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七 なかなかの器量 今宵は新月。太陽と共に月も沈み、夜の闇が一層その深さを増す。人々が寝静まった深夜の静寂。繁華街のような眠らない街とちがい、居住区に群立するマンションの影の中では、静けさはさらに際立つ。 そのマンションの通路を歩く人影があった。 それは件の会社『暁里(シャオリ)生物科技』のクローン、九十六号。 『暁里生物科技』は、その名が示す通り、大陸からこの地に進出した会社である。だが現在の活動拠点はむしろ日本が中心になっていて、大陸からの他の勢力を迎え撃つ