子供を可愛く感じるのは、何歳まで続くのか
自分の、子供の頃の写真をアイコンに載せている。
これが、父と母にすこぶる評判が良い。素敵な親ばかである。
載せて間もなく、父からは「あの頃のカワセミちゃんは、angelのようだった」、母からは「あの頃は本当に可愛かった」と感想がきた。
「あの頃は本当に可愛かった」と言われるのは、「今はもう可愛くない」と言われているようで、昔は残念だった。
でも自分に子供ができると、そういう意味ではない「あの頃は本当に可愛かった」。気持ちがわかるようになってきた。
幼少期って、その時だけの可愛さがある。サイズ感。あどけない表情。無垢過ぎる目。感情がむき出しになって周りを気にしない無邪気な言動。そりゃあ大きくなったら、そういったものは失われる。その代わりの違った可愛さが出てくる。でも小さくて丸い、って可愛いのだ。きっと生物学的に。だから言いたくなる。「あの頃は可愛かった」。
私がその昔、母親に言い、困惑させたように「今はもう可愛くないの?」ということを息子も言う。私はできるだけ「今も可愛いよ!」と即答する。でもやっぱり、幼少期とは違う可愛さだ。
それでですね、これだけ力説しておいてナンですが、今の可愛さというのがそれはそれですごいということを書きたい。
男子高校生が可愛くなる日がやってくるなんて、思いもしなかった。
高校生息子、声変わりを果たし、背も私より10センチ以上高いのに、今も可愛いです。思春期頃の息子なんて、母親として気持ち悪くならないのだろうか。子供が声変わりしちゃうってどんな感じだろう。自分より背が高くなるって可愛く感じるのかな。ダンナを超えちゃったらどう思うのかな。色々な思惑をよそに全っ然可愛いです。勉強したくなくて、変なパラパラとかボックス踏んで踊って見せたり、靴下を振り回して「見て見て! ヌンチャク」とか言ったりして、一時的な現実逃避に励んでいるところなんかも、アホらし過ぎて可愛い。
私はそもそも子供が苦手な方だった。
幼少期は、知的好奇心むきだしの、無邪気な男の子が好きだったものの、やんちゃで強いタイプの子は苦手だった。
大学生の頃、塾の先生のバイトをしていた時は男女問わず可愛かったけど、自分と年が近いという感覚で、楽しかっただけ。年が離れている子たちをどう扱って良いのかわからなかった。
だから結婚してから、「果たして私に子供ができたとして可愛がることができるのか」と不安に思っていた。
ところが子供ができたらどうだろう。我が子は周りの話を聞いていると、どうやら大変な部類のようだった。やりにくくて辛い思いをたくさんしたのに、すごく可愛かった。「子育てって幸せだけど時々大変」みたいなCMがあるけど、いや逆だよ、「子育てって時々だけ幸せ」だった。少なくとも私は。そういう人も少なくないと思うんだけどな。
それでも、そりゃあもう愛おしい。大変で必死だったけど可愛い。
息子を育てながら、他の子に息子とほんの少し共通点を見出すと、そういう子たちも可愛く思えてくるようになった。意外と息子みたいなタイプも思ったよりたくさんいて、苦手な子供が少しずつ減っていく。それは息子が成長すると共に増えてくる。息子の年齢までの子供を可愛く思えるようになるということなのだ。
で、息子は今、高校生。
男子高校生と言って思い出すのは、高校野球の選手たちだ。地球のお魚ぽんちゃんによる『男子高校生とふれあう方法』ではない。夫が買っていたので、つい読んでしまった。可笑しくて笑ったけど、ホラーだった。
高校野球の選手の話でしたね。
幼い頃、お兄さんという位置にいたはずなのに、「同じ年頃なんだよ、変な感じしない?」と話していた女子高生時代。そして「お兄さんて感じがいつまでもするのに、もう年下なんだよ!」とふと気づいた20歳の頃。「いやあ随分年下なのに、いつまでも、お兄さんというイメージがあって不思議よね~」とか「もうそろそろ、子供だと言ってもおかしくない年齢かあ」とか思っていた30歳前後。今はそんなものではない。もう「息子」だ。もうちょっとで「孫」だ。
息子と同じ年頃なのがこれもまた不思議で仕方ないけれど、今ではやはり「可愛くてまだ未熟」な気持ちの方が先行する。もはや息子の友人たちも可愛い。もう少し、高校生って大人に近づいていると思っていた。でもめちゃくちゃ「子供」だ。
なんなら大学生も可愛く見えてきた。
大学生の頃の自分は、そういう感覚じゃなかったはずなんだけど、可愛い。当然女子も可愛い。男子も女子も可愛い。どうしよう。みんな可愛くてみんないい。なんかどこかでちょっと似たセリフを聞いたことがある気がする。きっと気のせいだろう。
このまま大変長生きしたとしたら、90歳くらいで60歳くらいまでの、おじいさんに近い人たちにも可愛くて仕方ないという感情がわくようになるのだろうか。100歳だと70歳くらいまでの人たちを? 110歳だと80歳くらいまでの人たちを? ……私はいつまで生きているつもりなのか。