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サスペンダーの存在感

 ズボンを吊るサスペンダーを着けていた一番幼い記憶は5~6歳のころ。
 三本の線が入っていて、赤と白と青に分かれていた。
 幼少期に親の好みで服を着せられるのは当たり前だとして、好きではない服、好きな服、と当時からハッキリ分かれていた。
 サスペンダーを着けるのは、だいぶ好きな方だった。何故かはわからないけど、ふだん着けないものだったからなのかな。兄もつけていからうらやましく感じてしまったのかな。私が着けていたサスペンダーについては元々兄の物でお下がりだった記憶があるのだけど、母に確認したら覚えておらず。二人とも、うろ覚えで結論が出なかった。

 とにかく幼少期に着けて以降、10年以上その存在については忘れていた。

 次の記憶は、高校生で映画を観ていた時期。兄が映画のビデオテープをやたらに借りてきた頃なのよなあ。ああ最初はどの映画だったか。誰だったか。
 あのころに観た映画では、サスペンダをーつけていた人が多かった気がする。
 サスペンダーを着けている人のアクションシーンて、何故あんなにカッコよく見えるのだろう。
 大学生になった頃には、わけがわからなくなったのだろうか。サスペンダー姿が好きになり過ぎた私は、みずからサスペンダーを着けるようになってしまった。ワイレッド色のサスペンダーをしばらく愛用していた。
 スーツやネクタイ姿も好きだったので、ネクタイも買って着けていた。

 見るのが好きならもう着てしまえ。
 とでも思っていたのだろうか。書いてみると、なんかちょっと怖い。ネクタイの柄はスヌーピーでやはりワインレッド色のものだったけど、だいぶ変わった人だったのかもしれない。
 いやあ母はよく何も言わずにいてくれたなあ。
 それでも何となく周りのファッションに左右されなさ過ぎていると感じていたので、Vネックのセーターを上に着たり、なるべく上着を脱がないようにしたりと気をつけてはいたけれど。

 そのうちコソコソ着けているのがイヤになったのと、着け外しが面倒になってきてやめた。
 でもその後も映画などでサスペンダー見ると、「おっいいね」の気持ちが湧いてしまう。
 そしてそんな嗜好を、変わっているのだろうと、うっすら思っていたので、ずっと誰にも言わずについこの前まで暮らしてきた。



 大好きな漫画&アニメ「ゴールデンカムイ」の実写版が昨年映画で公開されて、その続きをドラマで観れる。

 私が知ったのは、実は映画が公開されていた時期より後の昨年の夏ごろ。MCU(マーベルシネマティックユニバース)好き仲間のnoterさんと何気なくやり取りをしていた時に、「ゴールデンカムイ」が面白いよーと教わった。
 へぇー観てみようかな。
 軽い気持ちだったのがハマりにハマった。
 アニメを観て、漫画を読む。×2。アニメを観ながら漫画を確認。
 実写版ドラマも始まったけど、WOWOWはお金がかかるではないか。
 他のサブスクにも入っているからもうこれ以上は増やせない。WOWOWに一時期入るとしても、私一人でちょこっと楽しむだけではもったいない。
 そこでnoterさんに毎回、「あのシーンは実写で描かれていたか」「このセリフはあったか」などと詳しく聞き、教えてもらいながらその様子を思い描いていた。
 実写ではマズいのではと思うシーンが漫画には数々あるから、そういったところをどんなふうに演出し編集したのかも気になっていた。
 その中の一つ、主人公杉元が全裸で海に飛び込むシーン。実写で演じるのは山崎賢人さん。どうするのだろうと思って聞いたら。

 「サスペンダーを着けていた!」
 とおっしゃる。
 サスペンダー?! シャツとズボンの上に?(当たり前です)


 そしてその頃、ネットで「サスペンダー」がトレンドに上がった。実写版「ゴールデンカムイ」で盛り上がる人たちの書き込みだった。


 えっ。


 サスペンダーって……みんな好きなの?





 「みんな」ではないにしても、何十年か越しに、仲間を得た気分!
 noterさんにも「サスペンダーかあ! なるほどねぇ。サスペンダー姿ってカッコいいですよね!」といったような内容のことを伝えたと思う。
 そうしたら共感を得た。

 裸のシーンは実写で出せないからと、サスペンダー……。
 みんなが「お見事」といった風にそれで納得している。
 ……納得しているんだ。なんだか絶賛されているではないか。

 なんなの。サスペンダーという存在は。


 そしてそんな風に盛り上がって何か月か。
 とうとう一か月間だけWOWOWにはいることになった。夫と話し合い、週末など時間が取れる時期をねらって。

 観始めると、そのシーンはあっけなく来た。
 アニメや漫画とはちがう流れで唐突だったので「おほぅ! ……サスペンダー……」と声を出してしまった。

 期限内に9話観るぞ。できれば紹介なんかも。他の映画やドラマも、思う存分楽しむ!



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かわせみ かせみ
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。