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【資料】映画

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2024年6月の記事一覧

あまりに人間的な「ブリキの太鼓」

あまりに人間的な「ブリキの太鼓」

第二次世界大戦後にドイツ語で書かれた文学でもっとも重要だとされている作品は「ブリキの太鼓」だろう。もう記憶が曖昧だが、たしか大学のドイツ語の授業でもその一部を読まされたような記憶がある。僕は集英社文庫の翻訳を買ったものの、何度も読みきれず、本の山に積んでいた。
というのも、3歳で成長することをやめた主人公オスカルが、太鼓を叩いて叫び声を上げてガラスを割りながら、戦前から戦後のダンツィヒ(現代のグダ

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離れている愛 / 「ひまわり」

離れている愛 / 「ひまわり」

ソフィア・ローレンを見ると、パピルスの巻物に描かれた美女を思い出す。
イタリアの伊達男、マルチェロ・マストロヤンニと共演した「ひまわり」では、ロシアとの東部戦線に派兵された夫を待つ妻の役でその美貌を振りまいた。
さて、この映画は”愛を確かめ合うように別れる二人”という悲哀のドラマとして、ラストシーンのミラノ中央駅が観客の印象に残っていると思う。戦争によって現地に何らかの事情で取り残された兵士たちの

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知らないことは反省もできない / 「ディア・ハンター」

知らないことは反省もできない / 「ディア・ハンター」

3時間にも及ぶ大作なんて、よほどの作品でなければ観る気もしないだろう。
「ディア・ハンター」はそんな傑作の1本だ。
スラヴ系アメリカ人の若者3人がベトナム戦争へ出征し、それぞれ異なる人生を歩んでいくことになる様を描いたこの映画は、劇中のロシアンルーレットのシーンであまりにも有名になった。ちなみに、著名なジャーナリストから、ベトコンが捕虜とロシアンルーレットをしたなんて話は聞いたことがない、と批判さ

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