昨年の「ぐだぐだ」どころじゃなかった、今年の三者面談
ちょっとした反動が来たみたいに、夏の服を立て続けに買ってしまった。
だって春物買ったって、着ていく時がないじゃないのよ。コロナ禍でさ。夏もきっとそうなって、秋が来たって冬が来たって。もう1年半くらい服なんか買わなくたって不自由しないし、欲しい服なんて欲望もなくなるんだから!
って春は思っていたはずだった。
なのに、買ってしまった。夏物。
可愛い~! って、ポチッとしてしまった。いや衝動買いじゃあない。私はいつだって何日も悩む。本当に欲しいのか。いつどんな時に着ていくのか。めちゃくちゃ考える。そうじゃないと、際限なく買ってしまいそうだからだ。服が好き!
いやそういう話じゃないのよ。
昨年の今頃、確か「ぐだぐだ三者面談」て記事を書いたのよ。
見たこともない錆びたみたいな色で、ぱっつぱつになっちゃったズボンをはいて、ボタンがはじけないかハラハラしながら面談に臨んだのよ。ジャージみたいにナゾの白い線も二本入っていてね。あれは何だったのかしら。
だからね。
今年は、三者面談を口実に、ズボンとブラウスを買ったのよ。良い感じの配色で。上は青が濃いめの紫色で、裾が長めでふわっと広がっていて、ボタンが球体で白いの。なんならここで写真まで出しちゃったのよ。ノースリーブだから薄いシルバーのカーディガンを着ようって思ったりね。ズボンは……ああ最近は、パンツって言うんだったわね。ずっとズボンズボン言ってたわ、あらやだ恥ずかしいわ。裾がちょっと広がっていて薄いグレーがかったブルーよ。
ピアスは品の良いピンクが似合うと思うわ。
でもね。
昨年と違って、こんなに考えて、準備したのに。私。
……今年は昨年よりもっとひどかったの。
***
「間に合う」と思っている時間に準備を始めると、最近は何故かギリギリになってしまうから、まだ余裕がある時間から準備を始めた。
数日前にアイロンをあてたブラウスを出して着る。このボタン、まんまるで球になってるから、穴に通しづらいのよね。と思いつつ、何度か着たのに、今さら「このブラウスって男物みたいに逆になってたんだ」と気づく。そしてパンツをはき、鏡の前に立つ。
……んんん??
私の顔が歪む。
こんな薄い色の取り合わせだったら、シルバーのカーディガン着るともっとぼやけた感じになっちゃう。きっとパンツの色が薄すぎるんだ!
慌てて濃い紺色のカーディガンを出す。これくらいメリハリないとね。
と、鏡の前にまた立つ。
……あああん???
また私の顔が歪んだ。
この前のアイロンのあて方がマズかったのか。ボタンがクルンと裏返りがちで、せっかくの可愛い球体ボタンが隠れてしまう。半ば強引に裾を引っ張り、ボタンを表に向ける。
うむ。よかろう。これで良い。
ピンクのピアスが、服とよく合って満足する。
ああでも今日はお腹が痛くて辛いから、出かける寸前まで、ズボンのホックは外しておこう。ブラウスの裾が長いから、万が一ホックをし忘れてもまあ良いか。
そうやって、今年こそ粗相のないよう面談に臨んだ。
息子の意志が固すぎて、先生も私も呆れた感じで笑い、本人が言うならもうしょうがないね。話し合ってきたことだし、息子の人生なんだから、頑張ってね。ってなムードで面談を終わった。
昨年の記事を後で読み返したけど、さすがに今年の私は学習したのか、いや、いよいよ息子が受験生だからだろう。先生にある程度、委ねる気持ちがあって、「お世話になります」「よろしくおねがいします」と、自然に挨拶できた。
滞りなく済んだ。
と思ったその帰り、駐車場で「あっ!」と気づいた。
「母さん、ズボンのホック、忘れたままだったわ!」わはは!!!
笑いながら息子にいきさつを話した。
ところが。
ホックをつけながらブラウスのボタンに違和感を覚え、ようやく気が付いた。
「ちょっと! 母さん、ずっとブラウス裏表だった!!」
なんということだろう。
パンツのホックもせず、ブラウスが裏表のまま、〇〇君と5年ぶりくらいに廊下で挨拶をし、〇△君がニヤニヤ通り過ぎるところを挨拶し、□△君に手を振り、知り合いのお母さんにも手を振り、先生と真面目な顔で息子について喋っていたのだ。
うわああああ頭を抱えたい。きっと誰も気づいてはいなかっただろうけど。
知らぬが仏ってこういう時に使うんだ。
そして、すべてのつじつまがあうと気付く。
ボタンがしにくかったことも。ボタンと穴の位置が逆なんだと思ったことも。鏡を見たらブラウスの色が薄く感じてカーディガンの色を変更したことも。ボタンが反対側を向きたがったことも!
オシャレだとかなんだとか色合いだとかなんだとか夏物の服だとかなんだとかピアスだとか品の良いピンクだとかなんだとか。
すべてが薄っぺらく思えるほどの私の失敗。
もったいないから帰宅後、その素敵なブラウスの「濃い面」を表にして、これを書いている。
いやリバーシブルじゃないのよ。
夫も昔、ボタンダウンの襟の上からネクタイつけて、仕事の取材を受けたことがある。帰り、コンビニのトイレの鏡で気づいたらしい。そして左右の襟の上からネクタイがねじれ出ている姿が、地方紙の写真に堂々載った。オシャレ番長だと大いにからかったものだった。
「オシャレ番長のお父さんとお母さんの息子だから、もう今後、僕がパジャマを裏表に着ようと、前後ろで着ようと、強く言えないね」と息子に言われた。
そして、あえて裏表に着てみて夫に見てもらった。
「ああなるほど……違和感ないわ」と夫も納得。
いやリバーシブルじゃないのよ。
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。