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誕生日を祝われるのは自分を思い出してくれていること~先月の話だけど~

  何かの故障? 何の都合??

 「お母さん、ちょっとごめん、電気消させてね」息子が言うので、向かっていた机の前、暗がりの中でスマホを見ようとした。
 なかなか電気がつかないので、「どうしたのん?」と呑気に息子に声をかけて振り返ると、「うまくいかないかもしれない」と、少しあたふたしている。
 そしてスマホをつけた息子。
 あごの下にスマホを持っているから、顔がぼんやり浮かび上がっている。

 「顔がぼわーっと浮かんで怖いよ!」笑いながら私もスマホをあごの下に持ってきて「こんなだよ」と言って見せる。

 ふっふふ!! 息子がぼわーっと浮かんだ顔を見せ笑いながら近づいてきた。なになにどうした。


 ハッピバースデイトゥーユー♪

 息子が歌い出した。
 あら。こんな暗がりの中?

 と思ったら息子が歌い終わり、スマホを見せてきた。一面オレンジ色。

 「えー。ありがとう。なにこれー」と戸惑い続けていると「ここ吹いているフリをして」と言われ、ふーとスマホを吹くと、息子の手がスマホのスイッチを消した。

 それからバタバタと電気をつけに行く。

 ああそっか。サプライズしたくて「真っ暗」にしたのね。

 「オレンジはろうそくの色だよ」と言う。

 なんとなく発想から実行への詰めの甘さが息子らしくて笑っていたら、はいどーぞ。とカードを渡してくれた。

 「えええー! いつ準備してたの?」
 カードを開くと、札幌に来たことに対しての息子のメッセージが書かれていた。なんて心のこもった可愛い言葉。

 「わあ。ありがとう! いつの間に?」
 「んふふ。言わなーい」

 「ええーいつの間にカード買ったの? ……だって」ほぼずっと一緒にいたじゃないのと言いかけて、ああそうか。カードは事前に準備できるのかと気づいた。
 でもまだ気になってしまって「ええーいつの間に書いたの?」と聞いたら、やっぱり「言わなーい」と笑っている。

 今年の誕生日は、息子の部屋の片づけや掃除の手伝いの間だから、当日は祝われなくても良いやと割り切っていた。自宅に戻ったら、夫と短時間で良いから外食できたら良いな。くらいに。
 プレゼントは、夫に「これが良い」と具体的に指定したピアスをねだり、その配達は自分で受け取っている。改めて当日に渡してね。と夫の物が積み重なっている近くに置いた。
 夢がないけど、もう誕生日を祝うって長い間こんな感じ。

 自分でそこそこ手ごろな値段の物を(そうでないと結局は家計から出るので)「これがほしい」と選んでお願いして、夫に当日渡してもらう。祝うための食事は誕生日前後で構わない。胃腸の調子を整えておいて、前みたいに飲めなくなった私だってたまには乾杯して飲みたい。
 今年は札幌にいるから、息子はきっと当日忘れているだろうし、戻ってから祝うんだ。それで良いや。
 と思っていたのにちゃんと覚えていたんだ。

 メッセージを読んだら胸がいっぱいになったけど、「あっそろそろ父さんとリモートの時間だね」と切り替えた。

 パソコンを眺めていると、夫が入ってきた。
 「やあー」と声をかけると

 ハッピバースデイトゥーユー♪
 
 夫もいきなり歌い出す。

 アラーン。
 ちゃんと覚えていたんだー。二人とも。

 メールもちょこちょことお祝いメッセージが入ってきていて嬉しかった。
 当日じゃなくたって良い。
 だって日常の中に、わざわざ私を思い出してくれたんだもの。
 誕生日があるから思い出す機会もあったんだ。
 そして日常の中に思い出す時間があったよ、と表してくれたんだもの。

 歳を重ねると、誕生日なんて嬉しくないのかもしれない。だけど「もう年取るばっかりで嬉しくないの」と、祝っている側を困らせてしまう言葉は表に出したくないな(その気持ち、覚えておけよ私!)。誕生日は、生んで育てた親たちのしみじみ喜ぶための日ってことも知ったし。
 今年も一年元気だった。ちゃんと迎えられた。家族や友達たちが覚えてくれていたなら喜びたい。いつまで経っても、感謝する気持ちを思い出せたら。
 そんな私でいたいから、少しは努力もしておこう。


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かわせみ かせみ
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。