著作者人格権と反社会的組織・日本テレビ
ドラマ「セクシー田中さん」の脚本家・相沢友子氏が、インスタグラムに原作者がわがまま放題したと取れる投稿をし、事実に反すると原作の芦原妃奈子先生が編集部と相談して経緯を明らかにする投稿をブログとXに上げ、大きな話題になっていました。
契約の段階で原作通りにするのが条件とかなりの念押しをしていたのに、無視して改変された脚本が毎回送られてきて、直しがきつかったこと。まだ連載終わってないのに最終回も好き勝手されそうだったので、芦原先生がラスト2話の脚本を書くしかなかったこと。
実は一回、この話題でブログ記事を書いたのですが。
芦原先生ご本人がアカウントを消したのを見て、「外野がこれ以上騒ぐのもな」と思って、下書き削除したんですよ。
そしたら最悪の結末だった。
芦原先生自殺した。
ちなみにこれを受けての日本テレビの声明が、「僕悪くないもん」と取れるような現状認識の甘いもので、さらに炎上。
「裏事情を暴露するのは業界のタブー」とテレビ局側の肩を持つような意見を見かけましたが、じゃあ先に暴露した相沢氏が悪いってことですね? ああでも、内容捏造で事実じゃないから暴露じゃないのか。さすが相沢先生!
嫌味を書くのは、人生狂わせてしまっているぐらい創作を重んじる者として、作品をないがしろにするやつはガチで敵だからです。そもそもこの問題、日本テレビ擁護できるわけないんだよ。
芸術・文化法、著作権法を専門とされる弁護士、福井健策先生のX投稿。
著作者人格権、同一性保持権とは。Wikipediaより抜粋。
日本テレビ側は契約を守る気がなかったとしか思えない態度を取っていて、さらにまさにこういう事態を想定して設定されている作者の人権も踏みにじった。その結果、精神的苦痛だけでは済まずに命を奪った。
もう一回書きますね。まさにこういう事態を想定して設定されている作者の人権も踏みにじった。
200%日本テレビが悪い。
この事件について、創作者サイドから自分も経験したという体験談がぽろぽろと出てきています。業界では日常的に行われてきた模様。さらに脚本の相沢氏は他作品でも同様に改変を行い原作クラッシャーとあだ名され、プロデューサーの三上氏に至ってはドラマ『おせん』の改変で原作者のきくち正太先生がショックを受けて連載が休載に追い込まれています。そんな人が仕事を続けている。日本テレビ側はそれぐらいOKと許容していたということです。
とりあえずドラマ化の許可さえとってしまえば後は何してもよい、原作者が喚いていても出版社は真っ向からテレビ局に盾突けるわけないんだから握り潰してしまえばよい。そういう業界の常識なんでしょうかね。大ごとにしたネットが悪いとしたがっている層がいるみたいですしね。
契約は守らない、人権は踏みにじる。それが俺たちの常識。すげえな、どんな反社会的組織だよ。
というわけで記事タイトル。
まあ、日本テレビだけじゃないだろうとは思います。ドラマだけでもない。こういう、俺ルールが法律よりも上だと考えてるなと思わせる行動をそこらじゅうで取っていますしね。そうやってテレビ局は評判をガンガン下げているんですけど、今回の対応を見ていても、気にしてないんでしょうねえ。
追記
この後、ドラマ制作の事情を上げてテレビ側擁護ともとれるような発言をいろいろ見ました。
その中ですごい炎上をしたのは日本シナリオ作家協会の動画です。『脚本家のたちの深夜密談』。脚本家の伴一彦さんが作家の東野圭吾さんをディスったというデマが流れ慌てて削除。伴氏が弁明する事態になっています。
対談の書き起こしを見つけたので読んでみたのですが、確かに東野圭吾先生の件はデマっぽい。でも全体的に認識が甘いなあという感想です。
この問題の本質は先にも書いた通り、「契約時の話が反故にされていること」「作家を守る目的で作られた著作者人格権が踏みにじられ、まさに防ごうとしていた事態になったこと」です。
脚本家も作家なので、作家性を出したいというようなことを言っているのですが、それは著作者人格権より下位の問題です。
しかもそれはオリジナルの脚本でやればいいこと。それが通らないのは自分の実績が足りないからなのだから、実績を積めばいい。オリジナルでやりたいなら書けばいいんですよ。今はここみたいに発表して世に問う場所はたくさんあります。そこから書籍化した人も多いし、ヒット作だって出ている。脚本家だってオリジナル企画でやりたいけど原作付きしか通らないから仕方ないなんて、単純に結果を出せない能力不足の問題です。
宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』は、その前に出したオリジナル企画が「原作がない」と通らなかったので、じゃあ原作を作ればいいんでしょと漫画連載したそうですよ。
ちなみに伴一彦氏は自分で小説を書いていることが途中で出てくるのですが、なのに自分たちで原作を作ろうという話にはならず、原作改変とか言わないでと視聴者にお願いして終わっています。
脚本家対原作者の対立構図で見る世間も悪いと言いたげですが、そもそも先に喧嘩を売ったのが脚本家の側だということも見ないふりです。
特にこの問題は同一性保持権の「著作者の意に反して」の部分が問題なのです。変えてもいいって言ってくれた原作者もいるよじゃないのです。
芦原先生はこれが初めての実写化ではありませんでした。そんな人が執拗に原作通りでという注文を付けていたというのは、それまでにも嫌な思いをしていたのではないか。そう考えるのが普通でしょう。
結局、プロデューサーの責任とは強く言えてないことも含め、原作者に泣き寝入りさせるのが当然と考えている業界の感覚が滲んでるんだよなあと思いました。
(ブログ『かってに応援団』24/2/1より転載・改稿追記)
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