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各作品の第1話へのリンクです。 (作者50音順) 神楽坂らせん 宇宙の渚でおてんば娘が大冒険『ちょっと上まで…』 かわせひろし 少年とポンコツロボと宇宙船『キャプテン・ラクトの宇宙船』 道具として生まれ命を搾取されるクローンたち『クローン04』 にぽっくめいきんぐ 汎銀河規模まんじゅうこわい『いないいないもばあのうち』 宇宙人形スイッチくん夫婦の危機を救う『アリストテレスイッチ』 幾つもの世界と揺らぐリアリティ『町本寺門は知っている』 波野發作 銀河商業協同組合勃興記
明るく輝くいくつものモニターの前で、私は高ぶる気持ちを抑え切れずにいた。 並ぶ画面の中の数々の数値を、一つ一つチェックする。それはいつもの手順だ。 だが状況が、いつもと同じではない。つい気になって、何度も確認してしまう。 私のような天文学者にとって、このような状況で気分をしずめろというのは無理な話だ。 何しろ今日はこれから、新型宇宙望遠鏡での初観測を行うのだから。 宇宙望遠鏡は天文学者にとって夢の観測機器だ。長年の悩みを解決してくれた。 大気は地表から宇宙に向か
私はじっと息をひそめていた。 奥の部屋で彼が原稿を書いているから。 その邪魔をしないようにソファーに座り、身じろぎもせず、じっと待つ。 音をたてるなんてもってのほか。動く気配でさえ、彼の集中をさまたげるかもしれない。 だから私は、じっと待つ。 ただ、じっと。 ひたすら、じっと。 部屋からはかすかな打鍵の音だけが伝わってくる。 彼が使っているのは古風なメカニカルキーボード。今は思考入力が当然だ。脳波から考えていることを読み取り、文章の形に整えて表示する。 だ
「さあ、行くぞ!」 お父さんがうれしそうな顔でイグニッションキーをひねる。最初きゅきゅきゅと音がしたあと、ぶおーんとエンジンがふき上がる。 その音を聞いてにこにこ顔のお父さんに対して、となりの助手席のお母さんは少し顔をくもらせている。 「こんな日にピクニックだなんて、不謹慎だって思われないかな」 それはぼくも同感。後ろの席から窓の外を見る。確かに雲一つなく晴れ上がった空はピクニック日和に見えるけれど、視線を落として地上の他の状況を考えたら、ふつうは遊びに行くような日じゃ