月に向かって乾杯

僕はかって遠距離恋愛をしていた

彼女の名はaya(仮名)

千葉園在住

僕は石川県

なかなか会う事も出来ず代わりに夜はいつも長電話する毎日だった

会いたいのに会えない

せめて少しでもよりお互いを感じ合いたい

中秋の名月の日僕はこう提案した

「今日は中秋の名月で月がとても綺麗だよ。2人で同じ月を見上げて乾杯しよう。そして同じ月を見ながら話をしよう」

と・・。

彼女も賛同してくれた

彼女は自宅の窓から月を見る

僕は近くの河川敷に出かけた

大好きな氷結のグレープフルーツを持って

河川敷に着くと改めて彼女に電話した

「月見える?」

「うん、とても綺麗」

「2人は遠く離れてるけど、今、この瞬間に同じ月を見上げてる。同じ大地の上にいるんだよ。」

「うん・・。」

彼女は泣きそうになっていた

僕も少しウルッとなった

いつもはそんなに意識しない月ももの凄く綺麗に見えた

鏡のように月に反射して直接彼女に向き合ってるような

いつもより彼女との距離が近くなったように感じた

「乾杯しようか」

「うん」

「月に向かって乾杯」

「月に向かって乾杯」

僕たちは月に向かって乾杯した

乾杯の瞬間、グッと来るものがあった

「そっちから見た月はどんな感じ?」

「うさぎさんが飛び跳ねてるよ」(笑)

「こっちからも見えるよ♪ やっぱり同じ月を見てるんだね♪」

「うん♪」

それからどれくらいの時間が過ぎただろう

そろそろお開きにしようという事になった



その日から僕はayaの事を考える時、月を見上げるようになった

月さえ見えればayaも同じ月を見上げてくれる

月を介して2人は繋がっていると実感出来た



しかし、いつしかその恋も終わった・・・。

そして時は2020年9月、またあの中秋の名月が近づいて来た

今でも僕は月を見上げる度にayaの事を思い出す

ayaはどうだろう?  ayaもまた僕の事を思い出してくれているのだろうか?

その答えは分からない

分からないが、今年の中秋の名月も月に向かって乾杯するつもりだ

誰と何に対して乾杯?

分からない

分からないけどまた大好きなキリンの氷結 グレープフルーツで1人月に向かって乾杯をしよう

aya お幸せにね





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