ライムライト
05 時の過ぎゆくまま~映画「カサブランカ」より
06 遙かなる山の呼び声(映画『シェーン』より)
07 慕情
08 魅惑の宵(映画『南太平洋』より)
09 ただ一度の機会(映画『会議は踊る』より)
10 禁じられた遊び
11 第三の男
12 太陽がいっぱい
13 タラのテーマ ~「風と共に去りぬ」より
14 ロミオとジュリエット
15 鉄道員のテーマ
16 ララのテーマ(映画『ドクトル・ジバゴ』より)
17 ムーン・リヴァー(映画『ティファニーで朝食を』より)
18 シャレード
19 サウンド・オブ・ミュージック
20 トゥナイト(映画『ウエスト・サイド・ストーリー』より)
21 ジェルソミーナ~映画「道」より
22 ブーベの恋人
23 白銀は招くよ
24 河は呼んでいる
25 死ぬほど愛して~映画「刑事」より
26 ヴェニスの夏の日(映画『旅情』より)
27 ひまわり
28 ある愛の詩
29 愛のテーマ(映画『ゴッドファーザー』より)
30 男と女

 ある程度の年齢以上や映画に詳しい方にはすぐおわかりのように、かなり昔の作品ばかり。
 筆者からしても親世代が観ていたものがほとんどで、最も時代が新しい『ゴッドファーザー』(1972)にしてもリアルタイムではない。
 にもかかわらず紹介したいのは、いずれもが歴史に残る名画でかつ曲はいまやスタンダード。まさに「The 映画音楽」といえるものばかりだからだ。

 演奏は「フィルム・スタジオ・オーケストラ」。

日本の選りすぐりの演奏家を集めた映画音楽専門のオーケストラ。歴史は古く、1960年、ビクター・レコードにより結成された。オリジナル音楽のイメージを大切にした演奏が魅力のポイント。

公式サイトによるプロフィール

 洋の東西を問わずこうしたレコード会社が結成・運営する楽団はたくさんあり、かつてはある程度の収入源になっていたと思われる。で、筆者が知る限りそのほとんどが演奏のクオリティは高いのだが、時として「ゑー、この編曲はないんじゃ……」というのもなくはない。
 しかしこのフィルム・スタジオ・オーケストラの演奏そして編曲は、上記引用にあるオリジナル音楽のイメージを大切にというばかりか、「映画作品そのもの」についても解ってる感が炸裂な演奏で、実に好ましい。

 個人的には曲順も好きで、特に1曲目が『80日間世界一周』というのがまた、どうにもたまらない。パンアメリカン航空のジェットストリームヽヽヽヽヽヽヽヽヽとともに兼高かおるさんと芥川隆行さんの声が聞こえてくるようで(笑)、映画音楽への世界旅行の扉が開く感じに胸キュンだ。

 いまやサブスクでは無数のサントラoriginal soundtrackが配信されており、筆者などは狂喜乱舞している。またその気になればオリジナルの音源ばかりヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽでプレイリストを作ることもでき、筆者もよくやっている。凄い時代だなあと感心することしきりだが、三つ子の魂百までというか、やはりこうした楽団モノの映画音楽も好きで好きでしょうがない。
 ノスタル爺(©藤子・F・不二雄先生)といってしまえばそれまでだが、映画にかつえていた青春を過ごし、また映画が「銀幕」と呼ばれていた時代にギリギリ間に合ったということもまた、このタイトルが大好きな理由だ。

 ここ最近、音楽の分類の一つとして『チル』なる言葉をよく見聞きする。それこそサブスク界隈で。
「くつろぐ」とか「まったり過ごす」といった意味らしいのだが、一方で若い皆さんは「インストゥルメンタル」という言葉を知らないとも聞く。
 ぜひ温故知新ふるきをたずねてあたらしきをしるの精神で、父母や祖父祖母世代のチルを聴いていただきたいと思う。

 そして我がご同輩には、〝あの頃〟の喫茶店や商店街のBGM、そして名画座の堅い椅子(笑)などに想いをはせていただければ幸いだ。

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