見出し画像

うむどんどん ~【短期連載】7年ぶりの伊香保・榛名山②

 9月14日(土)に日帰りで群馬県は伊香保および榛名山界隈をへめぐってきた日記の第2回。

 今回はグルメ日記です(笑)

↓↓↓前回はこちら↓↓↓

 香川県の「讃岐うどん」、秋田県の「稲庭うどん」と並んで『日本三大うどん』の一つとされるのが、「水沢うどん」

 三大とはいっても讃岐や稲庭に比して一般に広く知られてるとはいえず、あたかもVol.1とVol.2という2つの「ナイアガラ・トライアングル」における伊藤銀次さんと杉真理さんのようだが(失礼)、お二人同様に我ら夫婦が愛してやまないところもまた同じ。(※オマケ参照)

 伊香保の温泉街から車で10分弱のところに飛鳥時代に創建されたという「水澤観音」があり、その参拝客や旅人にうどんを振舞ったのが起源とされている。なんでも天正10年のことらしいので、〝十五夜に、起きてしまった〟あるいは〝いちごパンツ〟の語呂合わせでお馴染み「本能寺の変」(1582)と同い年だ。

 さてその「水沢うどん街」と呼ばれる山道筋には大小合わせて10数軒のうどんを供する店が軒を連ねているのだが、浪漫社の一押しというか〝一択〟なのが、

『手打ちうむどん 始祖 清水屋』


 なぜ「うどん」ではなく『うむどん』なのかは、長くなるので下記公式サイトをご参照あれ。

 最初にうかがったのが2006年9月13日なので今回の当日からもう18年と1日前になるが、当時、
「うどんってのは、こんなにも旨いもんなのか……」
 と、目を剥いたものだ。今やいっぱしの「うどんにはうるさい夫婦」(笑)だが、今にして思えばあれが嚆矢きっかけだったのだな……とはついでながら。

 うどんに限らず料理や食事に何を求めるかは人によって、あるいはその地域や種類などによって異なると思う。が、少なくともバランスという点において清水屋さんの「ざるうむどん」は、舌ざわり、コシ、のどごしの三角形が絶妙。まさにマイアガル・トライアングル、ええ麺で恋をして。
 水沢うどんの特色であるところのごまだれの味わいも玄妙というか幻妙と表現してもいいほどで、さすが観音様のお膝元、拝むレベル。この世に完璧なものがあるとしたら大滝詠一『A LONG VACATION』か清水屋さんのざるうむどんかといったほど。
 ちなみにとある年に何かの弾みで同じ水沢うどん街の観光バスがごんごん乗り入れる店にも行ってみたのだが、旨いっちゃあうまいけどただそれだけだった。清水屋さんのように「感動」を覚える店というのは世にそうそうはないものだと思い知り、あれもまた、我らの食事処選びの分水嶺だったかな。

 ともかく今回は日帰りの強行軍ということで伊香保の名湯での♬ゆったりたっぷりの~んびり(©ホテル三日月)を我慢はしても、清水屋さんだけは外すわけにはいかない。それぐらいだということ。

 ところで我ら夫婦にとって伊香保は7年ぶりだが、俺が清水屋さんのうむどんをいただくのはおそらく10年以上ぶり。
 というのも前回泊りがけで伊香保に来た際は、清水屋さんにうかがう直前で俺の「半持病」ともいえる腸閉塞イレウスが発症してしまい、女房だけが店を訪い、俺は涙ながらに駐車場のレンタカーの中で、痛みと悔しさと羨ましさとに耐えていたのだったのだった。
 蛇足ながらとある事故で小腸に爆弾を抱えている俺は、キノコやこんにゃく、海藻などの食物繊維が豊富だがそのぶん消化が悪いものを大量に喰らうと、イレウスになりやすい。といってもそれまでも7年とか8年とかに1回というスパンだったのだが、しかしだからこそ前回はそれをすっかり忘れており(というかその時初めて、引き金トリガーとなるものを認識した)、前日の昼餉と旅館の夕餉とで、それら(特にマイタケ)を大量に喰らってしまっていたのだね。ちなみにマイタケもこんにゃくも群馬の特産品であり俺の大好物なのだが、得てしてそういうものだ。(ちなみにその数年後に、性懲りも無くきのこ鍋の暴れ喰いをしてまたもや入院したのはナイショ)

 閑話休題。
 いずれにせよ女房にしてもひさびさの清水屋さんだったわけだが、もうね、全浪漫社が泣いた!!

 当初はメニューや雰囲気の若干の変化に少なからず戸惑ったものの、女房の「ほら、コロナもあったし」になるほど納得。かの〝禍〟で飲食店が良くも悪くも変わることを余儀なくされたことは、我ら『浪漫社』こそが、痛いほどに知っている。
 また、下に載せるGoogleマップのレビューでは、「量の割に高い」とか「料理が遅い」とか「主人の接客がうざったい」といったマイナス意見も散見される。それは我らも否定はしないし、頷ける部分もなくはない。
 ただ——ある意味で当代のご主人の接客も含め——真摯な仕事ぶりをひしひしと感じられる老舗であるということは請け負いたい。「始祖」の名にし負ふ、440年の長きにわたってひたすら実直に守られてきた製法とたゆまぬ努力とが、味わいとなってあらわれている。今回、そこが変わっていないことに、何より感激した。

 ハナシはちょっと逸れるがこの1年ほどの間、日常の東京暮らしの中でも、ことに江戸な「百年老舗」に行くことが目に見えて増え、それらの底力に、あらためて感激・感動することが多くなった。このことについてはまた別稿で綴ることもあろうが、同様の感慨をひさしぶりの清水屋さんでもることができ、よわいを重ねるのも悪くないなあと、またも気持ちを新たにした次第だ。

 皆さんも伊香保に行かれる際にはぜひ、ホテルや旅館のお料理はほどほどにして(笑)、水沢まで足を伸ばして清水屋さんでお腹を満たし、水澤の観音様(と、近くの資料館の十二神将など)で心を満たしていただきたい。



清水屋さん伝統の白くてツヤツヤの始祖うむどん(左)と、
最近はじめたと思しき地粉うむどん(右)の合い盛り。
地粉は初めていただいたが、これまたどうにも旨かった。
以前は乗っていたキュウリが無くなってしまったようだが、
うどんの切れ端というオマケが付くようになったのはうれしい変化。
俺にとっては危険が危ない、白マイタケと黒マイタケの天ぷら合い盛り。
これがまたどうにもこうにも「食べ終わりたくない(©︎女房)」旨さ。
「ひさしぶりの清水屋さんのマイタケともなれば、食べ過ぎてしまうのも無理はありません」
(笑)なので、よぉ〜く噛んでいただきました。
以前は無かった気がする「上州豚の角煮」。
滲みっしみの、トロットロ。絶品。
ホントはデザートにすべきだった、季節のおすすめ「栗の天ぷら」
うむどんを待てずに先にバクついてしまったのはご愛嬌。


オマケ:


いいなと思ったら応援しよう!