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君たちはどう粋《いき》るか 〜 サギは華麗に

(※本記事は犯罪を肯定したり助長したりするものではありません)

 平日18:10からのNHKの関東ローカルニュース『首都圏ネットワーク』を毎回録画しては、夫婦揃っての夕餉の際に観ている。

 当初は最後の気象情報と直前に登場する「しゅと犬くん」が目的だったのが、〝浪漫社語わがやご〟で言うところの「良いNHK」な番組であり、ほどなくその他の様々なコーナーも楽しみにするようになった。

 中でも妙なハマりかたをしているのが、
「STOP詐欺被害! わたしたちはだまされない」

 特殊詐欺の実際の手口を紹介しながら注意喚起をするコーナーなのだが、毎回、驚いたり気をつけねばと思うのと同時に……いやむしろ手口に感心したり、騙される側にも呆れたり(特に被害額!!)、注意喚起のコピーや解説のビミョーな可笑しみに、やいのやいのとツッコミを入れたりしている。

 特にここ最近で我が家がドハマりしたのが、
「〝FBIから連絡があった〟に注意!」

 リンク先の動画ををぜひご覧いただきたいが要約すると、80代の男性(被害者)のところに金融庁職員を名乗る男(犯人)から「『口座が事件に使用されたおそれがある』とアメリカ連邦捜査局から連絡があった」と電話があり、慌てた男性が指定された口座に現金を振り込んでしまったというもの。
 FBIて……アル・カポネ vs エリオット・ネスじゃねえんだから。
 もともと表情豊かな寺門亜衣子アナの「『FBIから連絡があった』と言われると慌ててしまうのも、無理はありません」という大真面目な解説にもジワるものがあり、以来我が家では「〇〇ともなると△△してしまうのも、無理はありません」が、慣用句となっている。(例:ひさしぶりのとんかつともなれば食べ過ぎてしまうのも、無理はありません)

 しかしこの手口のより狡猾なずるがしこいところは、「FBI」という単語を「80代男性」に投げかけているところ。これはおそらく、ざっくりとながら60代以下には使わない。
 上でもキャラクター名を挙げたがたぶん被害者は、テレビ黎明期の大人気輸入ドラマ(TV洋画)『アンタッチャブル』に多かれ少なかれ馴染みがあったのだ。なのでたぶんもっと若い世代よりも、「FBIから連絡」に慌ててしまうのも無理もない、のだよワトソン君。

 この例に限らず特殊詐欺グループの、ことに上のほうの連中は本当に頭がいいと思う。なぜそれを別のことに活かさないのかというのは一般論だが、しかしどんなに手口に感心することがあっても、我が家的には許しがたい存在だ。
 なぜならば、一般人を標的ターゲットにしているから。実に野暮だ。

 いやしくもサギたるもの、カモる相手はもっと巨悪とか田舎財閥とか、それこそFBIとかICPOとかでしかるべきだろう、というハナシ。

 そう、映画『スティング』「オーシャンズ」シリーズ。あるいはドラマ『華麗なるペテン師たち』のように。

***

 ところで数日前に同じ首都圏ネットワークで流れ、詐欺師好きの我が家(笑)が、大喜びしたニュースがあった。

 外国籍の二人組の男が都内のホテル古物商を相手に詐欺を働いた容疑で逮捕されたとのことだが、ニセの金の粒わざと床にばら撒き被害者とともに拾い集める間に新聞紙にくるんでいた現金をニセ札にすり替えたとか……もうね、手口といい思い浮かぶ映像といい、これぞ我が家の大好物でしかない!!!
 やるなあ、ボニー&クライド……じゃなかった、ジェームス&サンディマン。
(※本記事は犯罪を肯定したり助長したりするものではありません)

 しかもそのニセ札というのが、一瞬画面に映った札束(そこを見逃さない俺!)からの推察だがおそらくはこれ。

 実に人を食った話である。

 ニセの金の粒というのもたぶんどこぞのアジトで、自分ら(ときっと少数の協力者と)でちまちまと色を塗ったものに違いないと想像を逞しくしてしまう。古物商ならすぐ見抜きなさいよと言うはやすし行うはきよしがたしだが、それはともかく特殊詐欺や、SNSでの闇バイト募集と場当たり的な実行とか、そういった昨今の犯罪たちにくらべ、アナログで、どこか牧歌的とも言える感じがまた、たまらないのだねえ。

「きっとジェームスが、粒をばら撒く名人なのよ」
「サンディマンは人の気を引くのが得意なんだよな」
「ニセ札の束のところは紙でさえない!」
「俺が裁判官だったら、執行猶予100年だな」
「いえそれより次は脱獄よ!!」
「それだ!!!」
 とここ数日、我が家ふたり揃っての詐欺好き脳、華麗なる犯罪好き脳は止まることがない。
 ありがとう、ブッチ&キャシディ……じゃなかった、ジェームス&サンディマン。
(※本記事は犯罪を肯定したり助長したりするものではありません)

 ともかくなにかと陰惨で殺伐とした事件・事故が多い昨今。あるいは犯罪までいかずとも暗澹たる気持ちになることばかりのこのご時世に、ひさびさに痛快なニュースであった。勝手なそうぞう(想像・創造)が大半だけど(笑)

 犯罪たるもの、野暮はいけません野暮は。

「カリオストロの城」の原型の一つでもあるTV第1シリーズ11話の中で、我らが大泥棒も言ってるじゃああ~りませんか。

「粋にやろうぜ、粋によ。」

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