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銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE

2016年から活動しているセルパブSF雑誌『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE』のnote版です。
明るく楽しく激しい、セルフパブリッシング・エンターテインメント・SFマガジン。気鋭の作家が集まって…
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2021年1月の記事一覧

アンフォールドザワールド・アンリミテッド 11

11 私たちの町は夏休み直前だけれど、ここは肌寒かった。海から吹き上げてくる風がそう感じさせるのかも知れない。半袖の制服だと少し辛い。さっきまで古い公団住宅の畳だったはずの足元は、ごつごつとしたむき出しの岩場だ。そういえば、布団に寝かされていたはずのミッチの遺体はどこへ行ったのだろう。 「あれがミッチの家……」  靴下履きのまま、私たちは岩の上を歩く。切り立った崖の先端に、ガラス張りの丸い住宅があった。 「トニー・スタークの別荘ですね、まるで」 「ほのかそれ観たことあるー。ア

アンフォールドザワールド・アンリミテッド 10

10 ぼそぼそと聞き取り難い会話がしばらく続いたあと、フータが押入れのふすまを開ける。 「話、終わったのか?」  窓からの陽光が差し込んできて、私は眉をひそめる。フータのうしろに立つイチゴの顔が、逆光でよく見えない。 「うん、とりあえずマスタには許可してもらえた。ミッチの部屋に行こうか」  イチゴの部屋を出て板張りの廊下に立つ。さっきキズナニが出てきた一番奥の部屋のふすまは、少しだけ隙間があいたままだ。イチゴが部屋を開ける。 「ミッチ……」  ちかこが絞り出すような声でつぶや

クローン04 第1話

  一 ただの道具だから  人は何のために生まれてくるのだろう。  何のために生きているのだろう。  私にはわからない。  私はただの道具だから。  遅くにのぼり始めた欠けた月が、ようやく頭上へと差しかかろうとしていた。  その冷たい光が、一人の女の姿を浮かび上がらせる。  リンスゥは一人、高い壁の上にたたずんでいた。  ここを住処にする野良猫が、見慣れぬ闖入者に警戒の視線を送っている。  はたちを少し過ぎたと思われる整った顔立ち。  ぴたりと密着する闇夜に溶ける濃

アンフォールドザワールド・アンリミテッド 9

9  私たちの通う中学校から少し歩いたところに、クラウドイーター三人の拠点があった。バス通りから少し離れた、川沿いにある古い公団住宅の階段を上がる。 「イチゴたち、こんなところに住んでたんだ」 「実は、ここ空き部屋なんだけどね」  フータが四階の部屋の鍵を開ける。造りは古いけれど新しい畳の匂いがする。板張りのキッチンには小さめの冷蔵庫が置かれている。 「空き部屋って、勝手に住んでんの?」 「もしだれかが入居してくるようなら、ちゃんと出て行くし」 「わりとひろーい。3DK?」

1-1 第1世界:リアリティ100%

「だから、何を?!」  棒のように立ち、両手をグーにして体の横に突き下ろす女が居る。和室にだ。ほっぺに朱が灯り、白ニットの下のスカートがひらっと勢い良く揺れた。 「だから、何がだよ?」  あぐらをかいて畳に座り、眉をしかめた男も居る。女の揺れたスカートの中はかろうじて見えない程度の、絶妙な角度と距離にその男は居る。  女のミディアムヘアーの上には、ウサギのように左右に延びたリボンが在り、そのリボン付近を、男は、うんざりしたような表情で横見していた。「このCMのことだよ、健