バナナを手に取って思い出した息子の歌
生協で頼んだ一式を片づけ、その中のバナナを手に取った時、ふと15年近く前の息子を思い出してしまった。
多くの人が聴いたことあるかもしれない「バナナのおやこ」。
私は息子が幼い頃に、初めて聴いた。子供向け番組だったか、子供向けCDだったか忘れたけど、メロディが明るくて、なかなか楽しい。幼稚園でも先生と一緒に唄っていたようだ。
子供にとっては、後半が早口になってそれが盛り上がる。
バナナのパパは パパバナナ
バナナのママは ママバナナ
バナナの子どもは 子バナナ
パパバナナ ママバナナ 子バナナ
これを先生がアドリブも交えて煽りながら、どんどん早く、何度も何度もみんなに唄わせて、最後の方は、みんなキャッキャと喜んで終わっていく。
息子も気に入っていたのだが。
その日の息子は「バナナのパパは~」のところを、何故か「パパ」から始めてしまった。
「バナナ」の三文字リズムからしたら「パパ」だと字が足りない。
さあどうする息子!
息子は何事もなかったかのように「パパ」に「バ」を付けてしまった。
「パパバ」。
そこは「ナ」じゃないんだ。
ていうか、「パパあ~の」って間延びさせても良いのに、無理やり三文字にしたかったのか。
でも「パパバのバナナ」ってなんかちょっとそれはマズいんじゃないかと思うも、どうなるか固唾をのんで見守る。
パパバのバナナはパパバナナ
ママバのバナナはママバナナ
ああママもママバにされてしまったよ。と思う間もなく、
子どものバナナはコバマナ!!
あうぅ……。不意打ちだ。コバマナ! って関西弁みたいになっている。拒まなあかんで!! みたいに。
笑いをかみ殺していたら、息子は「さあ今度ははやくなりますよ~」と言って続ける。
でも大して早口にならないから、息子自身、物足りなく思っている様子。歌い終わってからほんの一瞬の間があった後、「次はもっとはやくなりますよ~」と言ってまた歌いだした。
いや変わっていないから。
やめてもう母さんは可笑しくて腹がよじれそうだ。「今度こそ……」「次はもうちょ~っとはやくなります!」「次はもうちょっと、もうちょお~~~っと!!」と何度も何度も自分に挑んでいる。何故そんなところで自分に厳しいのか。己の「パパバ」のスピードに打ち勝とうと頑張る息子。そしていくら歌っても、変わらないスピードでただ繰り返すだけの息子に、もう耐え切れず崩れ落ちた。