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順調な親離れと、全然順調じゃない子離れ
息子の子育てを見てみたい。その時にいったん、自分の子育てを振り返るだろう。息子も、私の子育ての一部を、きっと無意識にでも評価するだろう。
そこまではまだまだたどり着いていない。
そもそも息子に子供ができるのか、もっと言えば結婚するのかもわからない。
まだ何もわかっていないから、今17歳の息子について「成長した!」とは、とても言いきれない。
ただ精一杯やってきた。それだけは胸を張って言える。ほぼ標準的な成長をしている子たちの親御さんたちには、賛同を得られない子育てかもしれない。でも自分の理想とする穏やかな子育てを叶えられない息子の気質で良かったと、私は心から思っている。
毎日激しい感情に揺さぶられる我が子の気質だからこそ、私はそういった親御さんの気持ちがわかるようになり、眉をひそめるような大人にならずに済んだ。息子が「個人」の何たるかを教えてくれた。
最近、何故こんなに子供のことを書く最近なのか。
12月は、息子の誕生日がある月だから色々考えちゃうのだ。
4泊の研修旅行があったり。
一人暮らしが始まるまであと1年ちょっとだとしみじみしたり。
最近息子が忙しいのは、週末の試験が多くなったから。
私にすれば、自分で望んで通っている塾の模試は仕方ない。例の民間試験の問題に関してあえて書かないけれど、年度初めにまとめてお金を払い、土曜を度々犠牲にしてきたんだよてのは、声を大にして言いたい。
息子は幼少期から、家にいる時は自分の世界が大切なようで、あまり友達と遊ばなかった。中学生になってからも。
でも高校二年生になる前に塾にお試し期間で行ってみると、塾の授業が面白くて仕方ないと、ほぼ毎日通い始め。
家族で過ごす時間が一気に減った。
映画を観に行く時間すらもなくなった。
映画を観ると、それぞれの感想を言い合うのは私の楽しみでもある。夫や私とはまた違った視点があったり、印象に残った場面について話したりする。何に感動し、どんな考えを持っているのかがわかるのは面白い。
一緒じゃなくても、例えば一人でも友達とでも行ったら良いから、映画について感想を聞いてみたい。笑った場面。心を揺さぶられた場面。
でもすっかりそれどころではない。
土日に学校で授業や試験、その後塾、となると、早起きがある。弁当の準備がある。目覚まし時計がどんなに高らかに鳴っても起きない息子を起こさなければならない。制服の手洗いがある。アイロンがけがある。この時期は自転車は使えないし、バスも少ないため、車で送迎。それによる私の生活時間も調整。帰宅後はバタバタと翌日に備えて寝る用意。弁当箱も洗わねば。もちろんちょっと一杯なんて楽しみもない。
だから、せっかくの週末に学校で授業や試験があると聞くと「え~」ともなる。早朝と夜遅くに色々と大変だから。
いや熱心に習い事、部活で頑張っているお子さんを持つ親御さんなら当たり前のことだろうけど……。
でもそんな風に反応していたら、言われてしまった。
「僕が週末に学校や試験あることに、そんなに抵抗感を表されても」と。
わっ。そうだよね。ごめんね。もっと協力しなくちゃね。と言ったものの、息子は、私が早起き、極端に苦手なことを知っているし、弁当の準備で面倒をかけていると認識している。でも多分それだけだと思っている。息子のための生活の全般的な時間調整には考えが及ばない。だからと言って、それを言いたくもない。
言わないで我慢して息子のために尽くすことを美しいとも思っていない。
ただ私が学生時代、母親に、私への心配のせいで眠れなかったとか、アナタの運転手じゃないとか、言われるのがすごくいやだったので言いたくないのだ。
しかもだ。
私が学生時代は土曜日、当たり前に学校があった。それに母は、弁当作りやアイロンがけを面倒くさいとか早起き大変とか、それに関しては文句を言ったことがない。
母だって言わなかったことがたくさんあって、私がそれに気づき、ありがたかったと思うのは、息子でその経験をしてから。当時、「アナタのために」と言われるのがどれだけいやだったか。
それに、あと1年ちょっとじゃないか。
さらに、「今週末も、土日とも塾?」と聞くと、息子がまた「塾に行っちゃいけない?」と反抗的な態度をしてきた。
ああ聞かれるのもいやなんだ。と思ったけど、そこはさすがに、こちらの都合があるから聞くんだよと説明した。
まだ時々日曜は休む日があるからだ。
仕方ないじゃないかとちょっとムッとしつつ、無性に寂しいと実感した。
息子は先の目標を持って頑張っているし、自分のやらなきゃならないことで頭がいっぱいだ。その先についても「一人暮らし楽しみだな~」とか言う。
息子は、親離れの準備がもうできている。
なのに私はまだ子離れの準備ができていない。
今までのことを思うと、あっという間だろうと恐れている。その先の生活は私のことだから私なりに楽しむだろうけれど、もう息子と何かを分かち合うなんてごくわずかなのではないかと想像する。
今月、17歳の誕生日がある息子の、親離れをしみじみ実感している。
だから息子のことばかり書いてしまうのだろう。
おめでとうを心から伝えられる文章を、そのうち書きたい。
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